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お前がスパダリになれなかったせいで世界が滅びました。あーあ  作者: カブキマン


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あちゃぁ 後

今日は二話連続投稿です。

次の話がフラグの答え合わせになります。

(……確実にこれまでと変化してるな)


 時は流れ夏休み明け。

 カリキュラムを終えたハジメと共にルイは九課での初任務に赴くこととなった。

 これ自体は旧ルートでも経験したが以前とは大きく違う点が幾つかあった。


(九十九の実力が向上してるのもそうだけど)


 悪性付喪神が居るという山中の廃屋に向かう車の中。

 緊張した面持ちのハジメは“清明装束”に身を包んでいた。

 幸男ルートではルイが渡されていたものだが、


『卒業祝いというわけではないがお嬢さんにはこれをあげよう。君の力なら多分使えるだろう』


 とカリキュラム終了時に譲渡したのだ。

 ただこれだけだとRPGで序盤にラスダンでゲットする武器を与えるようなもの。

 ハジメの成長を阻害しないため外付けで力が制限されている。

 その成長に合わせて徐々にアンロックする方式だ。


(僕のものを横流しされるのは気分悪いけどこれは今までになかった展開だ)


 お前のものではない。


(ステータスが足りずどこかで行き詰まるにしてもこれはかなりの進展なんじゃないか?)


 などと考えていると膝に乗せているハジメの手が震えていることに気付く。

 気付きたくなかったが気付いてしまったものはしょうがない。


(面倒だがスパダリっとくか)


 動詞?


「大丈夫」

「ぁ」


 震えるハジメの手に自分の手を重ね微笑みかける。


「僕が居る。何があろうとも僕が君を守り抜く」

「神央くん……」


 少し呆然としていたハジメだが言葉を飲み込み、


「うん!」


 と力強く頷きルイの手を握り返す。

 少し頬が赤いのはご愛嬌だろう。


「あ、でもその……ギリギリまではやらせて欲しいなって」


 守られてばかりの自分で居たくない。

 限界まで一人で頑張るから見守って欲しい。


「それが君の願いなら。でも、本当に危なそうな時は僕が出張るからね」

「うん。その時はお願い」


 そうこうしている内に車が停まった。

 目的地まではまだ距離があるがここからは徒歩でということだろう。


「ありがとうございます」

「はい。どうかお気をつけて」


 運転手に礼を言いハジメを伴い車を降りる。

 地図などはないが気配を辿れるのでその歩みに迷いはなかった。


(僕なら秒で殺せるのにめんどくせえ)


 辿り着いたのは放棄された洋館。

 ミステリーなら殺人事件の現場にでもなりそうだ。

 というか実際、殺人は起きている。

 肝試しに来た若者などが根城にしている悪性付喪神に殺害されたから九課が存在を認知したのだ。


「準備は良いかい?」

「……」


 無言で頷きハジメが扉を開けた。

 ルイは既に隠形を使い自身の存在を完全に消している。

 これなら付喪神が恐れをなして逃げ出したりすることはないだろう。


「きゃっ!?」


 正面ホールにデカデカと飾られた絵画から無数の腕が飛び出す。

 思わず悲鳴を上げてしまうハジメだが、それでも何とか立ち向かう。


「こ、こうだ!!」


 両手を前に突き出し結界を形成し迫る腕を阻む。

 だが守るだけでは勝てないのは承知している。


「やあ!」


 気合と共に火炎球を絵画に向かって撃ち出した。


(ざっこ。何これ100円ライターのがまだ火力あるでしょ)


 他人を馬鹿にすることに余念が無さすぎる。

 100円ライターは幾ら何でも無いだろう。


「やった倒したよ!」

「いやまだだ」


 絵画は焼けたが付喪神は仕留められていないとルイは言う。


「あれは本体じゃない」

「ど、どういうこと?」

「絵の付喪神ではあるんだろう」


 しかし今しがたハジメが焼き払った絵画が本体ではない。

 もしそうなら幾ら何でも呆気無さ過ぎる。


「恐らく絵に乗り移る異能を持つ付喪神なんだと思う」


 元はただの絵が付喪神となり一段ステージが上がった結果だろう。

 下位存在と言える普通の絵に乗り移るような異能が発現したと見て良い。


「ただ制限はあると見て良い。館の外までは逃げ出せないんじゃないかな」

「……なるほど。一目でよくそこまで分かるね。ホント、すごいよ」

「ありがと。さ、気を引き締めて。付喪神は他にも居て機会を窺ってるよ」

「了解!」


 ハジメの要望を満たしつつも的確な助言でサポート。

 完璧なエスコートだ。本当、無駄にスペックが高い。


(あーあ、黴臭くてやんなっちゃう。何で僕がこんなとこに)


 許されるなら外から館ごと塵一つ残さず燃やしてやりたい。

 内心で延々不満を垂れつつもハジメからは目を離さない。

 心配しているからでないというのは皆、承知の上だろう。

 単に好感度を上げれるスパダリチャンスを狙ってるだけだ。


(暇だし……しりとりでもしようかな。神央累。偉大なる存在……)


 しりとりの「り」で「り」から始めないのはまだ良い。

 林檎、ゴリラが黄金パターンだが強制は出来まい。

 最初のワードを自由に使うのもそう珍しくはないのだから。

 だがよりによって自分の名前から偉大に繋げるのはカスが過ぎる。


(いと麗しき地上の星。至高の美。美の結晶)


 ルイがナルしりとりに興じている間にも状況は進んでいる。

 順調に館を攻略し遂にボス付喪神と対峙するハジメ。

 苦戦しながらも今まで培った全てを使い果敢に立ち回り、


「はぁ……はぁ……た、倒せた?」

「うん。九十九さんの勝ちだよ。お疲れ様」


 遂には勝利を手にする。

 あちこち傷だらけでボロボロ。

 手入れの行き届いていた髪も切られてしまい酷い有様だ。

 それでもハジメの表情には確かな達成感があった。


「そっか……私、やれたんだ。やった……やった……!!」


 喜びを噛み締めていたがルイが温かい目で自分を見ていることに気付く。

 途端に恥ずかしくなったハジメはゴホンを咳払いを一つ。


「にしても髪、酷いな。これもうバッサリ切った方が良いかもだ」


 これを機会にショートにしようかな、などと下手な話題転換。

 しかしそこには触れずに、


「良いかもね。きっと似合うよ」

「そ、そうかな? えへへ」


 よし、と深呼吸をしてハジメは微笑む。


「帰ろっか!」

「ああ、帰ろう」


 とても良い空気だ。ルイは内心でほくそ笑む。


(完璧だ。完全に流れが来ている)


 あ、フラグ。

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― 新着の感想 ―
辿り着いたのは放棄された洋館。 ミステリーなら殺人事件の現場にでもなりそうだ。 ハジメちゃんがいて廃墟の洋館とか事件解決はするけど殺人復讐自体は完了しそうだな(笑)
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