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和解


バングルに指を滑らせようとした瞬間、



コンッコンッコンッ



扉をノックする音が響いた。


(……誰だ?)


警戒しながら少しだけ扉を開けて覗くと、そこには不機嫌そうな表情のハウンドが立っていた。


「……なんだ?」


レインが問いかけると、ハウンドは腕を組み、じろりと睨みつけてきた。


「お前のせいで怒られた。」


「お互い様だろ。」


レインは肩をすくめた。


「じゃあな。」


そう言って扉を閉めようとすると——

ガッ!


硬質な音が響く。

ハウンドが素早く銃を扉の隙間に滑り込ませていた。


「……おい、銃をそんな風に使うもんじゃないだろ。」


レインは呆れたように言う。


「銃を傷めるぞ。」


「問題ない。」


ハウンドは淡々とした口調で返す。


「これは"脅し用"の銃だ。弾は入ってない。」


「……なんなんだ、お前。」


レインは額に手を当て、ため息をついた。


「で、話ってなんだ?」


「ザイオンと話し合って、しかたなくバディを組むことになった。」


「……言い方が癪に障るな。」


「お互い様だろ。」


ハウンドは不満げに言いながらも、視線をレインに向けたまま続けた。


「それで、お前が信用ならない。」


「ほう?」


レインは腕を組んだ。


「で?」


「お前のことを教えろ。」


「……何をだ?」


「全部だ。」


レインは一瞬、沈黙した。


「……全部って、お前な。」


ハウンドは微動だにせず、まっすぐにレインを見つめている。


「どこから来た、どんな才能を持っている、何を考えている……すべてだ。」


「それ、バディっていうより尋問じゃねぇか?」


「私が納得しない限り、バディなんて成立しない。」


ハウンドは腕を組み直し、静かに言った。


「"組まされた"ってだけで、俺はお前を仲間だとは思ってない。」


「随分と正直だな。」


「必要なことだからな。」


レインは目を細めた。


(こいつ、思った以上に用心深いな。)


「……じゃあ、そっちも同じだけ話せよ。」


「は?」


「バディってのは対等じゃないと成立しねぇだろ?」


ハウンドは一瞬、表情を変えた。


「……言っておくが、これで"等価交換"だとは思うなよ。」


「まあ、そっちが一方的に聞くだけってのは気に食わないからな。」


ハウンドは短く息を吐いた。


「……私の才能は"追跡"。」


「追跡?」


「逃げたやつを確実に見つけ出すことができる。」


「どういう仕組みだ?」


「人の動き、癖、空気の流れ、微細な痕跡を見て"そこにいた"ことが分かるんだよ。」


「……なるほど。」


レインは興味深く頷いた。


(俺の"人間観察"とは、似てるようで違うな。)


「で、もう一つ。」


「まだあるのか?」


ハウンドは軽く拳を握り、関節を鳴らす。


「"カンフー"だ。」


レインは少し意外そうに目を細めた。


「武術か。」


「そうだ。追跡は手段、カンフーは制圧の技術だ。」


ハウンドはレインの前で、一瞬だけ流れるような動きを見せた。

その瞬間、レインは直感した。


(速い……!)


一瞬の動きだったが、無駄のない体捌き。

攻撃も防御も、一連の流れとして組み込まれているのが分かる。


「逃げた相手を捕まえて、その場で終わらせるのが私の仕事だ。」


「……なるほどな。」


レインは、自分のバングルを見つめながら小さく息を吐いた。


(対極的な才能だな……)


「で、お前の番だ。」


「……」


(どこまで話す?全部?いや、まだ言うべきじゃないこともある。)


レインはハウンドの目を見つめながら、慎重に口を開いた。


「俺の才能は"人間観察"。」


「……へぇ?」


ハウンドの目が、わずかに鋭くなる。


「どんなもんだ?」


レインは腕を組みながら、あえて淡々と答えた。


「人の仕草や行動を見て、何を考えてるか読める。」


「……それだけか?」


「まぁな。」


「……」


「おまえの才能を見せろ。」


「……口で説明するんじゃダメなのか?」


「口では嘘をつけるだろ。 お前が何者なのか、私が判断する必要がある。」


(……なるほど。)


ハウンドの鋭い視線が突き刺さる。


レインはバングルを操作し、才能の一覧をホログラムに映し出した。


——TALENT——


▒▒▒▒▒▒▒▒▒▒

人間観察(Cランク)



「……やっぱり、そういうことか。」


ハウンドの目が鋭く細められた。


「……何がだ?」


「何か隠していると思いた。これは何だ?」


「……俺にも分からないんだ。」


レインは正直に答えるしかなかった。

ここで隠しても無駄だと直感したからだ。


「人間観察の才能は使えている。だが、もう一つの文字化けしている才能は、今のところ発現していない。」


「……」


ハウンドは腕を組み、バングルのホログラムをじっと睨んでいる。


「……納得しました。」


ハウンドの怒気がすっと引いた。


「では、一緒に考えましょう。」


「……は?」


レインは意外そうにハウンドを見た。


「何が"は?"なんだ?」


ハウンドは淡々と言う。


「この才能が何なのか、そしてどうすれば発現するのか。それを解明するのが、お前自身の課題であり……私の監視対象だ。」


「……監視対象ね。」


レインは皮肉っぽく笑った。


「お前が何者であれ、この社会の秩序を乱す存在であってはならない。才能とは、人間の価値を決める基準であり、管理されるべきものだ。」


「お前は、"管理"する側の人間ってわけか。」


「当然だ。私たちは"選ばれた者"だからな。」


ハウンドの目には、揺るぎない確信があった。


(……コイツは、本気でこの世界の"正しさ"を信じている。)


「だから、お前が何を考えていようと、私が見極める。そして、必要ならば……お前を"処理"することも厭わない。」


ハウンドは冷たく告げる。


「……だから、私の邪魔だけはするなよ。」


「そっちもな。」


レインは静かに返す。

ハウンドはニヤリと笑い、背を向けた。


「ま、死なないように気をつけろ。"バディ"だからな。」


そう言い残し、ハウンドは去っていった。

レインは扉を閉め、深く息を吐いた。


(……めんどくせぇ相棒だな。)


しかし、彼の脳裏には、今の会話の中で見えた"違和感"が引っかかっていた。


(アイツ……何か隠してやがるな。)


「……ま、いいか。」


レインはバングルをタップし、さっき途中だった"才能の検証"に戻ろうとした。



おらぁこいつきれぇーだぁ、いつか〇す♡


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