観測点
シオリはホログラムの姿勢を正し、淡々と説明を始めた。
1. 入学式の"事件"について
• 仮想空間では、入学式の最中に"テロ事件"が発生し、生徒の9割が死亡したとされていた。
• しかし、現実世界ではそんな事件は存在せず、ザイオンの話によれば"模擬戦データ"として扱われていた。
→ 矛盾点:
• 仮想空間での"事件"は、何の目的で発生したのか?
• 本当にただの"データ"なのか、それとも何か意図的な改変が行われていたのか?
2. 兄の存在について
• 仮想空間では、シオリは"Cクラスの生徒"として存在し、"兄が行方不明になっていた"と語っていた。
• 現実世界でも、彼女は兄が行方不明になった事実を語っている。
•
3. レインの外見の変化
• 仮想空間でのレインは、学園の生徒として存在していたが、現実世界で目覚めると、19歳の"別人の姿"になっていた。
• シオリは、この姿を"お兄ちゃん"と認識している。
→ 矛盾点:
• なぜレインの外見が変化していたのか?
• 仮想空間での姿はいったい何だったのか?
4. R9の実態
• 仮想空間では、R9は"レジスタンス"のように認識されていた。
•
• しかし、現実世界では、R9は"公共データバンクの裏に位置する秘密警察"であり、世界の秩序を守るために"破壊と最適化"を行う組織だった。
→ 矛盾点:
• なぜ仮想空間では、R9がレジスタンスと誤認されるような構造だったのか?シオリは、一通り話し終えると、レインをじっと見つめた。
「……こんな感じかな?」
レインは腕を組みながら、シオリの分析を整理する。
齟齬の一つ一つが、この世界の"真実"に繋がっているはずだった。
そう考えながら、レインは静かに息を吐いた。
レインは腕を組み、椅子の背に軽く寄りかかりながら整理を試みた。
(……事件の目的は、ザイオンの言葉から逆算できる。)
"6時間で才能付与は終わる"
その事実から考えれば、"ホール内で相性のいいAIを見つけ、引き上げること"が目的だった可能性が高い。
(そうだとすれば……"入学式の事件"は、才能適性を測るための試験だったのか?)
本当にそうなのかは確証がない。だが、現実世界の秩序が崩れていない以上、"実際に9割が死亡する事件"ではなかったことは間違いない。
(兄については、情報が少なすぎる。)
シオリが語ったことは、仮想空間の中と一致している。
だが、現実世界では"本当に"兄が行方不明になっているのか、それを証明する手段がない。
(……現状では、これ以上考えても仕方ないな。)
(そして、俺自身について……)
レインは、手元のバングルを見つめる。
("俺は体ごとこっちに来れなかった"。そう考えるのが自然だ。)
ならば、"今のこの体は借り物"なのか?
実際、シオリは"ホログラム"のままで、"体"がない。
("AIだから"……と考えるべきなのか? それとも、俺と同じ状況で"体を持てなかった"からなのか?)
(R9のあり方については……考えるだけ無駄か。)
仮想空間でのR9は"レジスタンス"と誤認されていたが、現実では"管理の裏側"を担う存在だった。
試験データの設定が、そういう形になっていただけと考えれば、それ以上の理由はないのかもしれない。
(……正直、あまりまとまってないな。)
レインは深く息を吐いた。
バラバラのピースが揃いつつあるのに、それらが綺麗に嵌まる気配がない。
「……もう少し、情報が必要だな。」
小さく呟き、レインは言葉を続けた。
「……あとは、仮想空間が本当に"仮想"だったのか、この"現実世界"が本当に"現実"なのかも疑問だな。」
レインは、ぼんやりと手元のバングルを見つめながら呟いた。
シオリは、その言葉の意味を測りかねるように首を傾げる。
「どういうこと?」
「考えたことないか?"どっちが本物の世界なのか"って。」
レインはゆっくりと視線を上げた。
「どっちも現実で、どっちも仮想の可能性だってある。」
シオリの目がわずかに揺れる。
「……どっちも?」
「"仮想"という言葉自体が、"ここが現実である"という前提のもとで成り立っている。だが、それ自体が誤った前提だったとしたら?」
レインは指を組み、深く考え込む。
「どちらの世界に重きを置き、どの世界の立場から観測するかによって、"現実"が異なってくる。」
「……つまり、"現実"っていうのはただの視点の問題ってこと?」
「そういうことだな。」
レインは天井を仰ぎながら、ゆっくりと言葉を紡ぐ。
「"仮想空間"にいたとき、俺たちはそれを"現実"として過ごしていた。けど、今こうして"現実世界"にいると、あそこが"仮想"だったと断定される。」
「……でも、もし"ここ"が別の"仮想空間"だったとしたら?」
シオリの表情が固まる。
「どの世界に立つかで"現実"と"仮想"の定義は変わる。ある世界にいる者にとっては、その世界が"現実"で、もう一方が"仮想"になる。そして、それは逆もまた然り……。」
レインはバングルを指先で軽くタップした。
「つまり、"どこから世界を観測するか"によって、俺たちの認識する"事実"そのものが変化するってことだ。」
シオリは、ゆっくりと息を吐き、バングルのホログラムを見つめた。
「……それって、"真実"なんてものはないってこと?」
レインはわずかに苦笑する。
「"絶対的な真実"があるなら、俺も知りたいよ。」
シオリは静かに目を閉じた。
「……なら、レイはどこから"世界"を見たい?」
レインは少し考え、ゆっくりと答えた。
「まだ決められない。ただ……少なくとも"選べる"側にいたいとは思う。」
シオリはその言葉を噛み締めるように頷いた。
("現実"とは何か……。)
レインの心に、未だ整理しきれない疑問が渦巻いていた。
うーん難しい話だ、全くわからん。自分が最初にいたところが現実なんじゃないのー?センセーイ
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