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お前がスパダリになれなかったせいで世界が滅びました。あーあ  作者: カブキマン


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悪しき野望

「神央課長。国立博物館に回す人員ですが」

「ああ、そっちはゼロで良い」


 スパダリ業を終えれば課長業。

 こちらは更なる権力を手にするために必要なことなので意欲も段違いだ。

 アホみたいな量の書類を捌きながらもしっかり指示も飛ばしていた。


「え、いやですが」


 東京国立博物館。国内最大の収蔵品を誇る日本最古の博物館だ。

 収蔵品はどれもこれも由緒正しいものばかり。

 大打撃を受けた器物解放戦線が狙う可能性は十二分にある。

 だからこそ警備体制も見直されているのだが、あろうことか人員を引き払えという。

 困惑する静間に言葉が足りなかったと謝罪しつつルイは意図を語る。


「僕の式神を二体、あちらに回す」

「! 累百一式を、ですか。なるほど得心がいきました」


 超越級の式神二体と足並みを揃えられる人員は限られている。

 下手な戦力では逆に足手纏いで警備の質が下がってしまう。

 ならばもういっそ式神だけに任せてしまった方が良いというわけだ。


「浮いた人員は要人警護に就いている者らと入れ替える」

「……それは、些か危険ではありませんか?」


 今度は静間も意図を察したらしい。

 要人警護に回される人員は当然のことながら実力者が選ばれている。

 その実力者を引き抜き劣る人材と入れ替えようというのだ。

 静間が危険と指摘したのは要人の安全ではない。

 護衛の質を下げたことが露呈したら厄介なことになるという意味での危険だ。


「勿論、場所は選ぶとも。皇居と官邸の人員についてはそのままだ」

「……なるほど。悪辣な手をお打ちになる」


 政府は概ね協力的ではあるが個人単位ではそうではない。

 そして非協力的な個人の中にも護衛を付けざるを得ない立場の政治家が複数存在する。

 言い換えると万が一があっても惜しくない人間というわけだ。


「こちらも露呈すれば面倒ではあるが口実もあるしそこまでのリスクはないだろう?」

「そうですな。非常事態を理由に公金の無駄遣いをしているなどと仰られている方も居るわけですし」


 その要望に応えただけと言い張れる。

 些か無理がある反論だが、そこは別方面から補強してしまえば良い。


「ああ。その手の方々の政敵が僕らが何もせずとも嬉々として動いてくれるだろうしね」

「了解です。ではそのように」


 職務をこなし続け時刻は二十三時半。

 一先ず休憩を入れることにした。

 まだまだ仕事は残っているが、だからこそだ。


「……ふぅ」


 コーヒーを淹れ一息。

 流石は僕だ何をやらせても溢れ出る才覚が光ってしまう。

 ひとしきり自画自賛した後でルイは静かに考えを整理していく。


(期せずして、分かったかもしれないな)


 世界の終わりに現れる巨大な影の怪物。その正体。

 当初こそ他のことで手いっぱいで後回しにしていた。

 それでも暇があれば一応、考えてはいたのだ。

 しかしこれと言って有力な説は思い浮かばずというのが実情だった。

 一度、あれを誕生させる儀式の発生源を探してみたこともあるが無駄。

 探り当てる前に乙ってしまったのでここ最近は目の前のタスクに集中していた。

 だがここに来て事情が変わった。


(元々、付喪神だろうとは思っていた)


 話の流れからしてもそうだ。

 明らかにヤバい爆弾であるハジメの異能が関与しているのは濃厚。

 だったらもう付喪神であることは間違いないだろう。


(だが、あんな出鱈目な付喪神になり得るベースが分からなかった)


 例えば三種の神器。

 草薙の剣、八咫鏡、八尺瓊勾玉。

 積み重ねた歴史が段違いのこれらを秘密裏に奪取してハジメの異能で付喪神にしたらどうか。


(まあ、強大な付喪神が生まれはするだろう)


 だが一息で世界を滅ぼせるほどかと言えば首を傾げてしまう。

 三種の神器は天孫降臨の逸話において天照がニニギに授けたものだ。

 積み重ねた時間、信仰、そこにハジメの異能が加算されても限度があるだろう。

 最低ラインで天照と同格。凌駕するとしても精々列島を破壊してのける程度ではなかろうか。

 或いは時間をかければ世界を滅ぼせるぐらいか。


(聖槍、聖剣など各神話体系由来の遺物でも同じはずだ)


 一瞬で世界を滅ぼせるほどに逸脱した付喪神が誕生するとは思えない。

 ハジメの異能が発端ならベースとなる器物の存在は必要不可欠。

 しかし肝心のそれがまるで分からず手詰まりになっていた。

 道が開けた切っ掛けがモモとのやり取りだ。


『――――連中は“核の付喪神”を作ろうとしているんじゃないか?』


 あり得ないと否定したルイにモモは推測出来る絡繰りを語った。

 どこかで核を手に入れてそれをそのまま付喪神にするのは不可能。

 染みついた思念の絶対量が足りないからだ。

 しかし、


『では“核という概念”を利用すれば?』


 核への信仰を神格へと昇華させ現物の核を器として受肉させる。

 変則的な形になるがそれならば可能なのではないか。

 そう推測し、実際に器物解放戦線はそれを実行しようとした。

 ルイ自身、不完全ながら受肉した核の付喪神と戦ったので半ば実証も済んでいる。


(奴らでさえ手間隙かけて大がかりな儀式を用意すればやれたんだ)


 ハジメであればストレートには難しくとも多少の準備をすれば可能だろう。

 そういうやり方が出来るのならば、これまでは見えていなかった選択肢も見えて来る。


(世界の終わりが始まる時、スマホやタブレットなどの電子機器から影が飛び出していた)


 共通点を探せば直ぐに見つかる。

 世界を滅ぼす怪物の正体は一つしかない。


(――――インターネットの付喪神)


 人の想念を収集する器としてはネット以上のものはあるまい。

 国連の調査によればネットの今現在の利用者数はおよそ六十億人。

 成立時からカウントするなら更にだ。それだけの人間から正負問わず想念を現在進行形で収集し続けている。

 もしそれが肉を成せばなるほど、世界ぐらい一撃で破壊してのけるだろう。


(何せ疑似的な集合無意識と言えなくもないからな)


 誰がそんなものを作ろうとしているのか。

 今のところ一番怪しいのが機人佰號だが、正直そこはどうでも良い。


(重要なのはインターネットの付喪神が誕生した後で、僕がどうそれを奪取するかだ)


 一度生まれてしまえば破壊、殺害は現実的ではない。

 どうにか黒幕を打倒した後で封印するのが精々だろう。

 そうなった時、如何にしてその管理権限を己がものとするか。

 ルイの興味はその一点にのみ注がれていた。


(僕だ。僕こそが相応しい。僕以外の誰が世界を滅ぼす力を正しく扱える!?)


 少なくともコイツにだけは渡しちゃいけない。これだけは間違いないだろう。

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― 新着の感想 ―
僕だ。僕こそが相応しい。僕以外の誰が世界を滅ぼす力を正しく扱える!?  あっ、はいわかってたけど未然に防ぐとかじゃなくて自分の物にする気なんですね…ルイくんとインターネットって相性悪くない?エゴサでム…
世界滅亡の原因はインターネットだったのか。 最初はちゃっぴー的なAIがトークされまくって付喪神化、酷使されすぎて人類に向かってきてるのかと思った。 おそらくブラウンも付喪神なんだろうけど、生まれたき…
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