十。“フェイク”・ニュース。
報道が何か言っている。“フェイク”ニュースだった。犯人は勿論加治木だ。昌也は罪を犯したのだ。世界システムを不正利用した。人工知能を作る事なら、お手の物で在る。知能を作り、歩かせた。歩き出した知能は昌也の意図通り介入した世界システム内で変異を行い、“フェイク・ニュース”と、成った。メディアを乗っ取ったのだ。真実と違うニュースを創り出した知能は何処迄も拡がった。報道側が何を映し出しても、無駄だった。
けれど。
“人工知能”は勿論“人そのもの”は操れないし“惑わせられない”のだ。ましてや神は“欺ける筈無い”ーーのだ。
では加治木は何をしたかったのか?
答えは簡単だった。“混乱”を作り出したかった。“創り出したかった”のだ。
其れは勿論見事に成功した。勿論、“只の一部”だけで。××××
× × ×
朝、出勤前や登校前の人々は。何時もと同じ様に其の日も“行動”した筈だ。起床し、顔を洗い。朝食を食べ、出掛ける。だが然し。大概な人々は“朝のニュース”を、観るだろう。そう、大概の人は。だが。
“華月家”は、違った。又其の“親族も”だ。つまり。
陸や海達が事態を“知った”のは、朝では無かったのだ。××××
先ず。“橋本 和希”は朝の“学校”つまり職場で生徒達の奇妙なざわ付きを感じ取った。“其れ”だった。××××
生徒達から詳しく話を聞いた和希は、生徒の中には“映像を保存”した者も勿論居り、先ず其れを見た。そして、“見抜い”たのだった。“からくり”を。神様の“目”等誤魔化せる訳が無かったのだ。即時で露見した。
和希は一先ず“伊島 紀兎”に連絡をしたのだった。コンピューター関連は和希の専門では無い。専門家の方が手っ取り早く解決してくれるからだ。連絡を受けた紀兎は“遅いっ!此の呑気者っ”と、言って来た。つまり既に解決に向けて動いて在たのだった。“流石”と言って置いた。××××××××
勿論紀兎は陸にも連絡済みだった。××××つまり“解決”していたのだ。××××其の日の“橋本 和希”ならば普通にいつも通りに過ごしたのだった。
そして其の日の“夕方”だった。“物語り”が動いたのは。××××
華月 “陸”が、夕方の“ニュース”に、出ていたのだ。××××××××
陸は“謝罪”の為に、登場したのだ。“部下”の失態について。だが“此れ”は。“加治木 昌也”には伝わっていない。もうお気付きだろうーーそう、
“伊島 紀兎”の、仕事だった。加治木が“犯罪者”と罵った彼は、加治木よりずっと“優秀”だった訳だ。だから陸は雇ったのだ。其れこそ“言う迄も無い”と云う奴で在った。×××××××××××××××××××
騒動より前に“遊川 尚子”が“やらかし”てくれたお陰も在った。直子を調べた“和希”は直ぐに、“遊川 正希”に、辿り着いた。そして勿論直ぐに“気付いた”のだ。“正希”が何で在るのかーーにだ。深追いする為に直ぐに紀兎に協力を仰いだ。紀兎も直ぐに“正希”の『性能レベル』について、殆ど正確なデータを割り出した。勿論彼等は“陸”へと報告した。“加治木”の事だったからだ。“正希”の戸籍は巧く“設定”されていたのだ。
“加治木”の別れた“妻”の、“再婚相手”ーーと、して。実在させたのだ。“偽装”は既に犯罪だが、元々“正希”の存在自体“法”に触れるのだ。肩書の偽装等、加治木当人には“今更”だった。
今回は“加治木”の、其の犯罪の話では無い。別の話だ。敢えて云うならば“別の犯罪”の話だ。加治木の今回の罪は、“混乱を起こした事”だ。其の理由については、敢えて陸は触れなかった。何故なら。理由が恐ろしく稚拙で滑稽だったからだ。陸を落胆させる事が目的だったならば成功だが、加治木の目的は違った。勿論彼は陸が好きなのだ。尊敬と云うより崇拝だ。
加治木の目的は、実に下らなかったのだ。“陸から見たら”ーーだが。然し彼には“必要だった”と、戯言を述べて在たのだった。××××××××××
× × ×
「ーー“観念”て何の話ーーだ。……………俺には“必要無い”な…………」と、
グランド・フラワー代表、加治木 昌也は呟きの様にも言ったのだ。瞳は虚ろだった。“既に”だ。
× × ×
「ーーで? “遊川 尚子”さん。気付いたから“復讐”したって、処か。」
「…………っ、わたしは別にっ、…………っ」
「! 待って下さいっ! 娘はっ! っ、いえ“尚子”は別にっ」
「ああ、落ち着いて、“遊川”さん。別に貴方方を罪に問いたい訳では有りませんよ。なあ?“紀兎”?」
「…………っ、陸、さんっ、…………っ」
「“遊川 正希”さん。逆に。“僕の手下”に成ります? 条件によっては、“人間に成れる”よ?」
「っ、?! はっ?」
「! え"っ?!」
「………、あはは」
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「お疲れ〜“終わ”った?」
「げっ、橋本っ」
「“げっ”は酷いわ。“紀兎”君。“和希たん(何ならハート付き。)”て、呼ぶ?」
「! ぷっ、くく、おまえ…………っ」
「んなっ、なっ、! っ、呼ばんっ! ばかかっ!」
「紀兎、反応遅い。」 「っ! りっ、陸さんっっっ」
××××××××××
夕刻、仕事を終えてやって来た“橋本 和希”と、“美津原 敦之”と、其処に在た“伊島 紀兎”との遣り取りに、遊川 尚子は「…………なんなの…………」と、溢したのだった。聴こえた“陸”に、こう言われた。
「慣れて?」と。“うちの常識だから”と。
「………っ、はあ?」
「“僕等の常識は世間の非常識”〜じゃあ、無いけど、さ? 俺達流の、“戯れ方”だよね。な? 三人共?」
「! 陸さんっ!」 「くくっ」 「うぃ〜す」と、三者三様に返したのだった。“照れ”と“爆笑”と、
“通常仕様”だった。やはり遊川 尚子は「…………っ、なんなのっ?!」と、言っていた。××××
× × ×
「で?」
「ん? 何? 敦之?」
「嫌、結局。“フリーフィールド”ばら撒いた犯人は、出て来て無えじゃ無えか?と。それとも判ってんの?」
と、言った敦之に、陸が答えたのを“尚子”はみた。彼女がした事は“こう”だった。歳を重ねると共に浮き出て来た違和感。だが“父親”当人へ、言える訳が、無い。それから。“朧気”な、記憶だった。遥か彼方と為った“片隅”に、確かに“誰か”在たのだ。勿論その存在は“本当の父”だった。然し。遊川 尚子には最早如何でも良かった。自分を育て無かった父等“知らない”のだ。“彼女に取って”は。不器用でも可怪しくとも、ずっと一緒に在た正希が、彼女に取っての“父”なのだ。彼女が一番其れを、理解って在た。
「フリーフィールド“ばら撒いた”のなら、」
陸の言葉に被せて、遊川 尚子は思わず言ったので在った。「“ミントキャンディー”だよ。」と。
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「はあ? “目的”は? つか“資金”は? 結構な金額だぞ? 女子中学生に出せる金じゃ無えだろ?あ、
真逆………“売”………」 「うわあっ! 美津原君っ、すとっぷっ!!!」
「あ?」
「………………“なに”を言おうと…………っ」
「“売りか?”って。」 「!!」
「ぶはっ、紀兎残念っ」 「敦君“言っちゃったw”よ。ふはっ」
「! ちょっ、ふたりして! 笑ってる場合じゃ無いだろ〜っ!!!」
「煩えな。落ち着けよ。何だ今時。はあ。此れだから“未経験”は。何だ御前? “目指せ妖精”なのか?あれ“都市伝”だぞ? 効力無えからな?がっかりすんな?」
「!!!! 黙ってっ?! 美津原君?! なんてこというのこのひとほんと……………っ」
「嫌だってそいつ“敦之”だもん。(w)」 「まあ、“敦之”だからな。(仕方無い。)」
「………………、なんなの…………?」
と、尚子は解らずに問い掛けた。“失敗”だった。答えたのは“敦之”だからだ。「ん?」と。
「はあ?“鈍い女”だな。紀兎が童貞だってだけだよ。“SEXした事無い奴”て意味だ。理解出来たか? お嬢さん?」と。
「………………………………………………、は? ……………っ、っ!、っ!?! ばっ!ばかなのっ?!」
「何がだよ? 紀兎は如何でも良いんだよ。“ミントキャンディー”って?」
「…………………………は?」
「だから。本名は?」 「“波須 奏”」
「で?」
「《第32区中》の、生徒だよ。つまり郡君とも同級生だな。」
「…………32区…………ああ、そういや。“樹海”達って人数多くて、隣りの学区に回されたんだったな………」
「まあ、学区はさしたる問題じゃ、無い。ミントキャンディーこと“波須さんが何をやったのか”だろ?敦君が知りたいのは、さ?」
「察してんなら、さっさと話せよ。」
「ん〜。先ず“目的”ーーだけどな。」と、和希は歯切れが悪かった。
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波須 奏は、「“友達”が“欲しかった”んだって…………」と、尚子は思わず言っていたのだ。勿論敦之に
「………? はあ?」と眉間に皺寄せられたのだが、無理は無いだろう。
波須 奏は、所謂“早熟”だった。故に小学生時、周囲から嫌煙されて在たのだ。其処で中学生と成った彼女だが、“尚子”を見付けた訳だ。尚子も又、周囲からは“ややずれた”存在だったからだ。奏とは違った意味で、“早熟”で在った。此れは彼女の家庭環境によるものだったのだが、奏にしてみれば此の時点では勿論知らない。
奏が“ゲーム”という“ツール”を使おうと思ったのにも、理由が在った。小学生の時、少しだけ仲の良かった少年がゲームに夢中だったのだ。然し彼は引越してしまい、転校した。だから縁が切れてしまった。けれど彼女は思い出した。嫌覚えていたのだ。“楽しかった思い出”を。其れが“淡い恋心”だとは、気付かないままで。
具体的に波須 奏と云う少女が行った事は。フリーフィールドと云う“ヴァーチャルシュミレーションゲーム機”を、購入した事だ。個数にして“十個”程だが。××××××
一個人で十個、如何いう手段で購入するに至ったのか?に、ついては。中々工夫されていた。先ず、自分明記では購入出来ない。高額だからだ。成人又は“就労証明”が要るのだ。だが、彼女には自分を放って置く、父や兄が在た。
彼女の両親は離婚しており、其れは尚子も聞いて知っていた。逆に云えば彼女との交流の切っ掛けが、それだったのだ。
彼女と尚子との“違い”は、
“家族”だった。
奏の父は“ネグレクト”に近かった。完全なネグレクトで無いと云う理由を付けるならば、娘に“生活費”と為る現金だけは渡していたのだ。それから彼女の“兄”だが、既に成人しており、妹にも興味無く、家も出て在た。
奏は其れを利用したのだ。彼女は常にほぼ家に“独り”なのだ。少女のした事は。“父”の“貯蓄”を、持ち出したのだ。××××××××其れから父名義でゲーム機材購入に至った事は元よりで、兄の名義も使った。露見しなかったのは、購入時期をずらしたからだ。兄名義の購入品は、実家住所に届く様に手配したのは勿論だが、確認連絡先も自分の携帯番号を記入しておいた。
それから、
“その他分”についてだが、
其処も勿論考えたのだ。母の“親”つまり祖父母や、母の“義理従兄弟姉妹”等、苗字違いの親族を選び出して、勝手に使用、利用したのだ。露見し辛い様にだった。××××然し、今回の事で疑問に思った和希によって、あっさり露見したのだが。××××××××××要は大した偽装では無かったのだ。“当然”だが。
敢えて語る迄も無いだろうが、親戚等に露見しなかったのは、“荷物転送”システムを利用したからだ。購入主が購入した品を使うとは限らないのが、“購入”である。当然届け先が違っても大概誰も其処迄気に留めないのが、“普通の反応”なのだ。波須 奏はそれを“嫌な位”に、知っていたのだ。家族からも“世間”からも、放って置かれながら。
当人はそう思って在た。
けれど。
調べて“直ぐ”、判ったと云う事は。案外そうでも“無かった”のだ。“世間が”だ。調査に応じてくれた“人達”は、“少なくとも”だ。
宅配業者の者は、何度も同じ様な宅配物を届け、勿論不審に思っていた。
近所の人々も、離婚で一人きりが多くなった謂わば“犠牲者”とも云える少女を、きちんと気に掛けて在た。様子がおかしかった事も。××××××
調査で察した和希は、奏の父親に会った。そして、調べて貰ったのだ。“資金の出処”を。さして難しくも無く、大体予想通りに。やはり父の“隠した貯蓄”だったと知れたのだ。それは。
在り来りで面白味も無い話だ。要は隠し貯蓄の“正体”は、父親にしてみれば可愛い娘の“将来の為の金”だったのだ。結婚資金しかり、進学をするかもしれないーー夢を見付け、留学と言い出すかもーーしれないと。
ただ、此の父親には“今”が視えて居なかったのだ。×××ד娘の現実”が。××××××
将来の案じも大切だろう。けれど、彼女には“今”を標す“もの”が、無かったのだ。食事を買い、食べて寝れば、子供は育つかもしれない。だが、
“心”は成長“しない”のだ。今回の事で波須 奏の父親は其れを思い知った。“気付いた”いいや、“気付かされた”のだ。“娘”に、何もかも思い知らされた。
“兄”も又、同じだった。此れからは今より少しだけでも、妹を気に掛ける様に、成るで在ろう。例え“恐らく”でも。××××××
結果として云うならば。奏は“十台”のゲーム機材を、ばら撒いた。正確に云うならば、友人達に適当な作り話をし、信用させ、機材を渡し、一緒にゲームを始めた訳だ。が、御存知の通り、“ゆっな”達“パーティー”は四名で在る。では後の“六台”は、何処へ行ったのか?
又、何故“奏”は、懸命にそんな台数のゲーム機材を集めたのか?
答えは尚子嬢が言った通りだった。本当はもっと機材を集めたかったが、資金の事もあり勿論実現しなかったのだ。余った六台は妙案も尽きて、彼女の部屋の片隅で眠って嫌、“隠されて”在るのだ。“恐く為った”事も有り、和希に何もかもばれた時に、彼女は泣きたく成ったのだ。“やっとやめれる”と。
“郡”達に初め声を掛けたのは思えば“奏”だったと。何もかも聞かされた尚子は思い出していた。
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「ふーん? で? “残り”の20台の方は?」と、敦之はけろりと言い放った。目を剥いた尚子を他所に、だ。勿論既に露見していたので、誰も動じなかった。
“加治木 昌也”はフェイク・ニュースを放つ前の“準備”として、つまり混乱の準備として、フリーフィールド専用ゲーム機材を、ばら撒いたのだ。そう、“20台”程。目的は“ファン以外”の“ゲーム初心者”を、フリーフィールドに“放つ”事だった。
「一気にユーザー増加させて、馴染む“前”に、フェイクニュース流して。“落胆”させて。で、
落胆したユーザーからの“書き込み”であたふたした僕を“颯爽”と表れて、救けたかったーーね。成程?
“返す言葉も見付から無い”ーーとでも、評して置こうか?」と、
“華月 陸”は落胆の様な溜息で憂いた様にもみえたのだ。
陸は静かに言った。「何方にしろ…………」と。
「ん?」 「え?」
「“スケール”不足だよ」と。「ユーザー増加狙うなら、せめて千台位配りなよ。」と。
丁度、呼び出されて兄“巧”を迎えに行き、出向いて来た“海”が辿り着いたのが此の時で、
何故か激しく同意したのだった。因みに“遊川 尚子”ならば、初めて見る“美少年”顔海に、呆然としながら見惚れて在て、話はちっとも頭に入って来なく成ったので在った様だ。




