一話
そもそも。
俺は普通の人間ではない。
未来の知識。正確に言えば『織田信長が男だった世界』の未来の知識を持っている。
いわゆる転生、と言う奴なのだろう。
異世界転生というのがテンプレだった気がするが、どうやら俺の身に降りかかったのは違うらしい。
記憶にあるのは知識的な部分だけで個人的な記憶などは一切なく、5歳になる日の朝に目覚めた時にはそれが俺の頭の中にあった。
まあ初めは混乱していたのだが、記憶ではなく知識だった分、そこまで酷いものじゃなかった。
混乱が収まると、今度は違和感が来た。
織田信長が女?
それなんてゲーム?
同姓同名の別人も考えたけど、父親が尾張織田弾正忠家当主織田信秀で名前が吉法師なのに別人なんて有り得んだろう。
因みに人伝に聞いた限りだが、相模の北条家や畿内の三好家の当主も女性らしい。マジか。
違和感に関してはそういう世界なんだと踏ん切りをつけるしかあるまい。
認めないと男に変わるわけでもないんだから。
違和感もある程度整理したところで、次に何をしようかと考える。
まずは自身の状況把握が大事だろう。
転生しているらしきこの身だが、特別な能力を秘めているわけではなさそうだ。
身体能力は平凡(まあ3歳児だが)、魔法や超能力的なものも持っていない。
持っているのは知識。
では、その知識と言うのがどれほどのものかと言えば…大したことがないだ。
未来の物品や技術を知ってこそいるが、それを戦国時代に役立てられる予感が全然しない。
銃やマシンガン、戦車を知っていたって、その構造や原理を詳しく説明できるわけではないのだ。
一方で戦国時代の武将に関する知識はそれなりにあるようだった。
三英傑や武田信玄のような超有名な奴らは勿論、佐竹義重や尼子晴久みたいな歴史好きでないと名前さえ知らないような武将のこともなんとなく知っている。彼らが一般的にあまり有名ではなく、彼らを知っているということが普通よりも戦国に詳しい知識を持っていることだということが直感的に分かった。
ただ、信長が女なこの世界で、『信長が男だった世界の戦国の知識』がどこまで役に立つのかは不透明だ。
ここで改めて先ほどの疑問が返ってくる。
結局俺、誰なんだろ?




