どこでミスった?
【お前がスパダリになれなかったせいで世界は滅びました。あーあ】
「何でだよ!!」
【いや、あの何でって】
何時も通りの定型文で迎えられた途端、ルイはキレた。
コイツがキレ散らかしているのは何時ものことだがブラウンとしては困惑しかない。
【ステータスがまだまだ足りていないのはあなたも承知の上でしょう?】
傲慢。尊大。自意識過剰。
この手の単語を大体コンプしている男とは言えステータス不足は認めている。
認めていなければ勉強に何年も費やしたりモモの指導に必死で食らい付きはしない。
足りないものばかりなのは分かっているはずなのに何故、キレ散らかしているのか。
【何なら今回は大幅な進展が見られたと言っても良いと思いますよ】
ブラウンとしては今回の周回はかなり評価していた。
気の緩みで乙った前回はゴミだが今回は違う。
戦闘力を鍛えるための環境構築をやってのけたのはかなりの成果と言えよう。
昆虫のように同じ行動を擦り続けることに定評のあるルイだ。
同じことを繰り返してモモとのマンツーマン指導を継続させるのは容易だろう。
「お前は一体何見てたんだ!? ものを見る目も考える頭もないなら知能捨てろゴミが!!」
【えぇ……?】
怒りを通り越して困惑しかなかった。
褒めたつもりで知能捨てろとかいう罵倒が返って来るとは普通思わないだろう。
【どういうことか説明して頂いても……?】
こうなるとブラウンとしても何が怒りの理由なのかが気になって来る。
さりげなくお高いお茶とお菓子を出現させ場を整えると、
「……チッ、しょうがない。無知無学の輩に施しをくれてやるのも持てる者の義務だからね」
あっさり乗った。
「おいブラウン、お前ある程度は僕の行動を見てるんだろう?」
【ええ。というかブラウン? それ私のことですか?】
「それ以外に何がある」
地味にブラウン呼びは初めてだった。
四十周以上繰り返してるのにずっとお前呼びだったとか軽く引く。
【……まあ好きに呼んで頂いて構いませんが何故ブラウン? あ、テレ――――】
「排泄物のブラウンだ」
【はいせ……!?】
「というか話の腰を折るな。続けるぞ」
自分の行動を見ているなら指定した場面を映像で流せないのか。
ルイの問いに是と答えた。
自宅でのプライベートな部分は流石に見ていない。
しかし重要な人間と関わっているところなどはしっかり見届けている。
「なら僕が九課入りとした年のクリスマス当日。あそこが一番分かり易い。朝からだ」
【了解致しました】
テレビ画面が切り替わる。
画面の向こうでは早朝からルイとモモがバチバチにやり合っていた。
既にハジメとバディを組んで任務にも乗り出しているがそれはそれ。
あくまで最低限度というだけで実力は幾らあっても足りないのだ。
暇を見てはモモに指導をさせていた。
この“させていた”という認識がルイ的にはとても重要だ。
『世間は聖夜。仕事もないのに朝も早くから……若人的にどうなんだいそれ?』
『去年も勉強漬けだったし別に』
『お嬢さんとキャッキャウフフな夜をとかはないのかね。んん?』
『何だそれ……九十九さんは家族でクリスマスだよ』
家族の団欒は素晴らしいことだ。
邪魔をするつもりは毛頭ない、というのが建前。
実際のところはそれとなくクリスマスを一緒に過ごせないか狙っていたが全て空振り。
当然、色っぽい理由で一緒に居たいわけではない。あくまで救世活動の一環だ。
ルイ的に空振りは屈辱ではあるがステ不足というのなら仕方のないこと。
でも問題は“そこ”じゃない。
『だとしても今日ぐらいはゆっくりすれば良いだろうに』
『僕は何時だって百点満点の僕で居たいんでね』
『ご両親の言葉か。フッフ、本当に見上げた克己心だねえ。報いるのも大人の役目、か』
熱の入った指導は休憩を挟みつつ夜の十時過ぎまで続いた。
そして、
『これから帰って夕食かな?』
『ええ。コンビニでテキトーに何か買って帰ろうかなと』
『おいおい、幾ら何でもそれはないだろう』
仕方ない、とモモは笑う。
『今日は私がご馳走しようじゃあないか』
『……今からどこかの店に?』
『いや? 仕事がなければクリスマスは何時も家でと決めていてね。でも安心すると良い』
代わりにオードブルやケーキはなどはしっかり手配しているらしい。
それで何時も一人、家でクリスマスパーティをやっているのだとか。
『なのでまあ聖夜の食事としてはそう悪くはないものになると思うよ。で、どうかね?』
『ありがたいけど……よろしいので?』
『構わないとも。か~わいい教え子の頑張りを労うのは師の役目だからねえ』
あと単純の一人では消費し切れないから手伝って欲しいというのもあるのだと苦笑する。
『君は若いしお腹も空いてるからガンガン食べてくれるだろう?』
『そういうことなら……お言葉に甘えようかな』
以前も述べたが高いタダ飯を断る理由はないのだ。
シャワーを浴びた二人はそのままモモの運転で彼女の自宅へ。
庶民には一生縁のないようなタワマンの最上階がモモの住居だ。
立場が立場なので相応のところに住んでいるのは不思議ではない。
だがそれがルイの逆鱗に触れた。まあ何時ものことだ。
『……毎年こんな量を?』
『付き合いのある店だからね。一人分だけをというのも申し訳ないだろう?』
届いていた品を食卓に並べていく。
一通り並べ終えたところでモモは照明を弄り部屋を暗くした。
薄暗い室内。照らされているのはテーブル付近だけ。
聖夜ということもあってかなり雰囲気がある。
『……僕、未成年なんだけど』
『安心したまえ。君のはノンアルさ』
ルイのグラスにノンアルワインを注ぎながらモモが笑う。
この時点でもう察しはついているだろう。
何でノンアル用意してるの? という話だ。
『さ、乾杯しよう』
『聖夜を祝して?』
『君の頑張りに、さ』
軽くグラスを合わせ二人の聖夜が始まった。
と、そこまで流れたところでルイが叫ぶ。
「何で順調にコイツとの関係深くなってんだよ!?」
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