二話
織田信長の弟。
知識に頼れば、織田の血筋は信長以外大した奴がいなかった気がする。
有名どころだと信長に対して二度謀反を起こして最終的には暗殺された織田信勝がいるが、俺は信勝ではない。
信勝は信長のすぐ下の弟だったはずで、俺と吉法師の間には一人男の兄弟がいるのだ。つまり、その兄が信勝の可能性が高い。
俺は信勝の下の弟なのだが、あとは茶道で有名な織田有楽斎とかパッとしない面子しかいなかったんじゃないか。確か結構討死や追いつめられて自害した弟も多かったはず。弟の死が伊勢長嶋一向一揆で信長が虐殺を命じた一因となった話もあったんじゃなかったっけ。
武将としては俺は大した素質を持たない可能性が高い。
そうなると俺のとるべき道は…
「これはこれは三十郎様。修練場などに如何様ですかな」
「すまぬな。邪魔はせぬ故、わしのことは気にせず続けてくれ」
「は、はぁ…(まだ片手に数えるほどの歳ながらこの物言い…さすが親子と言ったところか)」
今、俺に声を掛けてきたのは中年の男。
名を森可成。
佐久間や林といった譜代家臣たちを差し置き、織田一の剛の者と言われている猛将だ。
足利義昭による織田家包囲網の折、信長の盾となって浅井・朝倉連合軍相手に居城で籠城、壮絶な討死を果たした忠義に厚い武将だ。
かの有名な森長可、森蘭丸の父親でもある。
彼は家中でも初陣を済ませたばかりの若者たちに稽古をつけていた。
木刀を持った10代そこらの少年が打ち合っている中、一際動きを見違える者が二人いた。
「柴田! 攻めてばかりで足元が単調になっておるぞ、それは戦場では囲まれると思え! 滝川! 相手の力量を量るはいいが拙速を尊ばねば戦況の変化に追いつけぬぞ、時には果敢に攻めんか!」
可成に声を掛けられた若者こそ未来の織田四天王である柴田勝家と滝川一益。
二人は動きこそいいが、それでも今の時点で織田の重鎮になるほどの雰囲気はない。
これこそ俺が持つ武器なりえる。
名将と呼ばれる連中を知っているからこそ、芽が出る前の若い内から囲うことが出来れば、それはそのまま俺の家臣とすることができるかもしれない。
大成するのはほぼ確実なのだから、究極の青田買いと言っていいだろう。
そのためにも今できることをやっておかないと。




