訓練
朝の空気は冷たく澄み渡り、訓練場の地面にはうっすらと夜露が残っていた。
レインが外に出ると、すでにハウンドが待っていた。
両腕を組み、鋭い視線をこちらに向ける。
「遅い。」
「……飯食ってすぐ来たんだが。」
「私の感覚では遅い。」
(……理不尽。)
レインは軽く肩をすくめながら、ハウンドの前に立った。
「で、何をするんだ?」
「カンフーを教える。」
「言葉だけ聞けばまともそうだな。」
ハウンドは無言のまま、スッと右足を半歩引いた。
それだけで空気が変わる。
重心が低く、全身の力が無駄なく均等に分散されている。
肩は力まずに落ち、腕は微妙な角度で前に構えられている。
まるで獣が獲物を狙うかのような、静かで研ぎ澄まされた構え。
(……さっきまでただ突っ立ってたのに、いきなり"戦う"空気になった。)
レインが感心する間もなく、ハウンドが動いた。
シュッ——パンッ!
目の前から一瞬で姿が消える。
踏み込みと同時に体が沈み、無駄のない動きで距離を詰めてくる。
その流れのまま、右の掌底打ちが鋭く突き出された。
(——速い!)
レインが反応する前に、ハウンドの掌底が腹の寸前でピタリと止まる。
わずかに押し込まれた空気の圧力が、肌を叩いた。
「お前、見てただけか?」
「……いや、どんな指導方法かを確認してたんだよ。」
「言い訳はいらない。次はお前がやる番だ。」
ハウンドは腕を組み、じっとレインを見つめた。
「まず、やってみろ。」
「いや、普通は手順とか——」
「型は見て盗め。」
「お前、それ、完全に"才能でやるタイプの指導"じゃねぇか。」
「当然だろう。」
ハウンドは即答する。
「私のカンフーは才能によるものだ。才能があればできる。才能がなければできない。それがこの世界の理だ。」
「……なら、教えられるわけがないってことか?」
「私は"学んで"カンフーを身につけたわけではない。一人で向き合い、体を動かし、ただ"才能"を使っているだけだ。」
レインはハウンドをじっと見つめた。
(つまり……"才能を学ぶ"という発想がない。)
この世界において、"才能"は持っているものだ。
だから、誰かに"学ぶ"という考えがない。
ハウンドにとっては、"カンフー"は努力で手に入れたものではない。
ただ使うもの。
ただ自分の一部としてあるもの。
(だから教えられないし、教えられないことに気づいてもいない……。)
レインはため息をついた。
「……じゃあ、どうすりゃいいんだ?」
「考えろ。」
「教えろ。」
「"感じろ"。」
「……お前、絶対教え方下手だろ。」
ハウンドは眉をひそめたが、再び構えを取った。
「もう一度やる。今度は、"お前にとって最適な動き"を意識しろ。」
「……やれやれ、道のりは長そうだな。」
レインはバングルをタップし、才能を発動させた。
「じゃあ、もう一回……頼む。」
ハウンドがニヤリと笑う。
「ほう。やっと"学習"する気になったか。」
こうして、"直感型指導"という名の"根性論"の訓練が始まった。
そんな女ぶっ〇せー!!めたんめたんにしろぉお!!!
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