才能
「そして最後に...」
「……まだあるのか。」
レインが呆れたように呟くと、ザイオンはニヤリと笑い、デスクの上から黒いバングルを取り上げた。
「お楽しみの才能チェックだ。」
そう言いながら、レインにそれを投げてよこす。
レインはキャッチし、手元でじっくりと観察する。
以前仮想空間でつけていたものよりも、一回り大きく無骨なデザインをしていた。重厚なメタリックフレームに、中央には暗く沈んだディスプレイ。
「お前専用のバングルディスプレイだ。才能の管理、認識、使用に必要不可欠なものだ。」
レインは言われるまま、それを左手首にはめる。
バングルが電子音とともに起動し、ディスプレイが浮かび上がる。
——TALENT SCAN——
システムが起動し、データを解析するような音が響いた。
そして、レインの視界に表示されたのは——
Talent:
▒▒▒▒▒▒▒▒▒▒
人間観察(Cランク)
「……なんだこれ。」
一部が完全に文字化けしている。
「へぇ、"才能"が二つあるとはな。だが、まぁ……」
ザイオンはバングルを覗き込み、眉をひそめる。
「この"文字化け"の才能は、まだ使えないみたいだな。気にするな。」
「……使えない才能に意味はない、か?」
レインはディスプレイを見つめながら、静かに呟いた。
「その通り。いずれ判明するかもしれんが、今は考えるだけ無駄だ。それより、お前のもう一つの才能……"人間観察"か。」
ザイオンはふっと笑うと、肩をすくめる。
「Cランクの才能だな。しょっぱいが、悪くはない。」
「……俺の才能、そんなもんか。」
「まぁ、悲観するなよ。ランクが全てじゃない。」
ザイオンはニヤリと笑いながら、タバコを新しく取り出した。
「さぁ、"バグ"野郎……これからどう生きる?」
レインは、バングルに映る文字化けした才能の文字をじっと見つめながら、拳を軽く握った。
(……使えない才能、か。)
だが、何故かその存在がやけに気にかかる。
それが、今後自分にとって何を意味するのかも分からぬまま——レインは、静かに息を吐いた。
「じゃあまあ、今日は終わりだ。」
ザイオンは伸びをしながら椅子を軋ませ、レインを見た。
「お前の才能は確認できたし、情報の整理も済んだ。これ以上ここでグダグダしても仕方ねえだろ。」
「……ああ。」
「俺の部下が外で待ってる。そいつが案内する。まだお前、よく分かってねぇだろ?」
レインは小さく頷いた。
今はまだ、自分の置かれた状況を完全に理解できているとは言い難い。
が、情報は十分に得た。
あとは——
「頼む。」
レインは椅子から立ち上がり、ザイオンもそれに続く。
扉へ向かおうとしたその瞬間——
——ピピッ
突如、レインのバングルが低い電子音を発し、微かに光を放ち始めた。
「……?」
レインは訝しげにバングルを見つめる。
次の瞬間、画面に乱れたノイズが走り、電子音が室内に響いた。
——ピピッ……ピピピ……
「……おいおい、なんだこれは?」
ザイオンが思わず声を上げる。
その表情には明らかな驚きと警戒が浮かんでいた。
「お早いお目覚めだね。よっぽど会いたかったんじゃないか?」
ディスプレイに新たなメッセージが浮かぶ。
《自律型支援AI 起動中……》
《起動完了》
《システム名:シオリ》
光が集まり、空間に微細な粒子が舞うように漂い始める。
次第に形を成し、柔らかな輪郭が浮かび上がった。
そこに現れたのは——
「……レイ……また会えたね……」
透明なホログラムのシオリが、静かに微笑んでいた。
その瞳には、確かに涙が浮かんでいた。
あーシオリの才能ね、なんか冷めるなー、見せつけられてるみたい。でも今日もレイかっこいい♡
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