終息
事態は終息した。
戦場のようだった野戦病院も、徐々に落ち着きを取り戻し始めた。
負傷者の移送が進み、医療スタッフの声のトーンも少しずつ落ち着いていく。
そして、レイにも告げられた。
「帰っていい。」
(……帰っていい?)
それだけの言葉に、レイは一瞬だけ戸惑った。
これだけの異常事態を生き延び、無傷でここにいるのに。
戦場のただ中で、特殊部隊の尋問を受けたというのに。
何の追及もなく、ただ「帰れ」と言われるだけなのか?
(異常事態なら、もっと確認すべきことがあるはずだ。)
(俺が何を見たのか、何を知っているのか。あのこめかみ女が俺をどう評価しているのか。)
それなのに、何も聞かれない。
不気味だった。
(尋問はない。でも、監視の目が行き届いているのは間違いない。)
これほどのイレギュラーがあったのに、"放置"されるはずがない。
つまり、これは……
(泳がされているってことか?)
何かを知っているのか試されているのか、あるいはまだ価値を見極めているのか。
だが、一つだけ分かっていることがある。
今、自分は自由ではない。
帰るように言われたのだから、帰るしかない。
だが、どこか監視されているような視線を感じながら、レイは野戦病院を離れた。
誰も声をかけてこない。
まるで"何事もなかった"かのように。
(そんなわけがない。)
だが、追及はされない。
追われているわけでもない。
だからこそ、不気味だった。
食事を取る気も起きなかった。
家へ戻ると、そのままベッドに倒れ込む。
体は疲れているはずなのに、頭が休まらない。
(……監視されている。)
それは間違いない。
だが、それ以上に気になることがあった。
(なぜ、何も聞かれなかった?)
レイは、目を閉じたまま考え続け、意識を手放した。
実は今日誕生なんです。祝ってください。
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