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第二十七話 断ち切る闇と、新たな影の蠢きです

常闇の魔宮】の最奥、謁見の間。


重苦しい闇の気がうねりを上げ、足元の石畳を黒い霧が覆い尽くしていく。


「全員、今度こそここで果てるといい! 我が主の悲願、ここで途絶えさせるわけにはいかん!」


黒衣の人物が手に持った漆黒の小刀を高く掲げると、部屋全体を揺るがすほどの巨大な闇の衝撃波が解き放たれた。


古代遺跡で汐恩を叩きのめし、トラウマを植え付けたあの絶対的な一撃。


だが――今の汐恩に、あの時の動揺は微塵もなかった。


「・・・もう、その手には乗らないよ」


汐恩は深く息を吐き出し、静かに腰を落とす。


一度は恐怖で動かなくなった足が、今はしっかりと大地を捉えている。


一人で受け止める必要はない。背後には、信頼できる二人の仲間がいるのだから。


「燈真、コノハ様・・・行くよ!」


「あぁ! 破邪の陣、展開! 『急々如律令! 破闇の光壁符(はあんのこうへきふ)!』」


燈真が放った数枚の符がまばゆい光の壁を作り出し、迫り来る闇の衝撃波を正面から受け止める。


激しい拮抗。みしみしと光の壁に亀裂が入るが、そこへコノハが躍り出た。


『妾の増した神力を舐めるなよ! 【桜花・千重波】っ!』


神社で力を取り戻したコノハの桜色の神気が光の壁を包み込み、黒衣の闇を力強く押し返していく。


「何・・・!? 我が闇の術が・・・押し込まれているだと!?」


仮面の奥で黒衣の人物が驚愕の声をあげる。


その僅かな隙を、進化した無双の女子高生が見逃すはずがなかった。


バチチチッ・・・!!


汐恩の刀身に、限界まで凝縮された紫の雷光が収束していく。


ただ乱暴に放出するのではない。コノハの神気、燈真の符術の波長と完璧に同調させた、三人の絆の結晶。


「これで・・・決めるっ!」


踏み込んだ足元から空気が爆ぜる。


かつてないほどの神速。残像すら置き去りにし、汐恩は黒衣の人物の間合いへと一瞬で潜り込んだ。


「合体連携技――【迅雷・桜華一閃(じんらい・おうかいっせん)】っ!!」


ドガァァァンッ!!


空間そのものを切り裂くような、紫雷と桜光の渦。


黒衣の人物が掲げた漆黒の小刀は、汐恩の研ぎ澄まされた刃の前になす術もなく砕け散り、その強固な闇の装甲ごと一刀両断された。


『グガッ・・・!? バ、バカな・・・この我が・・・このような場所で・・・っ!?』


激しい爆風とともに、黒衣の人物が吹っ飛び、謁見の間の壁へと激しく激突する。


手から零れ落ちた五つ目の『界渡りの鏡の破片』が、カランと音を立てて汐恩の足元へと転がった。


「ふぅ・・・すっきりした。リベンジ達成、だね」


汐恩はサッと刀を振り払い、静かに鞘へと納めた。


かつての敗北の恐怖は完全に吹き飛び、その顔には晴れやかな笑みが浮かんでいた。


♢


「汐恩、大丈夫か!?」


『見事じゃ汐恩! 妾たちの連携、完璧であったぞ!』


駆け寄ってくる燈真とコノハ。


汐恩は拾い上げた五つ目の破片を燈真に手渡し、ホッと胸を撫で下ろした。


「二人のおかげだよ。ありがとう」


だが、その時――崩れ落ちた瓦礫の中で、倒れていた黒衣の人物が不気味に低く笑い始めた。


『クックック・・・ハハハハッ! 喜ぶのはまだ早い・・・これで勝ったと思うなよ・・・』


「何・・・!?」


燈真が即座に警戒して身構える。


黒衣の人物の身体が、黒い泥のような霧となって徐々に崩壊を始めていた。


『古代遺跡でも言ったはずだ・・・「破片は我が主のもとへ集う」とな・・・。私は・・・・ただの先兵に過ぎん・・・』


「先兵・・・? どういうことだ!それに我が主とは誰のことだ!」


燈真が問いただすが、黒衣の人物は不敵な笑みを浮かべたまま、胸元から一枚の【不気味な黒い紋章が刻まれた羊皮紙】をポロリと落とした。


『我が主・・・【常闇の王】が完全なる復活を果たす時・・・この世界も、おまえたちの元の世界も・・・すべては無へと還るのだ・・・! ハハハハハッ・・・!』


狂気に満ちた捨て台詞を残し、黒衣の人物は黒い霧となって完全に消滅した。


♢


静まり返った謁見の間。


燈真が残された羊皮紙を拾い上げ、眉をひそめる。


「これは・・・異世界の古代文字で書かれた地図と、黒幕の真の主の紋章だ」


『ぬぅ・・・常闇の王とな。あの黒衣の奴を遥かに凌ぐ、恐ろしい邪気の持ち主の手がかりじゃ・・・』


コノハが不吉な予感に耳を伏せる。


古代遺跡で示唆されていた「我が主」の存在。今回の敵はその忠実な手下に過ぎず、真の黒幕である『常闇の王』が裏で糸を引いていたことがついに判明したのだ。


「常闇の王、か・・・」


汐恩は落ちていた羊皮紙を見つめ、それから自分の愛刀の柄を力強く握り直した。


かつての彼女なら、さらなる強敵の存在に慄いていたかもしれない。


だが、敗北を乗り越え、仲間との絆と新たな力を手に入れた今の汐恩に、退くつもりは一切なかった。


「どんな王様だか知らないけど・・・この世界を壊させたりしないよ」


汐恩は燈真とコノハを見つめ、力強く頷いてみせる。


「破片を取り戻して、その真の黒幕も叩き潰す。・・・行こう、次の目的地へ!」


「あぁ! 僕たちなら絶対にやり遂げられる!」


『うむ! どこまでも付き合うぞ、汐恩!』


ついに獲得した五つ目の破片と、判明した真の敵『常闇の王』の手がかり。


試練を乗り越え、真の強さを得た三人の無双旅は、物語の核心へと向かって力強く進み始めるのだった。

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