表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
お前がスパダリになれなかったせいで世界が滅びました。あーあ  作者: カブキマン


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

30/43

新ルート開拓

 テーブルの上にはヘラクレス人気の惣菜が所狭しと並べられていた。

 普段ならシールが貼られるや直ぐにはけてしまうのだがモモのクソみてえな大人買いのお陰だ。

 それを咎めておきながら恩恵に預かるルイは本当に良い面の皮をしている。


(他人の金で食うご飯は美味しいな……でもやっぱりこの寂しさは拭えない)


 どんだけ引き摺ってんだおめえは。


「君の方は私に何かないのかな?」


 お茶のおかわりをコップに注ぎながらモモがそう切り出した。


「私の誘いに応じ家に招いてくれたからには何かあるんじゃないか?」

「それはもう済んだ。あなたが何者かを知りたかっただけだし」


 得体の知れない霊能力者が生活圏に居る。

 有象無象ならまだしも自分よりも圧倒的に強い手合いだ。

 どこの誰かぐらいは知っておきたいと思うのは当然だろうと溜息を吐く。


「ああそういう? いやホント、単に惣菜買いに来ただけなんだがね」

「……みたいだね」


 ルイは知っている。

 モモが都内の小型スーパーマップを作りそれを眺めてニヤニヤしていることを。


『誰にも内緒だよ?』


 などと言いながらどや顔で見せられたことがあるからだ。


「だが社会的立場はさておき私が善人か悪人かは分からないんじゃないか?」


 悪人だ。ルイの曇りなき偏見の眼はそう断定している。

 赦されざる税金泥棒一ノ瀬百。何周繰り返してもこの認識だけは小揺るぎもしなかった。

 とは言えそれを馬鹿正直に伝えることは出来ない。


「特対で一つの課の長になろうという人間だ。最低限、その人品は保証されているだろう」


 環境省特異災害対策局は古くは陰陽寮をルーツに持つ歴史ある組織だ。

 受け継がれて来た呪具、魔具、神具の類もかなりのもの。

 その中には悪心を見抜いたりなど人を見定める道具もあるだろう。

 課の長を選ぶとなればその手の道具も用いられているはず。

 ルイの指摘になるほどと頷き、だがどうだろうとモモは疑問を呈す。


「誤魔化す手段があるかもしれないし、そもそもそんなものを使ってすらいないかも」

「だとすればそれは特対の手落ちだね」

「まあそうだけど」

「というかそもそもの話、こんな短時間でその人の善悪なんか量れるものか」

「これまた正論だ」


 とケラケラ笑った。

 その笑顔が癪に障りルイの中でモモの好感度がまた一つ下がってしまう。

 幸男というエースストライカーの足元にも及ばない選択ミスっぷりだ。


「君は私が悪事を企んでいたとしてどうする?」

「阻むよ」

「即答か。しかし互いの実力差を考えれば難しいとは思わないか?」

「出来る出来ないの話じゃない。やるかやらないかだ」


 そしてやると決めたからには全力を尽くす。

 その言葉にモモが問いを投げる。


「手段を選ばず、かね? 例えば邪法を用いたりとか」

「邪法なんて論外だよ」

「全力を尽くすと言ったのに?」

「見解の相違だな。全力を尽くすとはどんな手も使うということではないと僕は思う」


 手段を選ばない。これは全力を尽くすこととは真逆。むしろ怠惰であると断じた。

 その上でこう続ける。


「全力を尽くすというのであれば尚更、手段は選ぶべきだ」

「その心は?」

「手段を選ばない。これって下手な鉄砲でも数を撃てば良いと言ってるようなものだろう」


 目的達成のために何が必要かを見極めそれのみを選び取る。

 それこそが全力を尽くすということだとルイは言う。


「そして何が必要かは状況とそれに相対する個人によって変わって来る」

「邪法は君にとっての最善には成り得ないと。では君にとっての最善とは?」

「あなたが悪事を犯すとしてそれがどんなものかは分からないから具体的なことは言えない」

「なら君という人間が手段を選ぶ上で何を判断基準にするのかについては話せるんじゃないかな?」


 えらく食いつくな。飯食わせろよ。マジうざい死んでくれ。

 そんな本音をおくびにも出さずルイは答える。


「その道が険しければ険しいほど心に憂いを残すべきではない。

ほんの僅かな心の乱れが極限状況下では命取りになる。

数え切れないほど修羅場を潜っているあなたならよーく分かっているだろう?」


 ああしておけば良かった。こうしておけば良かった。

 あんなことをするべきではなかった。自分は間違っていた。

 それどころではない時にこそ、過去の己が足を引くのだ。


「だからこそ己の心に恥じぬ手段を選ぶべきだと僕は思う」


 そして更にこう続ける。


「妥協の外道ほど惨めなものはないよ」


 外道を選べば確実に事を成せるというのであれば一考の価値はあるかもしれない。

 だが選んだところでそこそこ確率が高くなるぐらいならやるべきではない。

 やりたくなかったことをして結局、目的も果たせない。


「一体何がしたかったんだお前はってなるだろう」

「なるほど一理ある。にしても……フフ、妥協の外道か。辛辣だね。では逆に問おう」


 その個人にとっての最善であれば外道を選ぶべきなのか。

 モモの問いにルイは迷わず頷いた。


「そう思うならそうすれば良い」


 相容れはしないので衝突は避けられないだろう。

 それでもその覚悟まで否定するつもりはない。

 ルイの返答にモモはそうかそうかと満足げに頷いた。


「面白い子だ。気に入ったよ。どうだろう、君さえ良ければうちに来ないか?」

「は?」

「君も知ってると思うが特対は万年人手不足でね」


 何時だって人を募っている。

 ルイのように実力と揺るがぬ精神を持つ人間なら大歓迎だとモモは言う。


「ふむ」

「まあ直ぐに返答をとは言わないさ」

「いや一つ条件を飲んでくれるなら構わないよ。給金も要らない」

「聞こう」

「時間がある時で構わないから僕を直接、鍛えてくれないだろうか?」


 予想外の提案にモモは微かに目を見開く。


「まあいきなりこんなことを言われても訳が分からないか」


 理由は二つある、とルイは二本指を立てた。


「一つは少し前に出会った友人の影響でね。改めて自分を鍛え直したいと思ってたんだ」

「もう一つは?」

「あなたを知りたいから」

「――――」


 ぽかんとするモモにルイは言う。


「さっきも言ったが僕があなたを家に招いた目的は果たせてるんだ」


 どこの誰かが分かっただけで十分。

 特に嫌な予感もないしここで縁は途切れても構わなかった。


「でも勧誘という形で縁が続きそうなら丁度良いかなって」

「丁度良い?」

「あなたが言ったんだろう? 自分は善人か悪人か分からないんじゃないかと」


 一ノ瀬百という人間を見極めるために師弟関係を築くのは悪くない。

 指導者と教え子という形ならば見えて来るものもあるだろうと。

 ついでにもし何か企んでいる悪人だった場合、手の内も知れる。


「ほらお得だろ?」

「……なるほど。いや、あなたを知りたいなどというから口説かれてるのかと思ったよ」

「まあ直ぐに返事をとは言わないさ。ゆっくり考えてもらって」

「いや良いよ。私としても有望な若い子を育てるというのは望むところだからね」


 なら話は決まりかな? とルイが問えばそうだねとモモが笑う。


「あと給金はしっかり払うよ。そこをね、疎かにすると不味いからさ。公務員的に」

「そう? ならよろしく」

「うむ、よろしく頼むよルイくん」


 握手を交わす二人。

 さて何故ルイがこのような提案をしたのか。その理由がこれだ。


(よし、これで今回のルートでも修行環境を構築出来たな。待ってろよさっちゃん!!)


 次周も幸男で楽しむ気満々だった。うん、ゴミ。

ここまで読んでくださりありがとうございます。

励みになるので気に入って頂けたらブクマ、評価よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
無意識に俺のさっちゃんならそっち選ぶよね?選んで!って願望溢れてて草 しかし現実は…機人絶対許せねぇ!よくも俺の親友を穢したァァ!
愛しのさっちゃんは妥協の外道にされちゃったんだ。 果たしてこの周回での再開があるのか? あったとしてルイ君の心に去来するのは? 待て次回な感じですね。
>「妥協の外道ほど惨めなものはないよ」 もう次に親友()と出会ったら即絶頂モンじゃねぇかなこれ…w アイアンメイデンみたいにグサグサ刺さってる…。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ