ほなちゃうかあ
【其方が超好旦那になれぬせいで世界が終わってしまったでおじゃる!!】
「スパダリってそう書くの? 都合良男とかが関の山だろ」
八十六周目終了。
今回もまた変化球を放って来たブラウンにルイが苛つきつつもツッコミを入れた。
【何て悪意に満ちた偏見】
「事実だろ」
【それよりどうしたんです? 今回は何やらずっと考え込んでいたようですが】
パチンと指を鳴らして注文をするとルイはその場に座り込んだ。
同時に茶と菓子が現れたのでそれをつまみながら話をする姿勢に、
「空気読めよ。今の気分はどう考えても塩辛い菓子だろうが。お茶も紅茶じゃなくて緑茶だよ」
入らなかった。
普通に文句つけてやがる。
ここで反論して無駄な時間を浪費する気はないのだろう。
短い謝罪と共に新たな茶と菓子を出してからブラウンは続ける。
【加えて終わり方も何だか中途半端。世界最後の日まで行かなかったじゃないですか】
そう、今回の終わり方は自殺だった。
何時も通りの年増√を進んでいたと思ったら最終年の夏に突然、禁術で乙った。
Q.何で禁術? A.早いから。
命を代償とする禁術もルイからすれば便利なリセットボタンでしかないのだ。
「あれ以上続けても奴から直接、情報を引き出せそうにはなかったからな」
一度切り上げてアプローチを考えたかった。そして自殺も単なる自殺ではない。
そう答えたルイにブラウンが疑問符を浮かべる。
【情報?】
「お前も見てたと思うが八十五、八十六で謎に新イベントが発生しただろ」
【ああはいはい。清明関連の話ですね。それが?】
「それで一つ疑惑が生じた」
カップの紅茶を飲み干しルイは言う。
「――――アイツ、清明なんじゃね?」
【一ノ瀬氏が、ですか?】
「ああ。思い返すに色々怪しい部分はあったんだよ」
初めて清明装束を渡された際のことだ。
前回はあんなイベントがなかったのに何故? とルイは思った。
結局疑問の答えは見つからぬままスルーされてしまった。
しかし清明であるという前提を踏まえた上で考えると別のものが見えて来る。
「僕、あそこで初めて清明桔梗の印を使ったんだよね」
式神を作るにあたり陰陽術を取り入れた結果だ。
それまでは必要性を感じなかったので使っていなかった。
何か差異があるとすればそれぐらいだろう。
「自分のシンボルを将来有望極まるアルティメット美少年が使ってたらどう思う?」
【極まるとアルティメットで被ってる気がします】
「そう。当然、良い気分になるよな」
【会話が成立していない……】
「そして次、清明装束。あれ着た時、やけに上機嫌だったよな?」
もしもモモが清明だとしたら、
「三千多界に並ぶ者なき美少年菩薩が自分縁の品が変化したものを纏う」
【勝手に仏を作らないでください】
「そう。当然、浮かれてしまう」
その後の十二天将の残骸を弄らせる許可を与えたこともそう。
周囲に清明の再来と言われ得意満面になった結果だ。
「そこに来て前回と今回の僕だ」
安倍晴明に並び立ち追い越そうとする気概を見せた。
それに心揺り動かされた結果、つい隠蔽された歴史を語ってしまった。
ふーんへーほーん? で済ませていれば進展はなかっただろう。
「だけど僕は清明を理解しようとした」
【心にもない言葉で、ですね?】
「慈愛に満ち溢れる言葉の数々。その悉くが的を射ていたらしい」
隔絶した才覚を持つがゆえの孤独というのは間違っていなかった。
そして今回、その孤独の“芯”を期せずして撃ち抜くことに成功。
「清明は常人とはまったく異なる知覚を持っていた。これがクリティカルになったんだ」
清明本人以外、誰も知らなかった。
そんなものがあるとさえ思ってもみなかったはずだ。
それをルイは十二天将の復元という予想だにしない√から辿り着いてみせた。
「だから告白の前倒しに繋がった」
ただまあモモが清明ならそれはそれで清明黒幕疑惑が怪しくなるのだが。
だってもし清明なら年増√で殺されてた意味が分からなくなる。
が、そこはモモ清明疑惑を立証してから考えれば良いことだ。
【なるほど。しかし証拠は?】
「そう、そこだよ。どうやって確かめるかが問題なんだ」
モモが自分から打ち明けるのは期待出来ない。
ここまでクリティカルを出して付き合っても何もなかったのだから。
「アイツ性格的に自分の醜聞はひた隠しにするタイプだしな」
恋人相手に絶対それを見せない。性根の腐った女なんだ。
ルイはそう言うがそれまんまコイツにも当て嵌まってる。
屋内でのブーメラン投擲は危険だから止めて欲しい。
「どうしたもの……あ」
【何か思いついたので?】
「ちょっとな。おい」
【分かりました。ではいってらっしゃい!!】
八十七周目開始。
ルイは今回もイベントを踏んで年増√に突入し思いついた確認方法を実行。
それが済むと同時に死んで説教部屋に帰還した。
【お前がスパダリになれなかったせいで世界が滅びました。あーあ】
原点に戻ってみましたがどうです?
と心なしか楽しそうなブラウンへの返答は画面への蹴りだった。
【ひどい……で、今回の行動について説明して頂けますか?】
見ているだけではイマイチ分からなかったらしい。
ルイはまあ良いけどと用意されていたジュースを飲みながら語り始める。
どうやら今回はジュースで正解だったらしい。
「霊力には指紋や声紋みたいな固有のパターンがあるわけだ」
ただ感じ方は人それぞれらしい。
人によっては匂いと表現したり音や質感と表現したりするのだとか。
「僕の場合は色だな。その色を禁術使って調べようと思ったんだ」
そこで選ばれたのが十二天将の残骸と殺生石。
後者についてはイベントをこなした上で、
『殺生石が清明のものだというなら参考になるかもしれないし見られないかな?』
とおねだりすれば一発だった。
【……なるほど。でも十二天将だけで十分では? 散々弄ったわけですし】
それに禁術を使う必要があったのか?
というブラウンの質問にルイは投げやり気味に答える。
「分かるわけねえだろ」
モモはルイならとか言っていたが真っ当な手段ではまず無理だ。
というのも元々の十二天将は霊力を自分で生み出せる出鱈目な式神だったから。
こびりついているのは式神の霊力で清明のものはほんの僅かしか残っていない。
殺生石の方もそう。膨大な呪詛の中から探り当てろとか無茶振りにもほどがある。
「禁術で感知能力をブーストしなきゃまず無理だったよ」
【ああ、だから禁術で乙ったわけですか。して、検証の結果は?】
「さっきも言ったが僕は霊力の固有パターンを色で捉えてる」
とんとんと目のあたりを軽く指で叩きながら言う。
「九十九の奴が青なら一ノ瀬の奴は赤って具合にな」
【ええ。それで苦労して感知した清明の色は?】
そこでルイは顔を顰め吐き捨てるように言う。
「おかんが言うにはな。清明の霊力の色は紫やねんて」
【ほなモモは清明とちゃうかあ】




