スパダリ仮免試験失格
【お前がスパダリになれなかったせいで世界は滅びました。あーあ】
「何でだよ!!」
最早、恒例になったリザルトでのブチギレ。
これまでと同じようにルイなりにキレる理由があった。
「おかしいよなァ!? どう考えても! 何で何もないんだよ!?」
正直な話をすれば今回でハジメと付き合うぐらいまではいけると思っていた。
これがギャルゲーなら付き合えばエンディングだがまずそうはならない。
ハジメの異能という厄ネタがあるから恋人になるのは通過点でしかないからだ。
「一ノ瀬の奴に一太刀入れて実力示してさあ! 他にもこれまでと違う変化山盛り!!」
付き合うまではいかずともこれでイベントが起きないなんて嘘だろう。
しかし現実は非情だ。ハジメの初実戦以降、特に変わったイベントはなし。
友達以上恋人未満のぬる~い関係のまま三年が過ぎ世界が滅びた。
「ラスト以外でステが足りずに行き詰まる場面とかあったか!?」
何もないまま実に平坦な時間が流れて行った。
納得いかない。完璧な新ルートを構築しはずだ。
かつてない憤りを覚えたルイはその場で暴れ始めた。
【あ、ちょ……今回マジでキてますね……】
目を血走らせて攻撃系の術を四方八方に放つルイは発狂しているようにしか見えない。
新ルートが何から何まで順調だったからその落差ゆえだろう。
【うぇ!?】
今は何を言っても無駄。
そう判断して発狂を見守っていたブラウンだが信じられない光景を見て愕然とする。
お説教部屋はテレビ以外何もない空間だ。そしてテレビは攻撃しても傷一つつかない。
そんなものに当たったところでフラストレーションが溜まるだけ。
かと言って他に何も壊せるものがない。
【ちょ、ちょちょちょ】
だからルイは自分で壊せる物を作った。
周回で培った式神作成技術の賜物だ。
しかし、作成したものが問題だった。
【正気ですか!?】
それはモモとハジメの姿をした式神だった。
ストレスの原因ではあるだろう。
だがそれにしたって女の姿をした式神をサンドバッグに?
ブラウンが慌てて止めに入るが、
「僕が暴力を振るうような人間だとでも? 侮るな死ね!!」
と一刀両断。
ルイはドカっと座り込むや式神に命令を飛ばす。
すると、
【……えぇ?】
モモとハジメの姿をした式神はその場でどじょうすくいを始めたではないか。
つまりはそう。二人の似姿に道化た振る舞いをさせ溜飲を下げようとしているのだ。
「ワハハハハハハハ!!」
【八つ当たりで暴力を振るうよりはマシですが……うーん……?】
どじょうすくいからのひょっとこおどり。腹踊り。
滑稽ダンスでチェーンしていくルイだが、
「……ちょっと芸がないな」
と方針転換。
化粧道具を生成して二人の顔に化粧を施していく。
そして服も着替えさせ、
「よし出来た!」
ブラックメタルレディの完成。
しかもスタイリッシュな感じではなくおいおいと言いたくなるイロモノメタルだ。
そして演奏開始。吐き出される下水道ボイスは本職のそれにも負けていない。
「はー……すっきりした。よし消えろ」
ひとしきり愉しんだところでルイは式神を消滅させた。
【よし消えろて】
屑ムーブもこうまで堂々しているといっそ清々しい。
「しかし何が原因なんだ? まるで分からんぞ」
【……本当に心当たりがないので?】
「あるわけないだろ。新ルート構築一発目から完璧だったぞ」
周回を繰り返して試行錯誤するまでもなかった。
一発で新たなルートを開拓してみせた自分に何の問題があったのか。
【そうですか】
「……お前、ひょっとして心当たりがあるのか?」
【ええ。一つ大きな見落としがあるかと】
「教え――――いや待て。考える」
あれを、とルイが指示を出すとリモコンが出現した。
馬鹿ほど繰り返しているだけあって二人の意思疎通は割と完璧だった。
「……どこだ?」
目を皿にして始まりから確認していく。
放映時間約三年という大長編映画。
こんなものを休憩もなしに見るのは普通に考えてただただ地獄。
だがナルシストであり単純作業を苦にしない昆虫メンタルのルイにとっては容易きこと。
お菓子を食べながらあっさり三年の視聴を終える。
「クソ。もう一度だ」
それどころか更におかわり。
【ちょっとあの、普通に怖いです】
三年の映像視聴とモモと一晩を共にする。
ストレス比較で後者に天秤が傾くのは控え目に言って狂ってる。
ブラウンが恐怖するのも無理はなかろう。
「駄目だ」
四周目を終えたところでルイは降参を宣言した。
もう干支一周しちゃってるじゃん……。
「おい排泄物。一体どこに瑕疵があったってんだ」
【ふむ。ではこうしますか】
今回は直接回答しても問題ないがどうせなら自分で気付く方が良い。
ヒントを与えましょうと言ってブラウンは画面を操作しある場面を映し出した。
『僕が居る。何があろうとも僕が君を守り抜く』
『神央くん……』
それはハジメと赴いた初任務だった。
一体ここがどうしたのかと疑問に思いつつルイは視聴を続ける。
『はぁ……はぁ……た、倒せた?』
『うん。九十九さんの勝ちだよ。お疲れ様』
「そっか……私、やれたんだ。やった……やった……!!」
画面の向こう。ボロボロで喜ぶハジメを見るその目は酷く冷たかった。
『にしても髪、酷いな。これもうバッサリ切った方が良いかもだ。良い機会だしショートにしちゃおっかな』
『良いかもね。きっと似合うよ』
『そ、そうかな? えへへ』
まさか。いや待て。そんなことがあるのか?
ルイの額に冷や汗が浮かぶ。
脳裏をよぎったその可能性があまりにも馬鹿げているからだ。
『帰ろっか!』
『ああ、帰ろう』
そこで映像は途切れた。
【どうです? もう一回流しますか?】
「……一応、頼む」
再度、同じ映像が流れる。
ルイは無言だった。
【改めてあれも提示しておきましょうか】
一、見目麗しく在る努力を怠らないこと。
一、文武両道を心がけること。
一、多芸多才を心がけること。
一、最低でも上の下ほどの経済力を有すること。
一、分け隔てなく優しく在ること(※但しヒロインには“特別”な対応を心がけること)。
表示されたのはスパダリ五箇条の御誓文。
疑惑は確信に変わる。
それでも信じられぬのだろう。ルイの声は震えていた。
「……僕が九十九の髪を切らなかったから?」
【だってスパダリムーブとして絵になるでしょう?】
目と口をこれでもかと見開き、ルイは怒りも露わに叫ぶ。
「――――ざっっっけんなやドブカスが!!!!!」
ヒロインの髪型整えられないスパダリが居るってマ?
「女は最初にその3個のリンゴをどこで買ったのか聞いて欲しいの」
「そして残りの2個のリンゴを一緒に買いに行って欲しいのそれが答え」
これ並にざっけんな!と思う無茶振りは何だろうと考えた時に思いついたのが
「これを機会にショートにしようかな」はあなたにカットして欲しいでした。
今作を書き始めてからずっとやりたかったネタが出せて満足!




