引継
「人間観察ってどんな才能なんだ?」
レインが問いかけると、シオリは少し考え込むように指を唇に当てた。
「うーん、基本的には"人に対する観察力"が上がる感じかな?」
「観察力……?」
「そう、細かな仕草に気づけるようになったり、身体の動きを認識できるようになるの。」
シオリは説明を続ける。
「これを発展させると、考えや感情を読み取ったり、経験から行動を予測したりすることもできるんだよ。」
レインは腕を組み、じっとシオリを見つめる。
「じゃあ、"エリスを投げ飛ばした"のも……?」
シオリは少しだけ恥ずかしそうに笑った。
「あれはね、昔お兄ちゃんが柔道をやってて、それを"自分の身体で模倣"したの。」
「模倣……?」
「うん、人の動きを真似ることができるの。でもね、動きを模倣するだけで筋力とか身体能力までは再現できないから、出力は"自分の身体のスペック"次第なんだよ。」
「じゃあ、模倣元より身体能力が高ければ……?」
「より大きい出力を出せるかもしれないね。」
シオリは少し肩をすくめる。
「私はスペックが高くなかったから、戦闘には使ってなかったけど……。でも、うまく使えば色々応用できる才能だと思うよ?」
レインはシオリの言葉を噛み締めながら、自分のバングルを見下ろした。
("人間観察"……想像以上に奥が深い才能かもしれないな。)
「じゃあ、才能を磨くには多くの観察が必要ってことか?」
レインが問いかけると、シオリは小さく頷いた。
「うん、そうだね。観察するだけじゃなくて、経験も積むことで、より精度が上がるんだと思う。」
「経験……例えば?」
「うーん……」
シオリは少し考え込んでから、指を立てた。
「たとえば、誰かの仕草を観察するだけじゃなくて、その人の行動パターンを蓄積していくと、"次に何をするか"の予測がどんどん正確になっていくよね?」
「……なるほど。」
「戦闘でも同じだよ。いくら相手の動きを模倣できても、"実際に自分の身体で試さないと完璧にはならない"。」
シオリは少し真剣な表情になって言葉を続けた。
「だから、"見て終わり"じゃなくて、"見たことをどう使うか"を考えながら経験を積んでいくことが大事なんだと思う。」
レインはその言葉を反芻しながら、小さく息を吐いた。
(結局、どんな才能も磨かなきゃ意味がないってことか……。)
「……まあ、地道にやるしかないか。」
「うん、でもレイならすぐにコツを掴むと思うよ?」
シオリはにこっと微笑む。
「観察する才能を持ってるんだから、自分自身の成長もちゃんと観察すればいいんじゃない?」
「……なるほどな。」
レインはシオリの言葉に小さく笑った。
("自分自身を観察する"……か。)
"才能"を磨くには、まず"今の自分を知る"ことが必要なのかもしれない。
「ん? 自分を観察し続けたらどうなるんだ?」
レインの問いに、シオリは一瞬きょとんとした表情を浮かべた。
「えっ、自分を……?」
「そうだ。"人間観察"の才能があるなら、他人だけじゃなくて"自分自身"を観察することもできるはずだろ?」
シオリは少し考え込むように視線を落とした。
「……やったことなかった。どうなるんだろ?」
レインも少し興味を持ち、腕を組んで考える。
(自分の動き、言葉、考え方……全部を客観的に見つめ続けたら?)
しばらく沈黙が続いた後、シオリがポツリと呟いた。
「……なんか、すごく不思議なことになりそうだね。」
「例えば?」
「うーん、"自分の考えを予測できる"ってことにならない?」
「……自分の考えを予測?」
「そう。観察を続けたら、自分が次に何を考えるか、何を感じるかが分かるようになるかも。」
「そんなこと、可能なのか?」
「分かんない。でも、レイならできるかもしれないよ?」
シオリは真剣な目をして続ける。
「だって、普通の人は"自分自身"を客観的に見ることができない。でも、レイの才能なら、それができるかもしれない。」
「……もし、そんなことができたら?」
レインは、ふと背筋に奇妙な感覚を覚えた。
("自分の考えを観察し続けたら"、本当に"次に何を考えるか"が分かるのか?)
「……面白いな。」
レインは小さく笑った。
「試してみる価値はあるかもな。」
シオリも、興味深そうに微笑んだ。
「結果が出たら教えてね!」
「……気が向いたらな。」
レインはバングルを軽くタップしながら、頭の片隅で"自分を観察する"という新しい実験を始めてみようと考えていた。
ほえー面白いこと考えるね。今でもこんだけ汎用性の効く才能なのにCクラスってなんかおかしい気もするね。シオリより使いこなせそう!!さすがレイだね♡
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