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お前がスパダリになれなかったせいで世界が滅びました。あーあ  作者: カブキマン


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Mr.Traveling Man(追尾式屑ミサイル)

「特対に入るにあたっての注意事項なんかはこれぐらいかな?」


 翌日。朝から特対の庁舎を訪れた二人はモモ直々に説明を受けていた。

 以前もそうだったがトップが直々にというのは無碍にはしないという意思表示だろう。


「ここまでで何か質問はあるかい?」

「え、えーっと……神央くんは何か、ある?」


 ハジメとしても聞きたいことがないわけではないのだ。

 フラットな状態ならすんなり問いも形に出来たが今は厳しい。

 質問をと言われても今は説明を飲み込むので精一杯だからだ。


「そうだね。幾つか構わないかな?」

「構わないとも」


 そんな機微を察知しハジメが聞きたいであろう質問を代わりにやるのがスパダリ。

 ルイは見事なスパダリ仕草で的確に質疑応答をやってのけた。

 ハジメと絡むのは久しぶりだが万事卒なくこなしてのけるあたり流石である。


「僕からはこんなところかな」

「私も神央くんが聞きたいことを聞いてくれたので」

「結構。では手続きに移ろうか。職員証用に写真とか撮るけどお嬢さんはメイクとか大丈夫かい?」

「だ、大丈夫です」


 今済ませられる各種手続きに移行。

 表に出ない組織だがお役所関係の例に漏れずこれがまたややこしい。

 ここでもルイはさりげなくハジメをフォローしてスパダリポイントを稼ぐ。

 こういう地道な積み重ねこそが大事なのだ。


「お嬢さんに関しては今日のところはこれぐらいかな。帰宅しても構わないよ」

「……神央くんは違うんですか?」

「うん。昨日は話せなかったけど彼には私の弟子になってもらうつもりでね」


 理由は以前と同じだが以前よりも格段に強くなっているので短期で集中的にという感じではない。

 長期的に継続した指導をという方針のようだ。


「それについては望むところだが少し時間が欲しい」

「構わないが何をする気だい?」

「錆び落とし。実戦は久しぶりだし勘が鈍ってるし霊力も淀んでるからね」


 二週間ぐらいは奈落の樹海に籠もりたいと告げるとモモが軽く目を見開いた。


「またぞろハードなところを選ぶ。しかも二週間、普通は数日が限度だよ」

「問題ない。以前は一ヵ月とかだったしね」

「……なるほど。その若さでそこまでの力を身に着けた理由の一端が分かったよ」


 しかし、とモモはからかうようにこう続ける。


「二週間もお嬢さんを放置して大丈夫なのかい? まだ私を信用したわけではあるまいに」

「勿論そこらも考えてあるよ。九十九さん、これを受け取って欲しい」


 そう言ってルイが取り出したのは桔梗をモチーフにした髪留め。


「え、えぇ!?」


 突然のプレゼントにハジメがあたふたとし始める。狙い通り。

 旧ルートより好感度が高くなっているであろうことを見越してこういう形にしたのだ。


「式神か。用途はなるほど……恐ろしくクオリティが高いねえ」


 効果は通信と緊急時のルイ召喚。

 日本国内ならどこに居ようと常に話せるし一瞬で駆けつけられる。

 十二天将修復の際に培われたノウハウのお陰だ。

 並みの術者が同じ効果の式神を作っても有効範囲は百メートル程度が関の山だろう。


「しきが……?」

「大丈夫。ちゃんと説明するよ」


 使い方の説明と注意を口頭でして、その上で用意していたマニュアルも渡す。

 手厚いサポートは家電量販店の店員にだって負けはしない。


「私の前で渡して良かったのかい?」

「こっそり渡してもあなたならあっさり見抜くだろう。今も一目で用途を看破されたし」


 ハジメが隠し持っていたところで意味はない。


「だから別のやり方で縛らせてもらう」

「へえ?」


 次にルイが取り出したのは扇子。

 昨日、購入した既製品をベースに作った呪具だ。


「ほう? ほうほう、ほほう! 良いセンスじゃないか。扇子だけに」


 モモに刺さるデザインのものでかなり興奮しているようだ。

 死んでくれと内心で罵倒しルイは机の上に扇子を広げる。

 すると扇面が白地に変わり、次いでそこにびっしりと文字が敷き詰められた。


「ああなるほど。扇子にしたのはそういう?」

「愛着がありそうだったからね。僅かでも思い入れが滲めばより効果は補強出来る」

「良く見ている。流石だね」

「署名するかどうかはあなた次第だ」

「ンフフフ、信を得るため身を切る覚悟があるかどうかというわけだ」

「え、えぇっと?」


 話についていけないハジメが困惑の声を漏らすとモモがくすりと笑う。


「呪いの藁人形を知っているかな?」

「は、はい。あの夜中に釘を打つんですよね?」

「そうそう。これはその類似品みたいなものでね」


 署名した上でここに記された約束事を破れば呪いが降り掛かる。

 普通なら実力差もあって呪いは通用しないが、


「条文の内容と私が自らの意思で署名したとなれば話は変わって来る。

細かい話は長くなるから省くがこれを受け入れた上でお嬢さんに手を出せば私はタダでは済まない」


 それだけ理解していれば良いと説明を締め括るとモモはルイに視線を戻す。


「一つ条件を飲んでくれるなら署名しよう」

「何だい?」

「君が戻って来たら」

「ああ、当然破壊するよ。ちゃんとあなたの前で」

「いや呪いを破棄するだけで良い。残った扇子は私におくれ」

「は?」


 何をというルイにモモは言う。


「だって勿体ないじゃないか。こんな良い物を壊しちゃうなんて。お嬢さんもそう思うだろ?」

「え? いや私に聞かれても……」

「おっと扇子には興味がない感じかな? なら布教がてら少しばかり講釈を」

「おい、話が脱線してる」


 呆れたように軌道修正を図るルイだが、


(――――計画通り……!!)


 ここまでの流れは全て既定路線。

 今回モモと付き合うつもりはないが好感度を稼いでおいて損はない。

 そのための下準備としてモモに刺さる扇子をわざわざ用意したのだ。


「おっとそうだね。それでどうだい? 何なら普通に買い取るけど」

「いやお金は要らないよ。欲しいというなら事が終わればあなたに贈ろう」

「やった! いや悪いねえ」


 言うやモモは人差し指の腹を噛み千切った。

 ぽたぽた垂れる血も何のその嬉々として扇子に署名を行う。


「これで良いかな?」

「確かに」


 これでやるべきことは全て済ませた。

 今後について軽く話し合いをしてこの日は解散。

 昨日と同じようにハジメを家まで送るとルイはその足で電車に飛び乗る。


(……さっちゃん。今、会いに行くよ……!!)


 頭の中は男のことでいっぱいだった。

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― 新着の感想 ―
相変わらずモモさんへの内心が酷いw アレだけ身体も重ねたのに、デレは無いのか。 それと正反対にさっちゃんへの愛がw どれだけ好きなんですかw
さっちゃん愛されてるなぁ〜さっちゃんが女の子なら全人類相手が嫌なルイ君でもウキウキで抱きそう(笑)
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