決断
レイの頭の中は、ぐちゃぐちゃだった。
(エリスの言う通りにしなければ、生き残れないのか!?)
考えようとしても、思考がまとまらない。
情報が多すぎる。
答えを出せる時間もない。
ただ一つ、頭の片隅に浮かんだのは――
「……シオリは?」
エリスが、ピクリと反応する。
レイは、言葉を続けた。
「シオリはどうなるんだ?」
その瞬間――
エリスの表情が、明らかに変わった。
一瞬、夕陽のオレンジが陰るほどの"空気の重み"を感じる。
エリスは、口角を引きつらせながら、
「はぁぁぁぁぁ...」
と大袈裟に溜息をついた。
「この期に及んで別の女の話するぅ?」
レイの眉がわずかに動く。
「普通ぅー? ありえなくなぁい?」
ふざけたような調子。
けれど、そこに"本当の怒り"はない。
"嫉妬"のそれじゃない。
(これは……何か、不都合がある……?)
エリスは、手をヒラヒラさせながら、
それでもレイの視線を真っ直ぐ受け止める。
「そんなこと考えても無駄だから~。」
「私の言う通りにしときなさい。悪いようにはしないからさっ♡」
(……ダメだ。)
レイの中で、何かが強く拒絶した。
(エリスの言う通りにしては、いけない。)
考えがまとまらない。
答えも分からない。
でも――
"シオリに会わなければいけない"。
それだけは、はっきりしていた。
レイは、一切の躊躇なく 走り出した。
「あっ、ちょっ、待って!!」
エリスの声が背後で響く。
「ヤバいって!! もおおおお!!!」
エリスが、追いかけてくる。
それが分かる。
けれど、レイは止まらなかった。
(考えがまとまらなくても――)
(俺は今、"シオリに会いたい"と思った。)




