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お前がスパダリになれなかったせいで世界が滅びました。あーあ  作者: カブキマン


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解釈違い絶対殺すマン

「ルイくんの、知り合い? え、でも私の名前」


 困惑するハジメだがルイには答える余裕もなかった。

 普段どれだけ内心が荒れ狂っていようとも思考とは切り離せるのがルイだ。

 そのルイをして現状は飲み込み切れないものがあった。


(何だよ、その目)


 自信に溢れた態度。

 歪んだ欲望に濡れた瞳。

 何もかもが気に障った。


(君は、そうじゃないだろう……)


 縋るように手を伸ばそうとして衝撃がそれを弾いた。

 幸男から放たれた霊力がルイの手を拒んだのだ。


「気安く俺の名前を呼ぶな悍ましい」

「る、ルイくん!」


 焼け焦げた手を呆然と見やる。

 あり得ない。態度もそうだがただの放出だけでこんなことが出来るわけがない。


「……友達、なんだ」


 未だ動揺からは立ち直れないままルイは言う。


「狭間幸男。樹海で出会った大切な、友達」


 ハジメの目が見開かれる。

 告げられたその名に聞き覚えがあったからだ。


「……はざま、さちお。え、幸男くん?」


 バッと視線を幸男にやりハジメが問う。


「小学校の頃、近所に住んでた幸男くん?」


 その言葉に幸男が心底嬉しそうに頷く。


「ああそうだ。幸男だよ。ようやく、会えた」

「え、あ、うん」


 にこやかに語り掛ける幸男だがハジメは怯えていた。

 先ほどのルイへの態度と自分へのそれがまったく違うからだ。

 半ば無意識の内にハジメはルイの腕にしがみつく。

 それを見た幸男が一瞬、憎悪に顔を歪めるが直ぐに笑顔を作り語り掛ける。


「これからは俺がお前を護る。“奴ら”に手出しなんかさせない」


 だから、と幸男は極寒の眼差しをルイに向け――――


「お前はもう“要らない”」


 幸男の姿がかき消えたと思ったその瞬間、ルイが血溜まりに沈んだ。


「ルイくん!!!!!」

「……仕留め損ねたか。しぶとい奴め」


 ルイにとどめを刺そうとするが、ハジメがそれを制止する。


「止めて! あなたの目的は私なんでしょ!? 行くから、一緒に行くからルイくんには」


 手を出さないで。

 涙ながらに懇願するハジメに幸男の顔が盛大に歪む。

 嫉妬の一色で塗り潰されたその表情はあまりにも醜い。

 かつての彼の面影など微塵もなかった。


「……お前がそこまで言うなら見逃してやる」


 何やら如何にもな展開がリアルタイムで進んでいるわけだが、


(誰だ)


 ルイにとってはどうでも良かった

 動揺を突き抜けたその心にあるのは、


(誰だ、誰だ誰だ誰だ誰だ誰だ誰だ誰だ誰だ誰だ誰だ誰だ誰だ誰だ誰だ誰だ誰だ誰だ誰だ誰だ誰だ誰だ誰だ誰だ誰だ誰だ誰だ誰だ誰だ誰だ誰だ誰だ――――誰が僕のさっちゃんをォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!)


 かつてないほどの怒りだった。

 理不尽なループを強いられた時もここまでの怒りは覚えたことがなかった。

 世界が訳も分からず滅んだ時も。ぬいぐるみに無惨に殺された時も。

 怒りはしてもスパっと切り替えられる程度の怒りだった。

 だが今回は違う。世界を滅ぼして尚、尽きぬほどの怒りがルイの胸を焼いていた。

 解釈違いにキレるオタクの最上級だ。

 おかしいな。何もかもがおかしいな。


(上等な料理にハチミツどころの騒ぎじゃねえ! 高級フレンチを直で便所にぶち込むような真似を……!!)


 無駄にハイスぺなのがこの男。

 ルイは既に幸男の身に何が起きたかを大体、看破していた。

 外法による強化とそれに伴う精神汚染だ。

 そしてそれは幸男自身の意思によるものではないことも理解していた。


(初めてだよ……こ、ここまで僕を虚仮にしたお馬鹿さんは……は、ははははは)


 自分を現在進行形で見下している幸男に対する怒りは皆無。

 その矛先は幸男を“こう”した誰かにのみ向けられていた。


(――――絶対に許さんぞ虫ケラがァ!! じわじわと嬲り殺しにしてくれる!!!)


 とは言えだ。

 現状、その誰かに辿り着く術がないこともルイは理解していた。


(今僕がすべきことは……)


 なので怒りをそのままに思考を切り替える。


「ただし……ッ?!」


 何かを言おうとした幸男が弾かれたように距離を取る。

 その視線の先ではルイはゆらりと立ち上がっていた。


「ルイくん駄目!」


 自分を護ろうと無理をしている。そう思ったのだろう。

 ハジメが悲痛な声を上げるがルイは大丈夫、と微笑みを返す。

 そこでハジメは気付く。血に濡れてはいるがその体にはもう傷がないことに。


「らしくないよ、さっちゃん。君はそうじゃないだろう?」

「~~~ッッ! どこまでも俺を見下してェエエエエエエエエエエエエエエ!!!!」


 怒りに身を任せ攻撃を放とうとするが、


「!?」


 それよりも速くルイがその懐に入り込んでいた。

 まずいと攻撃に回そうとしていたエネルギーを全て防御に回す幸男だが間に合わない。


「僕の友達を返してもらうよ」


 とん、とルイの左手が優しく胸に触れた。

 瞬間、


「■■■■■■■■■■■■■■■!?!?!!?」


 絶叫と共に幸男の体から黒い靄が凄まじい勢いで排出され始めた。

 そして、


「お……おれ、は……」

「おかえりさっちゃん」


 消耗し切った幸男が地面に倒れそうになるのをルイが咄嗟に受け止める。

 ルイを見上げる幸男の瞳には先ほどまでの邪気は微塵もなかった。


「……すまん、迷惑をかけた」

「良いさ。友達だろ?」


 言いつつルイはそっと幸男の背を電柱に預け座らせた。

 もう既に支えているのもやっとだったからだ。


「よ、良かったぁ……もう、何が起きてるのか全然わかんなくて……」


 安堵に胸を撫で下ろしその場にへたり込むハジメだったが、


「ごほっ……!!」

「「ルイ(くん)!?」」


 ルイの口から夥しい量の血が吐き出された。

 素人目に見ても明らかに“やばい”。

 ハジメと幸男が駆け寄ろうとするがルイはそれを手で制する。


(さっちゃん。君は悪くない)


 解釈違いを押し付けて来た下手人への即時報復は不可能。

 腸は現在進行形で煮え煮えGOだがどうしようもない。

 だから次善。解釈違いを正した上でやるべきことがある。


(でもそれはそれとして君が僕に迷惑をかけたのも事実だよね?)


 事実ではあるが腑に落ちないのもまた事実ではある。


(血溜まりの中で君への贈り物を考えていた)


 何考えてんだお前。


(絶望を贈ろうか。呵責に苛まれ悲痛に歪む顔を見せてくれ……!!)


 何かラスボスみたいなこと言い出したぞオイ。

次回詳しい説明入れますが

「もうこれで終わってもいい。だからありったけを」みたいなアレです。

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― 新着の感想 ―
行いは善なのに 思考があまりにドス黒くて笑う >世界を滅ぼして尚、尽きぬほどの怒り これまでより遥かに能動的なループ意欲が湧いてそう。やはりさっちゃんがヒロインなのでは…?
フリーザからのセフィロスと忙しいなw
この救世主なんかオタクの解釈違いでラスボスみたいな思考になってんだけど(笑) そして闇堕ちさっちゃん、めっちゃ簡単に対処されてるんだけど…さっちゃんは闇堕ちして雑魚なの?これも解釈違いか?
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