尋問4
銃口の重みが変わらないまま、尋問者の冷徹な声が響く。
「……質問に答えろ。」
(つまり、まだ俺の正体が分かっていない。)
(なら、こっちから"答え"を用意してやる。)
レイはゆっくりと息を吸い、まるで今まで何も怖がっていなかったかのように、淡々と口を開いた。
「俺は、秩序を信じている。」
一瞬、尋問者の指の動きが止まるのを感じた。
レイは続けた。
「昨日までの世界は完璧だった。」
「公共データバンクの管理のもと、誰もが最適な道を歩めた。」
「この世界に生まれた以上、人は決められた才能を最大限に活かし、それに応じた役割を果たす。」
レイの声には、あえて"信仰心"を滲ませた。
どこか、"救済を求める信者"のように。
「それが、この世界の当たり前だった。」
「疑うことなんてなかった。"疑う理由すらなかった"。」
「だって、公共データバンクは"絶対"だからな。」
銃口がわずかに揺れる。
(……乗ってきた。)
レイはさらに畳みかけた。
「だが、あのテロリストどもがすべてを壊した。」
この言葉には、怒りを込めた。
本気で怒っているように。
いや、もしかしたら本当に怒っていたのかもしれない。
「レジスタンス? 笑わせるな。」
「奴らはただのテロリストだ。」
「完璧だった世界を壊し、無関係な人間を恐怖に陥れた。」
「才能に不満がある? なら、もっと違う形で社会に貢献する方法があったはずだ。」
レイは深く息をつく。
「……俺は、ただ普通に生きたかった。」
「だけど、奴らが襲撃してきた。秩序を破壊して、意味のない混乱を撒き散らした。」
「俺はただ、生き残る方法を探しただけだ。」
再び、沈黙が降りる。
レイは心の中で、尋問者の反応を待っていた。
この言葉をどう捉えるか。
尋問者はまだ銃を下ろしていない。
沈黙が続く。
しかし、明らかに最初の殺気とは違う空気を感じる。
(……まだ、説得できる。)
レイはさらに言葉を紡いだ。
「俺は……才能を使いこなせるようになりたい。」
声は静かだった。
だが、決して迷いはなかった。
「学園で、適切に鍛えられた力を身につけるべきだった。」
「その力を使って、俺も秩序を守る側になりたい。」
尋問者は微動だにしない。
だが、耳を傾けているのは確かだった。
(今の世界は壊れた。レジスタンスが暴れたことで、秩序は崩れた。)
(なら、こいつの目的は"修復"のはず。)
「この世界は、完璧だった。」
「公共データバンクの管理のもと、人々は適切に生き、才能を活かし、社会を支えていた。」
「でも、今はどうだ? 混乱と暴力がすべてを壊し、理不尽な不確実性が世界を満たしている。」
「そんな世界は……間違ってる。」
レイの中には、確かな怒りがあった。
それは演技ではなかった。
たとえ「完璧な秩序」に疑問を持ったとしても、
目の前の無秩序を肯定することはできなかった。
「だから……俺も力をつけて、この世界を"元に戻したい"。」
「計算されつくした、美しい世界を。」
「俺は、この世界を壊したいんじゃない。"守りたい"んだ。」
尋問者の手が、わずかに動いた。
銃口が離れる。
(……説得、できたか?)
緊張が、ゆっくりと解けていく。
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