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お前がスパダリになれなかったせいで世界が滅びました。あーあ  作者: カブキマン


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またおめえか

 昼休み。全国どこの学校でもこの時間の浮かれ具合は変わらない。

 ルイの教室も同じで今日も今日とて賑わいを見せていた。


「はぁ~……やっぱ良いわぁ。物憂げな美形ってもう見てるだけでダイエット効果あるでしょ」

「顔も良ければ頭も良い。愛想はないけど逆にそこが良いみたいな?」

「そうそう。ああ、欠点もちゃんとあるんだなって」

「でも優しいよね。困ってたらさり気なく助けてくれたって話結構聞くし」


 一番大きな女子グループで話題の中心になっているのはルイだった。

 バカンス周回で勉強に力を入れていないとはいえ積み重ねたものがある。

 何をせずとも学年一位は揺るがないし、運動神経も抜群。

 その上顔もアイドル顔負けなんだから話題にならない日の方が少ないだろう。

 さてそんなルイだが今は昼休みだというのに飯も食わず物憂げな顔で窓の外を見つめている。

 これは別にキャラづくりなどではなく本心からのもので理由は……。


(さっちゃん。君は今、どこで徒労を重ねている……?)


 十月も終わりかけ。

 あれから二ヵ月近くも経つというのに未だ幸男のことを引き摺っていた。

 当初の予定では樹海キャンプは一週間ほどのつもりだった。

 そこからまた別の場所でバカンスを楽しもうと思っていたのだ。

 その予定をキャンセルしてまで傍に居ることを選ぶほどの入れ込みっぷりはある意味快挙だろう。

 かつてここまでルイの心に刻み付いた人間は肉親ですら居ないのだから。


(会いたい。会いたいよ。そして僕を笑顔にしておくれ)


 永遠に曇り空の方が世のため人のためだろう。


(君が居ない日常はこんなにも色褪せている)


 他の無能じゃ駄目なんだ。ただの無能じゃもう満足出来ない。

 ゴミのような感情がルイの胸を満たしていた。

 結局、憂鬱に囚われたまま昼食も取らず昼休みは終わり午後の授業が始まる。

 そうして放課後、ルイとしてはこのまま家に帰って寝たいのだがそうもいかない事情があった。


「神央くん、これこんな感じで良いかな?」

「ああ。後は僕が仕上げておくよ」


 学園祭の準備だ。あまり愛想のないクール系を装っているがそれはそれ。

 部活にも入っていないのに学園祭の準備もしないとか何やねんコイツってなってしまう。

 人に良く見られるためにはある程度、やるべきことはやっておかねばならないのだ。


「じゃあ僕はこれで」

「あいよ。気ぃつけてなー」


 午後六時前まで作業をして運動部組と入れ替わり下校。

 その足で向かったのはスーパーヘラクレス。

 惣菜に半額シールが貼られる丁度良い時間なのだ。


(お米を炊くのも面倒だしご飯系も買ってくか)


 出来れば親子丼や牛丼が良い。

 ただ割と直ぐにはけてしまうのでないならパックご飯で妥協。

 そんなことを考えながら惣菜コーナーに行くとそこには異常な光景が広がっていた。

 仕事帰りやこれから夜勤に向かう勤め人、買い物に来た主婦、部活終わりで腹を空かせた学生。

 普段ならごった返ししているはずの惣菜コーナーには不自然の空白が生じていた。

 居るのはただ一人。半額シールが貼られた惣菜を気ままに買い物かごに放り込んでいるのは、


「おや」

「……」


 この周回ではまるで縁のない一ノ瀬百だった。


(……そういや時々来てるとか言ってたな)


 モモの小型スーパー巡りで好みのお惣菜を見つけるのが趣味なのだ。

 わざわざマップを作成し個人的にランキングもつけているぐらいの入れ込みよう。

 ここヘラクレスはトップ5に入るお気にだったというゴミ情報を思い出しルイは渋い顔をする。


「これはこれは驚いた、ね。君ほどの年齢でそこまで練り上げられている子は見たことがない」

「僕も驚いたよ。半額惣菜のために堂々と異能を使う裏の人間が居るなんてね」

「ハッハ。これでも日々御国のために頑張ってる身でね。これぐらいのお茶目は許しておくれ」


 さあさ君も選ぶと良いなどと笑うモモを無視しルイは人払いの術を無理矢理破壊する。

 人が流れ出すとモモがほう、と愉快そうに目を細めた。


「やるじゃないか」

「よく言う。僕より余程上手なあなたが本気なら干渉は弾かれていただろうに」

「フフ、面白い子だ。少し話がしたいね。君、家はこの近くかい?」


 言うわけないだろと返すよりも先にこう続ける。


「食事でもしながらお話しようじゃないか。ここの払いは私が持つから、さ」

「……まあ構いませんが」


 モモを見極めようとしている風を装いつつ受け入れる。理由は当然、奢りだ。

 お前はホントに学習しないな。タダ飯に釣られるの何度目だ。


「一人暮らしかね? 地方から上京して来たのかい?」

「両親が居ないだけだよ」

「……失礼なことを聞いてしまったね。謝罪するよ」

「構わない。茶を淹れるから少し待っててくれ」


 来客用のお高いのを淹れテーブルに並べる。


「改めて名乗ろう。一ノ瀬百だ。環境省特異災害対策九課の長を務めている」


 身分証を提示しモモは言う。

 身分証など偽造も可能だと思うかもしれないが特対の人間が使うのは単なるICカードなどではない。

 細かな説明は省くが偽造や奪って使うなどは不可能と思ってくれて良い。


「……付喪殺しのドンか。初めて見たな。僕は神央累。大層な肩書はない。ただの学生さ」

「ほう、知っていたか。いやそれほどの実力で知らないと言われたら逆に驚きだけど」


 だが、とモモは意味深な目を向ける。


「私は君を知らない。その年齢でその実力。名が売れていてもおかしくはなかろうに」

「だろうね。逆に知ってる方が驚きだ。“何をしていた”のかという話になる」


 これまた意味深な返し。

 自分を飾り立てるためにありもしない架空の匂わせだ。

 具体的に言うなら特対のような国の機関が動くべき何かに対処していたのだと誤認させている。


「そうか。何かは分からないが公僕を代表して感謝を述べるとしよう。ありがとう」


 そしてモモはまんまとその目論見に引っ掛かってしまった。

 だが彼女を責めるのは酷だろう。

 ルイほどの年齢でここまで練り上げられているのだから何かあると考えるのは当然。

 繰り返しという特異な背景があるというのも事をややこしくしている。


「良いさ。誰に褒められたくてやったことでもない。ただ……」

「ただ?」

「自分の心に嘘を吐けなかっただけの話だよ」

「そうか」


 全てはもう終わったこと。これ以上の問答は要らない。

 声なき意思を汲み取りモモは小さく頷いた。

 ありもしない物語を匂わせる男。ありもしない物語を感じ取り勘違いする女。

 何とまあ滑稽なやり取りだろうか。


「とりあえず食事にしようか。今日は午後が体育でね。お腹が減ってたんだ」

「そうしよう。実を言うと私も腹ペコでね」

ここまで読んでくださりありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
さっちゃんはプロヴァンスの風になって消えたんだ。 実際この周回でああなったさっちゃんに再開したら発狂ものよね。 そしてももさんとの(この周回での)出会い。 どの様な展開になるのか。
さっちゃんルイ君の心のヒロインに就任する! ハジメちゃんのヒーローはさっちゃんがやってさっちゃんのヒーローはルイ君がやればみんな笑顔だな! 今回の結末次第では次回以降もルイ君のオアシス扱いなのか(笑)…
愛しき雑魚のさっちゃんはもういないんだ…世界はいつだって残酷じゃんね
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