王の我が召喚した勇者があまりに役に立たないので自ら剣を取ります〜最強スキル【支配】で全員、我に従え!〜
ヨヌ曲げ終わった後に書こうかなーって思ってるものの1話
テンプレ的な物を書こうとしたのに微妙にテンプレからズレた。
「もうさぁ!さっぱり意味わかんねぇんだが!?なんだよお前ら!俺を誰だと思ってんだ!!」
組み伏せられた男は、下品にも叫び散らかす。
よりにもよってこの国の王たる『我』に向かって。
「貴様ァ!シヴァ=トラスト王の御前であるぞ!!」
威嚇するように声を張り上げる大臣を手で制する。
どうせ何も出来ぬ男が吠えたところでどうということもない。
「俺は!今まで誰よりも努力して!他人を蹴落としてでも這い上がってきたんだ!!それを……、こんなことが、許されるわけないだろ!!」
ジタバタと芋虫のように藻掻く姿を眺めていると段々と愛着のような物も湧いてくる。
まぁ、それももう飽きてきた。
我は1つあくびをすると、肘掛けにゆるりと凭れ掛かる。
「貴様になど、毛ほども興味はないが、貴様ら異世界のものどもの『力』には利用価値があるんでな。」
右手から熱気を持たない黒い炎が立ち昇る。
それをそのものに向けて、我は自らのスキルを発動する。
「『支配』」
我のスキルの発動を確認し、押さえつけていた衛兵たちが鎧の擦れる金属音を立てながら急いで離れていく。
「何を、――っ!」
『支配』を受けたものは、従順な我の下僕となる。
「起きよ。貴様の使える力を見せてみよ。」
我の言葉に、男はムクリと起き上がる。
白目を剥いたそいつは、遠い砂漠の国にいると聞く『不死者』と呼ばれる魔物を彷彿とする。
男は、手を前に伸ばすと全身に力を込めていく。
ビキビキと音を立てて筋肉が膨張していく。
異界の者が揃いも揃って着ている『すぅつ』なる服が弾け飛び、上半身が露わになる。
ほぉ、身体強化の類か?
我が興味深く眺めていると、男は一声気合の入った雄叫びをあげ――凄まじい爆裂音が放たれた。
耳が痛み、思わず頭を抱える。
相変わらず白目だが、自信満々にニカッと笑う男に思わずため息が出る。
「これは試しに冒険させる価値もない。『ハズレ』だな。適当に労働力にでも回しておけ。」
これで何度目の失敗だったか。
こんな無駄な失敗を幾度も繰り返さねばならなくなった原因は何だったかと思い起こし、自身の起点となった忌々しい日の記憶が脳裏を掠める。
何度目か分からないため息をつくと、我は昔の事を思い起こした。
◆
緑豊かなその場所に、平穏そのものの王国があった。
――ナラシンハ王国。
人獅子の神を祀るこの国は、その神の加護もあってか豊かな大地の恵みを享受し、魔王の手も届かない。
かつてこの国には異世界の勇者を召喚し、幾度も魔王を封印した伝説があった。
勇者召喚の為の膨大なリソースを用意できるのはナラシンハ王国だけであり、その重要性は隣国の間でも広く認知されていた。
しかし、光あるところには必ず影があるもの。
王国の片隅、住居も持たずに震えて暮らす少年がいた。
コツコツと彼の元へと足音が近づいてくる。
「……なに。」
少年が掠れた声を絞り出すと、足音の主は無言で少年の腹を蹴り上げた。
「――っ!」
何がそんなに良かったのか、少年にはその男が震え上がるように快感を噛み締めているように見えた。
気色が悪い、と彼が思うよりも先にもう一発が腹に刺さる。
呼吸が詰まり、息も絶え絶えになり嗚咽が漏れるが口からは何も漏れ出てくることはない。
少年は既に2日は何も口にしていなかった。
「ふぅ……スッキリしたぜ。ほら、駄賃だ、噛み締めな。」
男は少年の目の前にポトリと硬いパンを落とす。
少年が目を輝かせてそれを手にしようとすると、目の前でそれは踏み潰された。
「ほら、『味付け』は大事だもんな。精々死なねぇように気をつけな!」
品のない笑い声が、男の影と共に遠ざかる。
少年は踏み潰されたパンを、じっと見つめ……それをひったくるように掴むと、無我夢中で口の中へと放り込む。
飛び散ったカスも舐め取るようにしてとにかく少しでも飢えをしのぐように足掻くその姿は、余りにも惨めなものだったが、彼にとって生死のかかった問題。
今の少年にとっては、体裁など二の次であった。
◇
それから、3日ほど経った頃。
少年は、日陰で横になっていた。
体力を消耗した状態で日差しに曝され、疲労は既に限界を迎えていたのだ。
細い管を空気が通りぬけるような音だけが、誰もいない路地裏で唯一、彼の存在証明となるものだった。
そこにまた、コツコツと靴音が響き渡った。
今度、蹴り上げられたら、いよいよ限界かもしれない。
少年の思考に、僅かながら怯えが混じる。
徐々に靴音が大きくなってきている。
不規則に鳴り響く足音から相手は複数いることが伺えた。
――死にたくない。
コツッと音が止まり、男達が彼の目の前に辿り着く。
一人が少年の髪を掴み上げると、そのまま身体を引きずり起こし、胸ぐらを掴み上げる。
その男は、三日前、少年を蹴り飛ばしていた男であった。
これから起こる出来事を思って既に興奮しているのか、頬が上気しているように見える。
どうせ、死ぬくらいなら。
何も出来ずに、死ぬくらいなら。
――我が、貴様を殺してやる。
その時、我の脳内に無機質な音声が流れる。
『条件達成。レジェンドスキル『支配』を獲得しました。』
スキル獲得の案内。
困難な条件を達成しなければ得ることの出来ない特異な才能。
使い方は、まるで昔から共にあったかのように理解できた。
「『支配』」
その声と共に右手に現れた黒く熱を持たない炎で相手の身体に触れる。
すると途端にドサリと音を立てて、その男は倒れ伏した。
力を失ったタイミングで、ストンと我の身体が地面に降りる。
「こ、こいつ!スキル持ちじゃねぇか!」
「おいおい!簡単なストレス解消方法があるって聞いてたのにふざけんなよ!」
男に連れられてきていた連中は蜘蛛の子を散らしたように逃げ帰る。
我は、男に声をかけた。
「起きよ。仕事の時間であるぞ。」
その日は我の記念すべき初の下僕、誕生の日となった。




