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お前がスパダリになれなかったせいで世界が滅びました。あーあ  作者: カブキマン


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春は曙

「ふぅ」


 ひとしきりブラウンを罵倒したところでルイは満足げに頷いた。

 そしてブラウンに出させた茶を飲みながら穏やかな語り口で切り出す。


「まあでもうん、僕にも反省すべき点はあったよ」

【――――ヒュッ】


 息を呑んだ様子をわざわざ文字に出すの間抜け過ぎひん?

 とは言えブラウンが驚く気持ちも分かる。

 こうまで素直に自らの非を認めるなんて思いもしなかったからだ。

 文字通り世界が滅びてもあり得なかった事態にビビるのは致し方なかろう。


「いやさぁ、曇らせなんて馬鹿にしてたさ」

【――――は?】


 ルイも曇らせという文化は認識していた。

 その上で何だそれくだらない暇人のやることだと侮蔑し切っていた。

 その考えが変わったのは血溜まりに沈んでいる時だ。

 推しを穢した屑への報復は成らず幸男を元に戻すことしか出来ない。

 屈辱を噛み締めながら算段を立てていると、ふと脳裏をよぎるものがあった。


『ここで僕が我が身を犠牲にしてさっちゃんを救えば彼はどんな顔をするんだろう?』


 と。

 途端にむくむくとやる気が満ち溢れて来る。

 そして気付けばそっちメインで事を進める方針に切り替えていた。


「がねぇ? いやぁ味わい深かったって感動したぁ。絶望を秘めたあの表情……」


 そこでハッとした顔で我に返ると薄笑いを浮かべながら言う。


「っとすまない。少しばかり浸り過ぎたね」


 だが、とルイはこう続ける。


「一つ余計なお世話を焼いておくとこういう雅を介さない無知無学の輩が君ってことだ」


 自らの不足を受け入れるのは辛い。

 だがそれが成長への第一歩となる。

 ルイは優しい教師のようにそう諭した。


【よ、よくそれで人を屑だ何だと罵れましたね……】


 怒りを通り越して最早、恐怖すら覚える。

 ガタガタとテレビを震わせるブラウンだがルイは当然、スルー。


【で、どうするんですか?】


 外法に侵された幸男が壁となって立ち塞がる。

 これはもう確定イベントだ。

 そしてただ殺すだけでは進まないことも分かってしまった。

 この難題にどう立ち向かうのかとブラウンが聞くと、


「お前ってホント頭悪いよな」


 直球の愚弄。

 ルイが与える苛立ちは何年経っても鮮度が衰えない。

 一体どんな添加物を使っているというのか。


【……ええ、頭の悪い私に教示してくださいよ】

「殺す気は毛頭ないけど殺せば行き止まり。つまりは救うしかないわけだ」

【だとしても、どうするのです?】


 前回のようなやり方をすれば結局やり直しだ。

 進むためにはルイの生存が必要不可欠なのだから。


「色々準備が必要だからな。とりあえず次の周回を始めてくれ」

【分かりました――――では、いってらっしゃっせぇええええええええええええええええええ!!!!】


 妙な変化球を挟むな。


「~~ッ何故だルイ!? 何で、なんで、俺なんかのために……ッ」


━神央累、心のダイアリー七十四週目━

 やっぱりさっちゃんの曇らせ顔は最高だった( *´艸`)。


「~~ッ何故だルイ!? 何で、なんで、俺なんかのために……ッ」


━神央累、心のダイアリー七十五週目━

 何度食べても飽きが来ない王道の味わい( *´艸`)。


「~~ッ何故だルイ!? 何で、なんで、俺なんかのために……ッ」


━神央累、心のダイアリー七十六週目━

 春は曙。夏は夜。秋は夕暮れ。冬は早朝(つとめて)。幸男は曇らせ( *´艸`)。


【――――おい】


 定型文なしのマジレスである。

 一応、幸男をああした下手人を監視の式をつけたりして探ったりはしていた。

 だが一度の失敗でこのやり方では無理だと判断。

 以降の二周は普通に幸男の曇らせを楽しんでいただけだ。


「仕方ないだろ。僕にも心の準備が必要なんだから」


 そう言って深々と溜息を吐く。

 心底気乗りがしないという表情だ。


【ああ、そういうことですか】


 このゴミカス周回はモチベを上げるためのものだったのだ。

 納得するブラウンだったが、


【いえそれはそれでどうかと思いますが】


 ルイって何時もそうですね! さっちゃんのこと何だと思ってるんですか!?


「はぁ……やりたくないがやるか」

【行きますか。では】

「ああ待て。その前に一つだけ」

【何でしょう?】

「ノートと筆記用具を用意しといてくれ」

【? 分かりました。ではいってらぁああああああっしゃい!!】


 七十七周目。

 後七百繰り返せば縁起の良い数字になるがそこは置いておこう。

 今回も当然、新ハジメ√に行くかと思いきやそうはならず。

 ルイが選んだのは久しぶりの年増(モモ)√だった。

 十年単位で離れていたにも関わらず行動は完璧。

 昆虫野郎という評価に偽りはない徹底っぷりだった。


【お前がスパダリになれなかったせいで世界は滅びました。あーあ】

「はぁぁぁぁぁぁあああ……しんど」


 幸男を曇らせて自殺した周回に比べるとどうだ?

 ブラック企業で心身を擦り減らせたリーマンばりに雰囲気が死んでる。


「ノートと筆記用具はぁ?」

【どうぞ】


 とブラウンが目の前に所望の品を出現させる。

 ルイはどっこらせと寝転がりノートを開くとペンを走らせ始めた。

 腹立つぐらい精緻な図解つきの何か。

 それは、


【これは……十二天将の設計図、ですか?】

「ああ」


 今周、ルイは特対に保管されている六つの残骸の解析に心血を注いでいた。

 今ノートに書いているのは頭に記憶した情報だ。


「これまでは復元してもそれなりの出来で妥協していた」


 だがこれからは違う。

 完全復元を目指すとルイはだる~なテンションのまま宣言した。


【そのためにこれを?】

「ああ。同一人物が作ったんだ。設計図から癖やら思想を洗いだすことは出来るだろう」


 そうして少しずつ足りない部分を補完して完成を目指すのだ。


【……しかし相手は史上最高の陰陽師ですよ?】

「フン、確かに安倍晴明は稀代の天才だろう」


 だが、とルイは鼻で笑う。


「現時点では僕より上だが未来の僕には劣る凡夫だ。出来ないわけがない」


 うぉ、すっげえ自信。

 清明を凡夫呼ばわりするとか稀代の驕リストではあるだろう。


「はぁ」


 イキった発言にも力はなくまたしても溜息。

 それでも手は止まらないあたり本当にハイスペックだ。


【どうしたのです?】

「どうもこうも分からないのか? 本当に空気読めないな」

【……】

「お前ってアイツ、悪人ってわけではないけどちょっと……でハブられるタイプだろ」


 ちょっとの質問でこんなこと言われなきゃいけないの?


「ここであれこれ考えてもどうしたって検証実験は必要だ。

そしてそのためにはまた年増を抱かなきゃいけない。

残骸弄るにはそれが一番効率的だからね……これで憂鬱になるなって方が無理だろ」


 確かに憂鬱だ。こんなのが最後の希望なんて。

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― 新着の感想 ―
周回するためのモチベを周回して稼ぐ男
ゴミカス周回はモチベを上げるためのものだったのだ。 ゴミカスのモチベ上げる為に毎回曇らせられるさっちゃ可哀想…前世どんな悪い事したんですか? モモちゃんやハジメちゃんなら切れ散らかして2度と起きないよ…
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