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お前がスパダリになれなかったせいで世界が滅びました。あーあ  作者: カブキマン


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遅れて来た青春 中

 ゆっくり校内の様子を見ながら二人が向かっているのはルイの教室。

 屋台だけでなく展示もやっているとのことなのでそれを見るためだ。


「屋台だけではなく展示もとは手が足りないんじゃないかい?」

「ところがそうでもないんだよね。展示と言っても一から何かを作ったとかじゃないからね」

「というと?」

「自由研究の発表。うちは夏休みの宿題に自由研究もあってね」


 高校でも皆無というわけではないが自由研究と言えば小学校ぐらいのイメージが強いだろう。

 だがルイの通う学校では一、二年に限っては自由研究を課題として設定されていた。


「提出してLHRで発表して終わりというのが常なんだけど先生がそれじゃ勿体ないって言い出してさ」

「ああ、なるほど。それで学園祭の展示にも使おうと」

「そういうこと。展示用に教室のレイアウトを少し変えるだけだからさして手間もないんだ」


 そうこうしていると教室に到着。

 華のある展示ではないので客は殆ど居なかったがゆっくり見られるので好都合と言えよう。


「あ、これ私好きだ」


 入口付近でパッと目についた自由研究を見て足を止める。

 内容は芸人のネタ傾向を事務所別にまとめたもの。

 ここは漫才が多い、漫才でも変則的なものなどがと細かに記されている。


「私もこう見えてお笑いにはうるさくてね」

「初耳だ」


 手放しに褒められるほどではない。

 しかしハッと思わせられる鋭い意見もあり中々どうして読ませてくれる。

 何より筆者のお笑いへの情熱がこれでもかと伝わって来るのが良い。


「他も中々。学生だからと馬鹿に出来たものではないんじゃないか?」


 暇潰しという意味ではよくやってるクロスワードと同じぐらいに楽しめそうだ。

 メインの皿であるルイのを後回しにして一つ一つ検めていく。


「……君のクラス、割と個性的な子が多いのかな?」

「まあ、割と?」

「これとか先生、よく許可出したね」


 それはギャンブルを趣味とする人間の依存度合いについて調べた自由研究だった。

 パチンコ屋の外で出て来た客に話を聞いてデータを収集。

 収集したデータからここまでは趣味の範疇と言えるがここからは依存と自分なりに定義。

 そこから更に掘り下げていくというもので内容自体は真面目だがこれ高校生のやることか?


「データ集めのやり方も正当ではあるが場所と人を考えればトラブルの引き金になりかねないし」

「そこはお叱りがあったみたいだけどそれとこれとは別でしょ。ほらここ」

「ああ」


 成果は成果。足で集めたものを頭で整理してまとめた勤勉さ賞賛に値する。

 ルイが示した先にはそのような旨の文章が書かれていた。


「柔軟な考え方をする先生なんだねえ」


 昨今は色々とうるさいだろうにと素直に感心してしまう。

 そうして展示を見て行き遂に本命。ルイのものに辿り着く。

 整った綺麗な字で綴られたタイトルを見てモモは一瞬、本気で呆気に取られた。


「……これ本当に君が?」

「そうだけど何か?」

「何かって……いや、キャラじゃないというか……」


 タイトルは十歳以上の年齢差がある恋愛についての私見。

 そしてタイミング的にあり得ないがドキッとする題材だ。

 あとなまじ字が上手い分、シュール感もある。


「偏見じゃない? 仮にも国家公務員なんだしどうかと思う」

「いやまあご時世的に発言には気をつけなきゃだけど別に私、表に出ないし」


 言いつつ内容に目を通して行くが、


(これはこれは……シビアだねえ)


 世代間の常識による価値観の差異。妊娠・出産。介護。

 年の離れた人間同士の恋愛をする上で生じる問題だ。

 これらは考える必要のあるものだが同時に目を逸らしたい事柄でもある。

 煩わしいことは考えず甘い感情に浸っていたいと思うのが人情だろう。

 そこに容赦なく踏み込み淡々と問題に対する私見を述べている。


(間違ってはいないけど夢も希望も)


 ありゃしない、と最後まで続くことはなかった。


「はは」

「何かおかしいことでも?」

「いや、存外ロマンチストなんだなって」


 問題を踏まえた上での筆者の結論部分。

 そこに綴られていたのは実に甘い祈りだった。

 問題を前に躊躇う心を後押しするのも愛ならば、壁を乗り越える原動力になるのも愛。

 結局のところ愛する心は誰にも何にも止められないというのがルイの結論だった。


「……ロマンチストかどうかは分からないけど変かな?」

「いや私もその通りだと思うよ」


 愛する心は誰にも何にも止められない。愛を求める心も同じだ。

 そのためならば人は何だってやれる。


「まあでもそれはそれとして自由研究でやることか? とは思うがね」

「まあそこは僕も書いた後でちょっと思ったよ。もう一つのテーマにするべきだったかなって」

「おや、他に候補があったのか。ちなみにそれは?」

「市販のお菓子を再現しよう」

「二択の温度差どうなってるんだい」


 その後も各教室の展示を回りつつ昼までの時間を潰す。


「こっち」


 とルイに案内されたのは旧校舎の一室。

 元は文芸部が使っていたらしい部屋のようだが何故ここに?

 モモが問うとルイは少し悪戯っけを滲ませた笑みを浮かべ言った。


「僕の秘密基地なんだ」


 言われて気付く部屋の中は綺麗だし、私物っぽいものもあるなと。


(普段この子はここでのんびり寛いでたりするのか)


 雨の日。一人この部屋で小説を読んでいる姿が思い浮かぶ。

 人との関りを嫌っているわけではなかろう。孤独を好いているわけでも。

 実際、少ないが友人も居るらしい。

 それでも誰かと深く関わろうとしないのは、


(無意識の内に壁を感じているからだろう)


 客観的に見てルイは同年代どころかそんじょそこらの大人よりもスペックが高い。

 当人はそれを誇りもしなければ卑下もせずただ在るがままに受け止めているが他人は違う。

 賞賛か嫉妬か。方向性は異なれど根っこの部分にあるのは同じ。

 自分たちとルイは違うという意識。それが見えない壁として表れている。

 だから深い関わりを持とうとしないのだ。


(迷惑をかけてしまうかも、ってね)


 助けを求められれば手を貸そう。困っていたら手を差し伸べよう。

 だがそれだけ。終わればそっと距離を取ってしまう。

 思い出すのは彼が語った異性の好み。


(そう考えると私は、甘えられてるのかな?)


 だとすれば悪い気はしない。


「どうかした?」

「いや何、光栄だと思ってね。私、秘密基地に招かれた客人一号なんだろ?」

「え」


 何故分かったのか。

 キョトンとするルイが年相応に可愛くて……。


「ハッハッハ! さて何でだろう? さ、それより食事だ食事」

「……変な人だね」

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― 新着の感想 ―
ルイくんはクラスでは高嶺の花として遠巻きに見られるように誘導してそう。接待するのは嫌いそうだけど手のひら返しで踊らせるなら許容範囲なのかな?
ルイ君すごい。 搦手が十重二十重と積み重なってる。 まさに蟻地獄か蜘蛛の巣か。 流石、自分を良く魅せる術を心得てる。
まるでギャルゲのお手本みたいな攻略手腕でやんす… 僕の手のひらで踊れ下等がぁ!とか思ってそう
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