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お前がスパダリになれなかったせいで世界が滅びました。あーあ  作者: カブキマン


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二足の草鞋

 恋人未満友達以上な関係な女子の服を選ぶ。

 年頃の男子高校生にとってはかなりハードルが高いだろう。

 しかしそこは神央累。これも卒なくこなしてのける。


(普段のカジュアル系統を選ぶのは下の下。カスのチョイスだな)


 普段のハジメはカジュアルベースにちょっと可愛さを取り入れたぐらいのスタイルだ。

 言ってしまえば無難な着こなしである。ルイはつまんねえ奴と内心見下していた。

 ただまあコイツはコイツでお行儀の良いのばっかなので他人のことを言えた義理ではない。

 

(わざわざ男に服選べつってんのに変わり映えしないの選んでどうするんだっつー話よ)


 ここでポイントになるのは額面通りに受け取ってはいけないということ。

 あなた好みの服を選んで。

 女の子にそう言われたからって馬鹿正直に自分好みのものをチョイスするのはアウトだ。

 よっぽど酷いものでなければ及第点は貰えるかもしれないがお前はそれでええんか? という話である。

 抑えておくべきポイントが幾つかある。


(まず第一に普段のコイツが選ばなさそうなところからチョイスする)


 だがあまり好みから離れ過ぎてもいけない。

 奇抜な格好は論外だが、そうでなければ何でも良いというわけではないのだ。

 ほどほどに安心感がありつつも、ちょっと冒険した感あるなぐらいを狙うのが定石。


(なら普段はアクセント程度の可愛い系の色を濃くするか?)


 ルイの視界にガーリー系のフリルスカートが目に入った。

 数秒品定めしこの方向はなしだなと却下する。

 普段とは違った印象を与えられるが、多分ハジメの好みからは外れてしまう。


(曲線より直線だな。スポーツカジュアル……は悪くないな)


 悪くはないがもっと他に点数を稼げそうなものがありそうな気がするので一旦保留。

 店の中を物色するその目は真剣そのもの。

 何なら先の決戦の時よりよっぽどマジだ。


「頼んだ私が言うのも何だけど……その、めっちゃ真剣だね」


 引いているというよりは感心した風のハジメ。

 熱心に服を選ぶ男子というのが新鮮だったのだろう。

 この年頃になれば男子もファッションには気を遣うが多数派ではない。

 ハジメの周りにはその手の男子が居なかったらしい。


「そりゃそうさ。僕の選択一つでハジメさんって最高の素材が台無しになるかもしれないんだ」


 責任重大。本気で取り組むのは当然のこと。

 少し冗談めかして笑えばハジメの顔がほんのり赤く染まる。


「ほんともう、お上手だね」

「お世辞じゃないんだけどね。あとはまあ、面白いなってのもあるかな」

「面白い?」

「女の子の服を選ぶなんて経験初めてだし……あ、いや一回あったか」


 と漏らせばほんの少しハジメの目が細くなった。


「へえ、誰の?」

「僕の」

「は?」

「いやモモさんとバディ組んでる時に潜入捜査で性転換してね」

「性転換!? え、いや、気軽に言うことそれ……?」

「まあまあ、そういうのもあるんだよ。で、その時に女性用の服を漁ったんだ」


 ただその時は演出重視の装いで今回とはまた違う。

 ならこれが初体験で良いだろうと言って服選びを再開。


(……見えて来たな。隣を歩く僕から詰めて行けば良いんだ)


 一人で歩くのと二人で歩くのでは服の見せ方、見え方も変わって来る。

 陽気なアロハが隣に居るのだからそこも加味して考えねばならない。


(愛らしさや華美さは今回、排除すべきだな。僕と並べばくどくなり過ぎる)


 じゃあ地味な感じでまとめる? 論外だ。

 それでは女性側が引き立て役になってしまう。


(僕の踏み台になれるなんて本来は国民栄誉賞ものの名誉なんだが馬鹿には分からんからな)


 理解出来ない方が人として真っ当である。


(高校三年。まだ子供だが大人になりかけでもある。なら僕との対比も考えて上品系の路線だ)


 着る人間次第でちぐはぐに見えてしまう恐れはある。

 特に隣のアロハ。軽薄な印象を受ける人間だと噛み合わせが悪い。

 だが今、アロハを着ているのは外面だけは完璧も完璧な神央累である。

 アロハの軽さをスマートな洒落っ気に変えられる。

 ならば隣を歩く女性が上品系のコーデをしていても間抜けには見えない。むしろ絵になるだろう。


「よし、これにしよう」


 さっさっさと目をつけた品を購入。当然、払いはルイだ。

 他人に奢るなんて反吐が出るほど嫌いだがスパダリゆえ致し方ない。

 購入した服をハジメに渡すと当然のようにその場で袖を通すことに。


「ど、どうかな?」

「……良いね」


 清涼感のあるブルーパンツにネイビーのブラウス。

 そしてそれだけだと些か軽いのでブラウスと同色のカーディガンで足元はパンプス。

 そこに仕上げで黒縁の伊達眼鏡を合わせてやればというルイの見立ては見事、的中。

 普段の可愛らしい女子高生から、品のある大学生女子という風に変化した。


「自分で選んでおきながらこう言うのも何だけど」

「けど?」

「その、大人っぽくてドキドキする……かも」

「そ、そっか。それなら良かった、かな? うん、大切にするね」

「……僕の方こそ」


 甘やかで気恥ずかしい空気に二人は少し俯く。

 これだけ見れば初々しい恋人同士のようだ。


「あー、えっと、よし。そろそろ良い時間だしご飯にしよっか」

「賛成! 私もお腹減っちゃった」

「何食べようか? 希望とかあるかい?」

「そうだねえ。ちょっとガッツリ系が良いけど、具体的にはって言われると」


 ルイは今日のデートに際してプランを固めていない。

 その代わり今居る地域と周辺数駅の飲食、アパレル、レジャー関連の施設を全て記憶している。

 その場その場で最適な場所を選べるようにするためだ。

 これがスパダリというものである。


「なら歩きながら決めようか」

「そうしよっか」


 言いつつルイは既に店を複数ピックアップし誘導を始めた。

 結論から言って大成功。満点のランチになった。

 その後もデートという名の接待は続いたがルイは一度も外すことはなかった。


「ありがとうハジメさん。本当に良い息抜きになった」

「いやいや、それは私の台詞だよ。今日は本当に楽しかった」


 庁舎前。仕事に向かうルイと用意された部屋に戻るハジメは最後の会話を交わしていた。

 在り触れた何てことはないやり取り。

 勝負をかけるのは別れ際だ。


「じゃあ私はこれで」

「ああ、待って。最後に一つ良いかな?」

「ん、何?」


 ルイは少し表情に硬さを織り交ぜつつ、問う。


「……今の僕は、何点かな?」


 今日だけのことではない。

 多くを失った日から今日に至るまでのことを聞いているのだ。

 そう察したハジメは一つ深呼吸をして柔らかな笑みと共に答えた。


「百点。出会った時から今日に至るまでずっと満点のルイくんだよ」

「……そっか。それは良かった」


 笑い合い、別れる。これで本日のスパダリ業務は終了だ。

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スパダリ業務…ホストかなにかの亜種かな?
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