隠蔽
「……どうなっているんだ……。」
朝、レイは目を覚ますと、昨日の出来事がどう取り上げられているのかを調べていた。
どんな形であれ、あれほどの事件があったのなら、何らかの情報が出回っているはずだ。
しかし――
何もない。
ニュースサイトを開く。
ない。
ブログを漁る。
ない。
SNSのトレンドを確認する。
ない。
掲示板のスレッドを検索する。
ない。
何もない。
ただ隠蔽されたのではない。
偽装された痕跡すらない。
まるで、最初から"何もなかった"かのように。
(……そんなバカな。)
あれだけの騒動があって、何の情報も出ないなんて不自然すぎる。
監視社会のこの世界で、完全に隠蔽することは"不可能"なはずだ。
それなのに、"情報そのものが存在しない"。
事件が起きた痕跡すらない。まるで……"昨日の出来事自体がなかった"かのように。
(夢だったんじゃないか……?)
ふと、そんな錯覚さえ覚えた。
あの血まみれの野戦病院も、こめかみ女に銃を突きつけられた感触も。
しかし――
(違う。俺は確かに"あの場にいた"。)
昨日の出来事は、紛れもなく"現実"だった。
あの光景が、すべて幻だったとは思えない。
その時――
ピピピピ――
バングルのアラームが鳴る。
レイはディスプレイを見る。
【登校時間です】
(……学園か。)
やることもない。
それに――"現場確認"もしておきたかった。
レイはバングルを軽く叩き、無言で立ち上がった。
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