七話
戦国時代、武家や公家、寺社は領内に関所を設置して通る人々から関銭という通行料を徴収していた。
税収を期待してという側面もあるが、領民の逃亡の阻止や間者の摘発の面が強い。
まいった。確かに一益の言うとおりだ。
行商人に文を運んでもらおうと思っていたのだが、雇うとなれば金がかかる。
未来と違って移動には危険が伴う時代なのだ。費用は馬鹿にならない。
「そうだな…そうなると銭をかけずに文を送るしかないが…」
「よろしければ、知己に山走りを得手とする者たちがいます。その者らを使ってはいかがでしょうか」
「そんな人がいるのか?」
「今は故郷で百姓をしておりますが。関銭もいりませぬし、何より信が置ける者たちです」
そういえば甲賀や伊賀あたりの出身だっけか。もしかして忍びだったりするのか?
「そのような者たちに頼めるなら願ってもないがな。しかし、銭は余りないぞ?」
「御屋形様から傅役として禄をいただいておりますので、それでよいかと」
「ん? あー…そういうことか。いい性格してるな、一益」
「恐縮でございます」
父上が目付けできる者って言ってたのを思い出した。
一益が俺の傅役に着けられたのは監視役として働ける上、使いとなる者も用意できるからなのだろう。
「わかった。お前と父上の魂胆に乗せられてやる。それで何人用意できる?」
「…は?」
「何人いるんだ。使いになれる者ってのは。それなりにいるんだろうな」
「い、いるにはいますが…西と東に一人ずつでよいのでは?」
「はあ? んなわけないだろ。東西一人ずつだと、途中で何かあったらそこで止まるじゃないか。各大名家にそれぞれ使いを送れたらいいんだが…30人くらいはほしいな」
「さ、30!?」
「…その様子だと難しいようだな。何人いるんだ?」
「…11人ほど」
「全然足りねえじゃねえか…仕方ない、九州と東北に2人ずつ、四国に1人、中国に1人、関東に1人、甲信に1人、北越に1人、近畿に2人で行くか」
全然心許ないがこの人数ならこれが限界だろう。
「さて、それじゃあ早速文を書いてくれ。結構数あるからな」
「しょ、承知しました」
泣くなよ。その11人にも手伝ってもらったらきっと早く終わるから。




