表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
お前がスパダリになれなかったせいで世界が滅びました。あーあ  作者: カブキマン


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

45/71

一石乱獲

 感謝状(強制)を受け取り気持ちも新たに六十一周目。

 アパートの一室で目覚めたルイは煎餅を齧りながらこれからについて考えていた。


(うーん、もう百周ぐらいさっちゃんと遊んでたいけど)


 悩んでいるのはルート選択について。

 幸男と絡めるルートはもれなくモモとの交際にラストの暗殺まで付属して来る。

 純粋に幸男とだけ遊ぶルートも構築出来なくはないが旨味が少ない。

 基本欲深なルイとしては嫌な思いをしてでも得が取れそうなら取っておきたいのだ。


(よし、今回は止め)


 思案の末、今回は見送り。

 気分転換がてらハジメとの絡みがあるルートを選択することに決めた。


(このままじゃ顔忘れちゃいそうだし)


 何十年と関わりなければそうなるのも無理はない。

 それはそれとしてヒロインの顔忘れるとかスパダリとしてはあるまじきことだが。


(さっちゃんと出会えないのは残念だけど)


 まあこのルートも悪いことばかりじゃないと思い直す。


(何たって一ノ瀬の奴を抱かずに済むからね)


 お、屑ゥ!


(――――いや待てよ)


 次の煎餅に手をかけたところで閃くものがあった。


(……九十九と出会いながらさっちゃんとも楽しく遊ぶことが出来る。

その上で一ノ瀬とも付き合わずそこそこの恩恵を得られるルートを構築出来るんじゃないか?)


 欲張り過ぎだろ。二兎を追う者一兎も得ずという教訓を知らんのか。

 そうツッコミたくなるが無駄に有能なのがこの男。


(そうだ。これなら諸々の手間も省けて良い感じに……よしやってみるか)


 十分ほどで考えをまとめ必要な仕込みをして六十一周目が本格的に始まった。

 勉学に励みハジメとの接点を作り夏休みに突入。

 勉強会後のデートに行こうとしてぬいぐるみ地獄に巻き込まれる。

 ここまでは既存のハジメルートと同じだが、


「――――そんな自分は、嫌だよ」


 ハジメが力に目覚め指輪を不完全な付喪神化させたところから変化が始まる。


「う、ぐ……あぁあああ……ッッ」

「か、神央くん!? う、嘘……何で、何が……」


 突如頭を抱え苦しみ始めたルイ。

 よく分からないながらも宿る力のお陰で何かいけそうな気がしていたハジメは混乱の極致にあった。


「そう、か……僕は……いや今は良い」


 数分続いた激しい頭痛が終わるとルイの纏う空気がこれまでと一変していた。

 え、え、とハジメが困惑するのも無理はないだろう。


「ありがとう。君のお陰で“思い出せた”。もう、大丈夫。僕が君を護るよ」


 そう告げ軽く頭を撫でるとルイは悠然とクローゼットを出た。

 あの時と同じようにクローゼットを閉じた瞬間にぬいぐるみが突入して来るが、


「失せろ」


 鎧袖一触。これまでの積み重ねを考えれば当然だ。

 あっさりと九十九体どころか異界内のぬいぐるみを全て殲滅した。


「驚いたね。在野にこれほどの子が居たなんて」


 そしてモモを召喚。

 幾度となく情を交わした今のルイだからこそ分かる。

 表情こそ普段通りだが本気で驚愕していると。


「何者だ」

「おっと、これは失礼。私は一ノ瀬百。付喪殺しの頭と言えば伝わるかな?」

「……特対の。僕は神央累だ」

「知らない名だね」


 いやそれより、と頭を振りモモは問う。


「君ほどの実力者ならそもそもこの領域に引き摺り込まれることもなかったんじゃないか?」

「情けない話だが色々と忘れていてね。思い出したのはついさっきなんだよ


 改めてこの男が何をしたか、何を考えているかについて説明しよう。

 まず第一にハジメの力に触れるまで十七周目までの記憶を忘れていた。

 先ほどまでのルイはハジメに出会う以前の神央累だったのだ。

 というのも、


『よし、これで記憶を封じる準備は完了だ』


 今周のスタート時点で自らの記憶を封じていたからだ。

 この状況まで辿り着けたのは事前に行動を指示したメモを残していたから。

 記憶がなくても自分のことは一切疑わないという確信があった。

 実際記憶のないルイは微塵もメモを疑わずその通りにした。


「……思い出した、ねえ」


 何故そんな回りくどい真似をしたのか。

 二つ理由があり一つ目の理由が手間を省くためだ。

 ハジメとの関わりがある状態でモモの召喚条件を満たせるやり方は既存のルートしか知らない。

 だがこれまで通りのやり方でハジメルートに行くなら偽装が必須になる。

 巻き込まれた素人を装わねば怪しまれてしまうからだ。

 隠し通せる自信はあったがかなり面倒なのでここの手間を省きたかった。

 だから異変に巻き込まれた後で記憶を取り戻したという体を装ったのだ。


「問われても答えるつもりはないよ。もう終わった物語だからね」


 ほんの僅かに寂寥を滲ませることで何かがあったことを匂わせる。

 ずっと素人を装うより演技のコスパがずっと低いやり方だ。


「そうかい。なら気にはなるが無理には聞くまいよ」

「そうしてくれ。それより僕とお喋りしてる暇はあるのかい?」


 実はこの時、別の場所でも狂気の玩具箱との戦闘が行われていた。

 この異界が崩壊していないのはそちらに異界を形成しているボスぐるみが居るからだ。


「いや何。君ほどではないがうちの職員も中々に粒揃いなのさ」


 そちらに任せておけば良い。お陰で楽が出来るとモモは笑いこう続ける。


「それにこっちには“私が”対処すべきレベルの問題があるようだしねえ」

「……」

「散々付喪神とやり合ってる私が気付かないわけがないだろう?」


 モモの視線はルイの手に握られた二振りに注がれている。


「世にも珍しい不完全な付喪神。何がどうしてそうなったのか意思だけが欠如している」

「……」

「しかも、だ。それ生まれてそう間もないね?」


 場の空気が張り詰めていく。


「誕生したての付喪神を見たことがあるけど似たような気配がする。

君は一体それをどこで手に入れたのかな? 元から持ってた装備? いや違う。

つい先ほどまで自らが超常の側に居たことすら忘れていたと言ったのは君だ」


 さながら推理もので犯人を追い詰める探偵の如くモモは言う。

 ルイは平静を装いつつも内心焦っている風を装い答える――いや、ややこしいな。


「偶然、拾っただけだよ」

「嘘だね」

「何故?」

「微かにだが君ではない誰かの霊力の残滓を感じる」


 パチン、と扇子を閉じ天の部分でクローゼットを示す。


「そこに居る誰かと同じ匂いだ」

「……」


 両者の肉体から霊力が噴き出し中央で衝突。乱気流が生じる。

 一触即発。並みの人間ならこの場に居るだけでも息が止まってしまうだろう。

 ルイは酷くシリアスな顔をしているが内心は、


(よしよし良い流れだ。僕の想定通りに事が進んでいる……!!)


 かなりウッキウキだった。

 というわけで放置していた回りくどい真似をした理由の二つ目について触れよう。

 幸男だ。思い出して欲しい。そもそもの切っ掛けを。


『……九十九と出会いながらさっちゃんとも楽しく遊ぶことが出来る。

その上で一ノ瀬とも付き合わずそこそこの恩恵を得られるルートを構築出来るんじゃないか?』


 ハジメルートに幸男をどう絡めれば良いか。

 考えた結果、記憶を取り戻す流れが一番だと判断した。

 具体的に説明すると九課入りが決まったところでルイはモモにこう切り出そうと思っている。


『少しの間、錆び落としをさせて欲しい』


 そういう名目でパワースポットに行き幸男と縁を結ぶつもりなのだ。


(待ってろよさっちゃぁあああああああああああああああああん!!)


 後ろのヒロインガン無視で男に夢中……これがスパダリの姿か?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
とはいえ、私も名前忘れたメインヒロイン自体、空気な存在だしなぁ… しかも、「メインヒロイン殺したら解決するんじゃないの?」っていう疑惑があるまま 殺したらだめな理由があるのだろうけど、実際に試した事が…
夜神月みたいなことやってんな
モモちゃん、ルイ君からの好感度低いからなぁ〜累積で10年以上付き合ってるのに(笑)やっぱり公僕の時点でマイナス査定なんですかね? 特対からしたら特級の役ネタの隣に来歴不明の年齢に見合わない実力者がい…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ