九話
「そんなんやるわけねえ」
そう言い放つのは俺よりいくつか年上だろうガタイのいい少年だった。
教えられた太助の家。あばら屋にいたのは俺より少し年上の少年と俺と同い年くらいの少女の兄妹と床に寝た切りの母親の3人家族だった。
事情を聞くと、太助というのはこの家の主人だったが数ヶ月前の戦に出向いて帰らぬ人になったらしい。
現在は息子の源助というこの少年が農作業をやっているらしいのだが、正直他の田に比べても稲が育っていないのがわかる。
「そう言わずに考えてみてくれよ。お前だって一人じゃどうもならないのはわかってるだろ」
「…そうだとしても、やるだけだ」
「だけど…」
「だまれ! おめえの言うことなんか知らねえ! この田はおらのもんだ!」
感情が高ぶったのか、涙を流して源助は激昂する。父親が死に、その小さな肩に母と妹の命運がかかっているのだ、まだ10にも満たない幼子では当然だろうな。
だが、ここで同情してやるほど俺の状況も余裕があるわけではない。
「それなら! お前が下らん意地張ってどうするってんだ! 母親と妹のためにも歯ぁ食いしばって教えを請えよぉ!」
「な、なんでおめえが泣いてんだ」
「知らねえよ!」
こちとら知識こそあれ、精神力や胆力は年齢準拠なんだよ。目の前で年上に大泣きされたら涙だって出るってもんだろ。
「…おめえいいやつなんだな」
ん? 風向きが変わったか?
「…確かにおらが世話しても郷のみんなみたいに上手く田を作れてねえ。おっ父のやり方を真似しても無理なもんは無理なのかもしれねえ」
他の田と自分の田を見比べる源助。
いや、俺に言わせればどっちもどっちだよ? 他の田も大したことないよ。
「おめえ、本当に米作んのうめえのか?」
「少なくともお前よりはうまいし、この村の誰よりもうまい。そして、この村のやり方が普通なら日の本一うまいといっても過言じゃない」
「へへ、そんな上物の着物着ててよく言えるもんだ。わかった、おめえの話に乗ってやるよ。そんかわり、おめえたちも手伝えよ?」
もちろんだ。
こんな子ども二人だけに農作業をやらせたりしないよなぁ一益?




