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お前がスパダリになれなかったせいで世界が滅びました。あーあ  作者: カブキマン


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実績解除

 翌日。日も昇らぬ内からルイと幸男の修行が始まった。

 まあ修行と言ってもルイからすれば指導オンリー。

 自身の修行に役立つようなことは一切ないのだがそれでも構わなかった。


「さぁて。そろそろお昼にしようか」


 昼。幸男の限界が見えたのでルイはそう切り出した。


「……分かった」

「ん、じゃあ準備するね」


 最初に幸男と出会った周回では休憩を提案するとまだやれると反論して来た。

 だが今回はそんなこともなく素直に聞き入れられた。

 無茶な修行で無意味に死にかけたからというのもあるがそれ以上に、


「……俺は、本当に無意味なことばかりしていたのだな」


 努力の方向性が如何に間違っていたかを理解したからだ。

 たかだか数時間の指導で目に見えて成長を感じられればこうもなろう。

 ルイのように自分は間違っていないと言い張れるほど恥知らずではない。


(やっぱ出来の悪い子ほど可愛いものはないなァ!!)


 初期値が低いから成長の幅が大きいというのもある。

 だがそれ以上に大きいのが周回による恩恵だ。

 何年も幸男を指導して来たのだ。直ぐに改善出来る点など当然のように把握している。

 幸男専用カリキュラムだってバージョンは既に百を超えている。

 実際の周回より多いのはルートを開拓して以降暇を見てはアプデを繰り返していたからだ。

 何なら、


『僕はモモさんが好きなんだ』


 告ってキスした時も考えてた。

 モモと初めての夜を過ごしている最中も考えてた。

 そりゃ百ぐらい容易に超えるよねっていう。


「そんなことはないよ」

「……良いんだ。気を遣ってくれなくても」


 ガチ凹みしている姿も堪らなく愛おしい。

 今直ぐ抱き締めたい衝動を抑えながらルイは優しく幸男を諭す。


「確かにこれまで努力の方向性がちょっと不器用だったかもしれない」


 間違っている、無駄だったなどという強い言葉は使わない。

 不器用だったという柔らかい表現を選ぶのは中々にスパダリポイントが高い。

 何でヒロインと関係ないところでスパダリ発揮してるんだお前は。


「じゃあそれが無意味かって言ったら違うでしょ」


 どんな努力をするべきなのか。方向性を定める大切さを知った。

 成果というのは必ずしも成功だけではないのだ。


「どんな分野でもそう。トライアンドエラーを繰り返して目標に近付くんだ。

最短距離を選んだつもりでも途中の壁を超えられなきゃ足はそこで止まる。

壁を超えるために必要なものを拾うため道を戻ればそれだけ時間を食う」


 遠回りに思える道こそが本当の最短ルートなのだ。

 失敗を積み重ねて学びを得た幸男の時間は決して無意味ではなかった。

 理路整然と自身の自虐を否定された幸男は小さく息を吐いた。


「……そうか。そうなんだな。ありがとう。少し、気分が楽になった」

「どういたしまして」


 と、そこでルイはあることを思い出す。


(あれをするか。思いついたは良いがまだ試していなかったし)


 幸男の修行と自身の欲求を両立させる素晴らしい修行だ。


「さて、体力の方はどうだい?」

「少しは回復したように思う」

「結構。じゃあ新しい修行と洒落込もうじゃないか」

「……? 昼食を取るんじゃなかったのか? いや俺は構わんが」


 キョトンとする幸男にルイはニヤリと笑う。


「料理を修行に利用するのさ」

「……???」

「さっちゃんの凝り固まった思考を解すには丁度良いかなって」


 修行内容は料理を作るだけ。

 ルイが幸男の分を、幸男がルイの分を作る。


「……俺は料理の経験なんてないんだが」

「だろうね。“だから良い”のさ。さっちゃんにはリアルタイムで僕の指示に従って動いてもらう」


 その際、工程の内容と共に制限時間を設定するのでそれを遵守すること。

 制限時間が切れて新たな指示が出たなら一つ前の作業はしてはいけない。


「何のためのルールか分かるかい?」

「すまん、よく分からん」

「野菜を切る工程を例に挙げよう」


 丁寧に切っていたら時間が足りなさそうだ。どうする?

 雑に切って達成を優先するか、見栄えを優先するか。

 どちらを選んでも良い。自分が正しいと思った方が正解だ。


「でもどっちつかずは不正解」

「……そういうことか。状況判断能力を鍛えようとしてるんだな?」


 互いが互いの分を作るというのもそのため。

 相手に不味いものを食わせるわけにはという緊張感を与えているのだ。

 流石に戦闘時のそれとは比べ物にならないが修行ならば程よいプレッシャーだろう。


「うん。正解不正解は僕が判断する。不正解ならカウント数だけ罰ゲームだ」

「ほう。何をする?」

「それは秘密。まあでも“健康には良い”ことだから安心してよ」


 罰ゲームあるあるの不味いドリンク系をやるつもりだ。

 幸いここはパワースポット。薬草の類は幾らでもある。

 ルイは幸男と高校生っぽいことがやりたくてしょうがなかった。


「何やら不穏だが……良いぞ。やってやる」


 というわけで料理開始。

 メインは猪肉と茸、野草等を使った牡丹鍋にプラスしてもう何品か。


「えと、これをこうして、こっちも……」


 修行も兼ねてということで指示は基本、マルチタスクになる。

 料理など不慣れな幸男は並行してあれもこれもとなると当然もたついてしまう。

 時間に追われ、どう切り上げるかに迷い、四苦八苦する姿がルイには堪らなかった。


(また一つ知らない君を見つけられた)


 男に言うセリフじゃねえ。

 作業、指示出し、愉悦、全てをこなしながらもルイの動きに一切淀みはなかった。


「はい出来上がりっと」

「……で、出来上がり」


 見栄えが良く味も美味しそうなルイのものと食べられなくはないかな? という感じの幸男。

 完成した料理のクオリティは一目瞭然だった。

 料理経験の有無もあるが根本的に幸男は不器用なのだ。

 仮にルイと同じだけ経験を積んでも同じような差になっていただろう。

 ちなみに米はキャパオーバーだろうということで免除。ルイが二人分を炊いた。


「……や、やっぱりこれは俺が」

「取り決め通りに僕だよ。というわけではい交換ね」


 それぞれが作った料理を交換し二人でいただきます。

 やはり気が咎めるのだろう。幸男は料理に箸をつけずチラチラとルイの様子を窺っている。

 一方のルイは平然と鍋に口をつけ、


「うん、美味しいよ」


 とニッコリ。


「……気を遣わなくて良いぞ」

「気なんて遣ってないよ」


 そりゃ味が濃かったり火の通りがイマイチだったりとマイナス部分はある。

 だけど、


「僕に少しでも美味しいものをってさっちゃんの気持ちはちゃんと伝わってる」


 誰かを想う心は最高の調味料だ。

 よっぽどイカレタ出来ならともかく多少の不足は十分補ってくれる。


「修行なんだから自分のことだけ考えてれば良いのにさ」

「……そういうわけにはいかんだろう」

「アハハ、本当にさっちゃんは良い男だね」


 嬉しそうにパクパク食べる姿に気が抜けたのだろう。

 幸男も自分の料理に手をつけ始める。味は当然の如く美味い。

 それだけにやはり気まずく思ってしまう。


「やっぱり気にしてますって顔だね。じゃあこうしよう」


 自分が帰る前日の夕食を作って欲しい。今度はじっくり腰を据えて。

 そう提案された幸男はリベンジだなと強く頷いた。

 楽しみにしてるよとルイは笑う。これはお世辞でも何でもない。


(フフ、ちゃんとやっても微妙なクオリティになるさっちゃんの手料理かあ)


 だって幸男の手料理を味わうのがこの修行の目的だったのだから。

 上記で述べた幸男の修行と自身の欲求を両立させるとはそういうことだ。

 戦闘面での拙さ乏しさはもう存分に堪能した。

 どうせならそれ以外の部分でもと考えた結果、ルイはこの修行を考案したわけだ。


(嗚呼、本当に楽しみだ……!!)


 寝食を共にする。

 互いに手料理を振舞い合う。 New!

 ヒロインとこなす実績全部男で解除してるスパダリ(仮免試験までもう少し)が居るってマ?

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― 新着の感想 ―
もう完全に精神性が神か悪魔か邪神なのよな… そりゃ気に入った相手(愛玩対象)にはカワイイカワイイするし自分を切り分けて思考出来るし時間経過くらいで存在の在り方が変わったりなんてしない訳で(
もう何と言うか、さっちゃんへの愛がw どんだけ好きなのかw もう、やり取りが付き合う寸前の男女なんよ。 もしや、この世界はBLゲーの可能性が?
もう秘術なり禁術でさっちゃん女に改造したほうがハッピーエンドなのでは? さっちゃんは実力足りてればハジメちゃんのヒーローかもしれないけど
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