疑念
頭の中で、状況を整理する。
(戦場の中心を突っ切るのは無理。
出口は開いているが、あそこに行けば絶対に見つかる。)
手のひらが汗でじっとりと湿っていた。
肺が押しつぶされるような感覚。
(どうする……どうすればいい……!)
今、最も危険なのは特殊部隊。
彼らが作戦エリアを拡大する前に、どうにかして"外"へ出なければならない。
だが、普通に逃げたら絶対に捕まる。
この状況で脱出するには、「彼らの作戦範囲の外へ移動する」しかない。
──その瞬間、レイの脳裏に浮かんだのは、ここへ来るまでのダクトの構造だった。
「……ある。」
レイは唇を噛みしめながら、壁際に目を向けた。
そこには、通常の通路とは異なる、設備管理用のメンテナンススペースがあった。
「出口」ではなく、
「誰も通らない場所」に行く。
この学園の建築構造上、メンテナンススペースは特殊部隊の作戦エリアには含まれない。
理由は簡単だ。
彼らは「敵を制圧すること」に集中しているからだ。
(人ひとりがギリギリ通れるくらいの幅……
そこを抜ければ、作戦エリアの外に出られる。)
選択肢はない。
もし間違えたら──死ぬ。
「……ッ!」
レイは息を殺し、体をできる限り小さくする。
視線の先では、特殊部隊が次々と戦場に進行し、制圧を始めていた。
足音が近づく。
完全に彼らの視界に入るまで、あと数秒──
(今しかない!!)
レイは一気に壁際へと滑り込み、
メンテナンススペースのわずかな隙間に体を押し込んだ。
その瞬間──特殊部隊が視界の外へと消えた。
息を詰めたまま、レイはしばらく動けなかった。
心臓がバクバクとうるさいほど鳴り響く。
体が冷え切ったように震えていた。
(……生き延びた……のか?)
恐る恐る身を起こし、周囲を確認する。
作戦エリアの外。
彼らの視線も、武器も、自分には向いていない。
──逃げ切った。
しかし、レイの脳裏に焼き付いていたのは、特殊部隊の圧倒的な制圧力。
彼らは「秩序を守る者」ではない。
「支配する者」だった。
そしてもう一つ──
自分が「生きるために、秩序を疑った」ということ。
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