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登校

(おい……何事もなく授業が始まったぞ。)


学園の正門をくぐり、Bクラスの教室に向かうと、すでに授業が始まっていた。

まるで昨日の惨劇などなかったかのように。

何の説明もない。

まるで"昨日"という時間が存在しなかったように、淡々と進む日常。


教師の声が響く。

ホログラムディスプレイには、世界を構成する「思想」「企業」「才能」に関するスライドが映し出されていた。

「まず、現在の社会を形成している2つの思想について説明する。」


1,「超合理主義派」

• 才能とデータによって最適な生き方を決めることを重視。

• 社会全体の効率を最大化し、個々の役割を最適化する。

• 「無駄のない世界」こそが、人類の進化の形である。


2,「完全自由主義派」

• 個人の選択と意思の自由を最優先。

• たとえ非効率でも、"選ぶ権利"こそが人間の価値である。

• 社会システムの管理を最小限にし、人々が自由に生きることを理想とする。


教師はスライドを切り替え、3つの巨大企業のロゴが映し出された。

「次に、社会の基盤を支える3つの企業について説明する。」


「アララト」

• 超合理主義派の象徴ともいえる企業。

• 公共データバンクの管理を担い、社会の秩序を維持する役割を持つ。

• 人々の才能データを解析し、適材適所の配置を行う。


「ゴフェル」

• 両思想の中立的立場を維持する企業。

• インフラ、エネルギー、輸送などの分野で世界を支えている。

• 技術開発の最前線を担い、どちらの思想にも関与しつつも独自の理念を持つ。


「タール」

• 完全自由主義派に最も近い企業。

• 個人の自由を最大限に尊重し、あらゆる制約を排除することを目指す。

• 監視社会への介入を減らし、データ統制に反対する立場を取る。


(……こうやって見ると、世界の仕組みは単純なようで、実はかなり入り組んでるな。)


教師は再びスライドを切り替えた。

「さて、次に"才能"について説明しよう。」

「才能とは、人間の価値を決める絶対的な指標である。」

「生まれ持った才能をいかに活かし、磨くかが、人間としての成長の鍵となる。」

「超合理主義派の理念では、才能を効率よく管理し、最適な環境で発揮させることが最も重要だ。」


(……昨日までなら素直に聞けた話なんだけどな。でも、今日は違って聞こえる。)


授業の声は遠のく、レイは思考の波に飲み込まれていった。


(……怪我をしている奴がいない。)


不意に気づく。

(昨日の戦場にいた奴は? あの惨状を生き延びた10%のうちの何人かが、ここにいるはずだろ?)

だが――Bクラスだけで200人近くいる。

(10%しか残っていないんじゃなかったのか……?)

(昨日の情報が間違っていた?)


レイは再びクラスを見渡す。

普通に授業を受け、ノートを取る生徒たち。

(……誰かに聞きたい。)

(でも……友達を作るのは得意じゃない。)

誰にどう聞けばいいのか、分からない。

この違和感を、どうやって確かめればいい?

レイは眉間にシワを寄せ、黙ったまま考え込む。

(……どうしたものか。)

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