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計画


フロートモービルは静かに路地裏へ滑り込み、エンジン音を殺すように停車した。


「ここがニシルの研究施設か……」


レインは車内のホログラムディスプレイに映る建物の情報を確認しながら呟く。


目の前にそびえ立つのは、灰色の無機質なビル。表向きは新素材開発を掲げているが、内部の詳細なデータは非公開になっている。


「やけに静かだな。」


「当然だ。」


ハウンドが低く呟いた。


「"何もない"ように見せるのは、こういう組織の常套手段だからな。」


ハウンドは腕を組みながら、建物の構造を観察する。


• 監視カメラの位置は異常に多い

• 警備員が巡回しているが、あからさまに"軍人上がり"の動き

• 出入りする車両のナンバーが軍事関係の登録車


「新素材開発の研究所にしちゃ、警備が過剰だな。」


レインが言う。


「表向きの業務内容を隠れ蓑にして、何かをやっているのは確定だ。」


ハウンドがフロートモービルを降り、ビルの壁際をゆっくりと歩く。レインも後に続いた。


「内部に入るのは難しそうか?」


「いや、入り口は二つある。」


ハウンドは指を一本立てながら続けた。

「正面から"適正検査の被験者"として入る方法と——」


「強行突破か?」


「……いや、"関係者として"接触するルートがある。」


ハウンドはポケットからデータチップを取り出し、レインのバングルに転送する。


「ニシルの主要取引先に、ある企業の名前がある。"オメガ・サプライ"。」


レインはオメガ・サプライについて調べる。


「兵站関連の会社か?」


「そうだ。この企業の納品リストに、軍事技術関連の装備品が含まれている。どう考えても、新素材開発とは無関係だ。」


「つまり、"納品業者を装って"潜入するってわけか。」


「その通り。取引先に扮すれば、内部の様子を見るくらいはできる。」


レインは少し考え込みながら周囲を観察した。


(確かに、"関係者"として入れば、無駄なリスクを避けられる。でも、向こうも"それなり"のチェックをするはずだ……。)


「偽造身分の準備はあるのか?」


「すでに用意してある。」


ハウンドはレインにデータカードを渡した。


「俺たちは"オメガ・サプライの技術担当者"ということになっている。お前は私のアシスタントだ。」


「へぇ、俺がアシスタントね。」


レインは少し皮肉げに笑った。


「納品リストには"戦術装備"の新型試作品が含まれている。俺たちは、それを納品しに来た"業者"として振る舞う。」


「……それで、どこまで踏み込める?」


「施設内部の"搬入ルート"と"研究フロア"までは行ける可能性が高い。」


「つまり、"実験エリア"には直接行けないか。」


「そういうことだな。」


ハウンドはフロートモービルのトランクを開け、黒いケースを取り出した。


「一応、これも持っていく。」


「……これは?」


「"小型偵察ドローン"だ。内部の様子を探るのに使う。」


レインはハウンドからケースを受け取り、少し重みを確かめながら頷いた。


「準備は整ったな。」


「問題は、向こうの反応次第ってところか。」


「そういうことだ。」


ハウンドはフロートモービルのロックをかけ、ビルへと向かって歩き出した。


「さて、ニシルの"実験場"……どんな顔を見せる?」


レインは軽く息を吐きながら、ハウンドの後を追った。


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