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お前がスパダリになれなかったせいで世界が滅びました。あーあ  作者: カブキマン


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あちゃぁ 中

「ま、こんなもんかな」

「……」


 スパダリムーブでヒロインを元気づけられはしたがそれはそれ。

 手合わせは当然の如くモモの勝利で終わった。

 少しばかり本気を出せばこんなもんだ。

 喋る余裕もないほど消耗したルイは内心、これでもかと憎悪を募らせていた。


(年下の男にしゅきしゅき甘えるみっともねえ年増女が舐めやがって……!!)


 そうさせたのは誰だよ。


「というかマジでやばいな君。何なら私は引いているからね」

「……あなたがそれを言うか」

「いや言うよ。だって私、課長だよ? 異常戦力なんて呼ばれてる内の一人だぞ」


 今のルイは特対の課長陣を除けば文句なしで一番強い。

 十七歳の少年がその道のプロの中でその位置につけるのは異常だとモモは言う。


「……先生より強いとは思ったけど、そこまでなんだ」


 とハジメがぽつりと漏らす。

 先生というのは座学と実戦を担当している職員のことだ。


「いやいやいやいや。他人事みたいに言ってるが君もだからね?」

「ふへ? いや私は特殊な能力ってだけで」

「その特殊一点突破で何なら私ら異常戦力よりヤバいんだって」


 ちょっと借りるね、とルイの手から扇子を取る。


「不完全な付喪神が既存の魔道具の類と大きく異なるのは器物としての質だ。

通常の魔道具でこれと同じものを作ろうと思えば莫大なリソースが必要になる。

それをさしたる消耗もなくやってのけるって……お嬢さんってば息一つ切れてないじゃないか」


 最初に肩身の指輪を変化した後は動くのもままならないほどだった。

 それまでに走って体力を消耗していたのもあるが力の行使自体の消費もかなりのもの。

 それが今はどうだ? 力を使ったのは今回が二度目だが消耗は皆無。


「出鱈目にもほどがある。この扇子、大切にはしてたけどたかだか五万だよ?」


 その何気ない発言がルイの逆鱗に触れた。


(五万は大金だろふざけんな税金泥棒め!!)


 まあ全身逆鱗野郎は置いておくとしてだ。


「それが何だい。五行をこれ一つでカバーした挙句、使用者の霊力を殆ど使わず撃ち放題って」


 霊力が要るのは宿る異能のスイッチを入れる時だけ。

 以降は消費なしで五行の力を操ることが出来る。規格外としか言いようがない。


「これに値段つけるなら最低でも億は行くよ」

「「お……!?」」


 ハジメは純粋な驚きで、ルイは欲望ゆえ言葉を失う。


「金策レースするなら私はお嬢さんの足元にも及ばないよ」


 はい返すね、とモモはルイに扇子を放り投げる。

 億が! と内心喜ぶがそれはそれとして常識的なリアクションをせねばならない。


「いや、あの返しますよ。一ノ瀬さんのものでしょう」

「モモで良いよモモで。それとその扇子はあげるよ。もう私の扇子じゃないし」


 名を与えるならさしずめ五行扇(ごぎょうせん)ってとこかな? と言いモモは続ける。

 戦いの中で武器を奪うのはよくあること。

 手加減していたとはいえ自分から奪い取れたのは賞賛に値すると。


「丁度役に立つ道具にもなったんだしご褒美ご褒美」


 下手な人間に渡せば危険だがその点、ルイなら問題なしと太鼓判を押す。


「それでも気になるなら……ほら、プレゼント貰うわけだし? 交換ってことにしよう」

「……分かった。ありがたく受け取るよ」

「そうしたまえ。というわけで例のものよろしく」

「ああ」


 収納空間から取り出した扇子から呪いを排除し真っ新にして手渡す。


「ハハハ! これこれ! う~ん良い。良いよこれは。何度も言うが良いセンスだ!!」


 扇子だけにと親父ギャグの天丼。

 苛つくルイだったが億に免じて許してやろうと怒りを鎮める。


「……私はよく分からないけど本当に扇子が好きなんだね一ノ瀬さん」

「みたいだね。ありがとう」


 ハジメから手渡されたスポドリを呷り渇きと癒す。


「お嬢さんもモモで良いよモモで」

「あ、はい」

「そして扇子の魅力だが……聞く? 聞きたい?」


 問いという体だが顔はどう考えても話したいの顔だった。

 オタク特有のあれである。


「えっと……あ、そうだ。モモさん今夜、暇ですか?」

「うん? 何だい急に」

「今日の夜、神央くんとお疲れ様会やるんですけどモモさんも一緒にどうです?」


 ちらりとルイとモモの間で視線を行き来させるハジメを見て二人は気づく。

 出会いが出会いだったから若干距離のある二人を気遣ってのことだろうと。

 実際のところモモはまるで気にしていないし、何なら好感度はグングン上がってる。

 ルイの方も内心はともかく表面上は普通に接しているので無用の気遣いではあるのだが……。


「「……」」


 ほんの一瞬、ルイと顔を見合わせモモは小さく頷いた。


「そうだね。折角だし誘いを受けようじゃないか。年長者だしね。ここは私がご馳走してあげよう」

「あ、いえ実は」


 とハジメが今日のコンセプトを説明する。


「そういうことなら私はデザートでも用意しようか。そっちも既に用意してあるのかい?」

「大丈夫です!」

「そうかそうか。なら私に任せてくれ。二人はアレルギーや苦手な食べ物は?」

「ないです!」

「大丈夫だよ」

「了解。なら私のおすすめの品を用意するとしよう」


 そう取り決め一時解散。

 モモは仕事へ、ハジメは授業へ、ルイは一旦帰宅。

 家に帰り留守の間に溜まっていた家事を済ませ時間まで仮眠を取った。


(はぁ……だるい。だるいが……これもスパダリ業務だ……)


 九課入り以降、ハジメが住居としている官舎に向かう。

 色々な意味で特別なのでその官舎も幹部用の一軒家だ。


「待たせたね」

「ううん、大丈夫。あ、モモさんは仕事が終わったらこっち来るって。八時ぐらいになるって言ってたよ」

「了解。それじゃあゆっくり準備しようか」


 渡されたエプロンをつけ並んでキッチンに立つ。

 お揃いのエプロンを着て二人でお料理。

 旧ハジメルートではあり得なかった展開だ。関係は順調に進んでいると言っても良いだろう。

 それだけにルイは思うのだ。

 これからやって来るモモ、


(シンプルに邪魔だなあ)


 十年ぐらい肌を重ねても決して絆されない。

 ハニトラ耐性◎の男。それが神央累であった。

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― 新着の感想 ―
ハニトラ対策完璧なのはすごい強みだよね。 何なら仕掛けた相手を逆ハニトラ出来るテクもあるし(実験台になったモモさん どんだけなんよルイ君。
ルイ君の好みはさっちゃんみたいなダメンズだからモモちゃんやハジメちゃんもズボラなとこアピールしていけばワンチャンあるか?いやダメか、昨今では炎上不可避な女の癖にみたいな思考になりそう(笑) まあ、ルイ…
ま、まあ確かに一般人から見ても、ヒロインにせよ課長にせよ、絆される・絆されたいほどの存在かというと… ブラウン絡みの事が無かったら絶対、Noな厄ネタな存在だしなぁ… 絆されないのも仕方ないとしか…
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