《株式会社 グランドフラワー》
“加治木 昌也”と云う、男がいる。ゲームアプリ会社“グランドフラワー”で、代表を務めて在る。つまり“社長”だ。彼は以前は“副”社長の位置に在席した。だが突然の事だった。或る日社長が“辞めた”のだ。昌也にとって“社長”とは、謂わば“全て”だった。社長“陸”は以前は大学に勤め、“兼任”だった。それが加治木には不満だった。何度か進言した。苦言だ。然し。陸が加治木の思いに応える事は無かった。“何方の仕事も大事なのだ”と。陸は言ったのだ。
そんな陸が或る日、大学を辞めて来た。加治木は歓んだ。陸が“会社”に専念してくれると。
だが。“違った”のだ。
陸が大学での教授職を辞任した理由は、会社為に有らず。“家庭”の事情だった。陸の父親“陽藍”が“養女”を迎えた。そして其の新しく陸に出来た“妹”の“為”だったのだ。
“友理奈”と云う其の“女”は、引き取られた時に、病を患って在たらしい。陸が付き添い、世話をしていたらしい。ーーそう聴かされた“加治木”は、発狂しそうだった。
“何故だ”と。
“面会謝絶”の彼女は、当時、居場所すら内密にされ、誰も“彼女”を見た事が無かった。加治木は見た事も無い其の女の為に、相当やきもきした。“陸のするべき事では無い”と。
何故天才が、自分からすれば見た事も無い、得体の知れない女の為に。“そんな下らない事をするのか?”
何故。自分は陸の才能の可能性を諦めねばならないのか?と。
つまり恨んだのだ。
加治木 昌也は陸よりも歳上だった。そして。グランドフラワーでは一番古い社員だった。華月 陸は子供の頃、小遣いを稼ぐ為にゲームを作り出した。その頃は未だ会社では無かった。つまり製作したゲームは企業に売って在たのだ。と、或る日。加治木 昌也の勤める会社に、売られて来た代物が、陸が当時製作したゲーム・アプリだったのだ。その作品を加治木 昌也は“天才だ”と感じた。そして自分の才能の無さを知ったので在った。
彼が何ヶ月も苦労して考えたプランよりも、陸の其れは優れて在たのだ。そして。
何故自分で販売しないのかと、疑問を持った。そして知ったのだ。陸は当時、“三歳”だったのだ。本人と“会う”迄、彼は意味を理解出来なかった。陸は応えた。“未だ子供だから”と。
「“此の歳”でもう、会社“持つ”のが、“未だ”面倒臭い」ーーと。加治木 昌也は彼の言葉の意味が、全く理解叶わなかった。
陸は言ったのだ。“会社を持つ以外にも遣る事が沢山在る”と。今はそれで“忙しい”と。三歳児の姿で。
理解叶わなかった昌也に陸は平然と、答えた。“父親を手伝って在る”と。
当時三歳だった華月 陸は。父親の営む会社の幾つかの“経理”代表だった。其処迄は詳細に説明しなかった陸は言った。“父の会社の手伝いをしているからだ”と。“数字に強いから”と。
「“数学”が、好きなんだ。それで帳簿付けも得意だから。時々手伝ってるんだ。“父の仕事”を。」“まあ忙しい時だけ”ーーだけど、と。
華月 陸の父親は“タウンタウン”のボスだと、加治木 昌也は知ったのだった。そして。
「“父”は“本業”で“小説家”を、している。まあ“主夫”業も、ね。だから“弟達”の『世話』もあるし。後“母”の『ボディガード』も、“しなくちゃ”だから。会社“作ってる”『暇』が、無いんだ。
慌て無くとも、会社は何時でも作れるから、今は“いい”かな。“気の向いた時”で。第一“お小遣い稼ぎ”だから、会社持つと責任が生まれるから、未だ“要らない”んだ。」ーーと。
此の三歳児は本当に。其の小さな体で父親の“事業”を手伝っていた、いいや。“右腕”だったのだ。ーーーー信じ難くも。
加治木 昌也は己の目でそれを見ても、とても信じられなかった。けれど事実だった。天才どころの騒ぎでは無かったのだ。“華月 陸”とは。××××××××
加治木は陸に質問してみた事が在った。聞かずにはいれなかったからだ。“君は何なのか?”と。陸はけろりと答えたのだった。“過去の記憶が有る者だ”と。ーーーーーーつまり、
悟った加治木は思ったのだ。陸とは。“神かっ!”と。加治木にとっての感動だった。“会える”事は、奇跡に近いのだから。人の歴史の中で。“神”の存在は時折出て来る。会ったと云う“人々”も。そして、“子孫”とされる人々も。有名なのは“リアル・コーポレーション”有する“木村”の、一族か。然し“神”とは再び“子孫”の家系に産まれ出るものでは、無いらしいと。“加治木”の知識の中ではそう為って在た。然し“会えた”のだ。此れが感動で無くば何なのだ?と。“彼”は思ったのだ。
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けれど。
其処迄“崇拝”した“陸”は、“加治木”と違ったのだ。だから彼は考えた。“陸”を取り戻す“方法”を。
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「“加治木”さんーー“兄”は怒って、います。何故だと思いますか? あなたはーー“兄”の『夢』を、壊したんです。理解されてますか?」ーーーー
“華月 巧”が、そう言った。陸さんに良く似た顔だった。陸さん程の迫力は無いが、とても整った顔立ちだ。身体全体は陸さんよりずっと華奢だった。“薄い”というか、“幼い”と。大分“若い”から仕方無いのだろうが、
目の前の美形は“俺”には物足りなかった。“怒り”は伝わって来たがーーだ。横には同じ顔の“美少年”が、いた。
“美少年”というより“美少女”だった。“華月 海”と、名乗った。いや、
数年前からうちの看板なのだから知って“在た”が。相変わらずの“美少年”だと“思った”のだ。何処かしら視点合っていない“よう”な、何処かがとぼけたその表情は、変わらないまま“美少女”だった。だから“惜しい”と思った。彼の“専属契約”権利が。まさか。ーーーー陸さん個人の“もの”だとは。
俺も思わなかったのだ。ーーーー思えば騙されたようなものだ。書類物は全てに近く、陸さん任せだった。陸さんが詳しかったからだ。父親が弁護士資格有して在るせいなのか、陸さんが天才だからか。とにかく彼は多方面にその才能の全てが“長けて”いた。恐ろしい程に。だから。
陸さんが“辞めた”時に。引き留める“術”が、無かったのだ。彼は“事務処理”までも、完璧だったのだから。口惜しい程に。“事後処理”ではなく“事前処理”だった。仕事の引き継ぎ等も勿論完璧だった。グランドフラワーから引き揚げる事業業務の処理までも、『全て』が。そうーーつまり。
グランドフラワーは“収入源”の『大半』を、奪われたのだ。『陸さん個人』に。こんな悪質な事があって良いのかと俺は嘆いた。社員も半数程に、減った。これも陸さんの仕業だった。事業立ち上げたい者に、支援したのだ。才能ありきの若い連中は陸さんの援助金を得て、水を得た様に次々独立した。××××××部署も減った。“アプリ”に拘った者と。アプリ部門だけが、残ったわけだ。「? そんなに云うんなら」ーーーーと。華月 “陸”はこの会社を“潰すつもりだった”と、“気付い”た。“あとから”だった。××××××××
それでも俺は、陸さんが目を覚ましてくれるのを、待った。“妹”のためと、大学を辞め、引き篭もってたーー陸さんが。 “復帰”してくれた時ーーみたいに。××××××××
なのに。
“彼”は“俺”を“助手”に選ばなかったんだ。“あろう事”か。俺は“望んだ”のにな? “ついていく!”と。なのにーーーーーーーー
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「ーー“加治木”さん。 そんなに。“兄”が“助手”を使って在る“事実”が。ーー気に入りませんか?」
“巧”氏がそう言ったのが、俺の耳に届いた。
「“優秀”なら“納得”したね。ーーーーあろう“事”か犯罪者とはーーねっ」
“加治木 昌也”は、そう言った。××××××××
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そうーー“助手”は俺が務める“べき”なのだ。昔からそうだった“よう”に。俺以外ありえないのだ。出会った“あの日”から“ずっと”だ。“会社”など貰っても嬉しくもなんとも“ない”のだ。必要なのは“陸さん”なのだから。×××××
なのに。
「“加治木”さんて“頭悪かった”んですね。なんだ。“良い”と、思ってたのに、な。ね? 巧?
“がっかり”だね?」と。
“華月 『海』”が。
“溜息”で言ったのだ。この俺にだーーーーーーなんだこいつ?! 兄“べったり”の、ただのブラコンこじらせの、くせにっ!っ!このガキっ! ーーーーっ
「うっわ。 信じらんねっ。他人様の可愛い従兄弟掴まえて、まあ。酷え“悪口”だ、なあ。 ーーーーなあ? 和希? ーーーー“紀兎”?
“加治木”つったけ? 彼奴ーーーー歳だけ喰った“馬鹿”って。ーーーー“存在する”んだな。
て、“訳”だ。 “加治木 昌也”ーー。“遣り過ぎ”だぜ?
“オーナー”として、勧告に来た。“退去”令だよ。あ、“今すぐ”な?
ちょっと待ってやろうとは、思った、よ? けどあんたは自業自得だよなあ?
俺の“弟分”ーーおっと間違えた。“可愛い従兄弟達”虐めんなよな? “おっさん”は、さ。」
と。入って来た“男”が、俺を小馬鹿にした。ーーーーーーーーっ“例”の“助手”と“橋本 和希”を、連れてーーーーーーっ、?! 何なんだ?!
「…………………………………………“敦”兄ちゃん…………………。」と、“華月 巧”が、つぶやいた。
“華月 海”も。
「……………………。何で“来た”の?」と。「暇なの?」と。
「!」
「海っ、酷いな御前はっ。」
「……………紛う事無き“友の弟”の、称号欲しいか?」
「………………は?」
「“要りま”せん。 何言ってるの? 和希さんはーーはあ。
あ、加治木さん、タイムリミット、タイム“アップ”ですね。 残念。一応“御忠告”を。
“僕達の方が優しかった”ですよ。」と。
“華月 海”が、微笑んだ。初めて会った日の、人垂らし的なあの日みたいな笑顔で。そして、
“彼”に、呼ばれた。
“橋本 和希”だ。
「“遊川”さん、と、御呼び致しますか? いいえーーーー“人工知能さん”ーーとでも?」と。
橋本 和希の瞳は笑ってなどいなかった。いいや。“熱”すら存在しなかった。




