序幕
戦国。
主に明応の政変から関ヶ原の戦いの頃までを指すこの時代は、日本史上でも最も多くの英傑が現れた時代だといわれている。
百姓の身分から立身出世を繰り返し、天下人にまでなった豊臣秀吉。
人質や臣従という辛い日々を長年耐え抜き、二百年続く徳川幕府を創始した徳川家康。
室町幕府の一御家人ながら、権謀を駆使して後北条家の礎となった北条早雲。
生まれてくるのが早ければ、天下にも手が届いたといわれる伊達政宗。
戦場で無類の強さを示し、軍神と畏怖された上杉謙信。
風林火山。戦国最強と謳われた武田軍を率いた武田信玄。
謀略を駆使して一国人から大大名に成り上がった毛利元就。
一介の商人から親子二代で一国の主となった斎藤道三。
西洋商人に日本の副王とまで呼ばれるほどの権勢を誇った三好長慶。
そして戦国の革命児であり、明智光秀に討たれなければ日本の歴史そのものが変わったといわれるほどの重要人物である織田信長。
まあ秀吉、家康、信長の三英傑ぐらいはさすがに誰でも名前を聞いたことがあるだろう。
さて、そこで問題なのだが、これらの歴史上の人物の話を始めて聞いたとき、
「この人は男の人です」
とか
「この武将は男性です」
なんていう説明文がくっついていただろうか?
少なくとも俺にはそんな経験はなかった。
名前が如何にもな女性名であったりしない限り、歴史上の人物は全員基本的には男性を思い浮かべていた。
これは歴史の表舞台に立っていた人々の多くが男性であったという経験に基づき、特に説明されない限り男性なのだろうと認識する自然な推測だ。
要するに何が言いたいのかと言うと、
みんな
信長が女って言って信じるか?
何を馬鹿なことを鼻で笑われるのかもしれないが、俺は大真面目だ。
少なくとも、今、俺が生きているこの世界、この時代に居る織田信長は女なのだ。
呆れるな。ホントだ。間違いないのだ。
なんせ俺の実の姉なのだから。
姉の名は織田吉法師。後の織田信長だ。
そして俺の名は織田三十郎。
織田信長の弟である織田…誰なんだろ?




