表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

23/26

第23話 ルミナ・エラルシュカ

 目を開けると見知らぬ天井だった。


「ここは……」


 なんかすっごいデジャブ。

 最近気失ってばっかだな俺。

 流石に限界突破はやりすぎだっただろうか。


「でも、あんくらいやんないとあのオッサンぎゃふんと言わせられねぇしなぁ」


「誰がオッサンだ」


 居たのかよ……。


「あのな、俺はまだ38だ」


 おっさんじゃねぇか。


「それで、俺はどんくらい寝てたんですか?」


「ざっと、半日ってとこか?もう外は暗くなってるぞ」


「そうですか」


 半日も寝てたのか……。


「ヒリス嬢は一足先に冒険者やってるぞ。あとは、ほら!これでエドラス君も晴れて冒険者だ!」


 グレイから手渡されたのはシンプルなカードだ。中心には【中級】と刻印されている。


「このカードには討伐記録やクエストの完了記録、大まかなステータスが記録されている。どの国に行っても身分証になるからちゃんと持ってろよ」


「中級……ギルドのお偉いさん達は納得したんですか?一撃入れることはできませんでしたけど」


「あれだけの戦いを見せられて首を横に振るバカはいないさ」


 そうか。

 とりあえず、第1関門突破だな。

 それよりも気になるのは……。


「その机の上の封書はなんですか?」


 王家の家紋……シルヴァ王からだろう。


「あー、なんか呼び出しらしいぞ?手紙持ってきてくれた従者にエドラスはしばらく動けない旨は伝えてあるから、動けるようになったら行ってこい」


「はい、明日にでも行きます」


「そうか。んじゃ、冒険者頑張れよ!いつか姉さんと同じ滅級冒険者になれるように!」


「はは……善処しますよ」


 世界にたった5人しかいない最強の冒険者の称号"滅級"。

 そんな高みに到れるだろうか。

 それにしても、シルヴァ王の用事ってなんだろう。また愚痴聞いたり、チェスの相手をしたりかな?


 ◇◇◇


 翌日。


【ルーカディア王城:謁見の間】


「……」


「……」


 な、なんだこの気まずい空気……。

 呼ばれたからきたんだが、なんか不機嫌?

 不機嫌っていうより若干気まずそうな感じだ。


「あ、あの……陛下?」


「……ヒリスと一緒では無いのか?」


「え、ああ、ヒリスなら冒険者になれた事が嬉しいらしく昨日からずっとモンスターの討伐に出てます」


「ふむ。そうか」


「……」


「……」


 だからなんで呼ばれたんだよ!!


「……陛下」


 エルドがコソッと耳打ちすると意を決したようにシルヴァ王は口を開いた。


「エド、その、ルミナ殿のことなんだが」


「ルミナ……様がどうかされたのですか?」


 まさか……嘘だろ!?喋ったのか俺の事!


「その、なんだ。彼女に悪気は無いんだ。許してあげてはくれないか」


「…………え?」


 許す?シルヴァ王は何を言っ……俺は別に怒ってないんだけど。


「はぁ……エドなら知っていると思うが、万能視は強力なスキルが故に扱いが難しくてな。ルミナ殿も扱いが完璧ではないのだ。だから、意図して見ようとした訳ではないのだよ」


「え、ええ、それは私も強力なスキルを持っているのでよく分かります」


「だから、許してやってはくれんか。『スキルを抑えられず、見てしまい怒らせてしまった』と、酷く気にしていてな。昨日から落ち込みっぱなしなのだ。確かに無許可で、ステータスを覗き見るのは御法度だが……今朝も『自分が亜人だから嫌われている』なんて言い出してだな……」


「ちょちょちょっと待ってください!!別に俺は怒ってませんよ!?」


「そうなのか?だが、ルミナ殿は冷たくあしらわれていると嘆いておったぞ?」


 冷たくあしらう?

 そんなこと……そんなこと……と思っていたが慰労会のときと合格発表の時の事が脳裏を過った。

 慰労会では話さないようにわざと距離を取り、合格発表の時はヒリスに話してしまうと思って半ば強引にその場を切り上げた。


「…………謝ってきます」


「心当たりがあるのか……。はぁ……エド、お前は亜人に対して差別意識は無いと思っていたが」


「ち、違います!差別意識なんて滅相もない。今回はちょっとした行き違いなのです。ですが、これは私の軽率な行動が招いたことですので……今、ルミナ様はどちらに?」


「王城の客室、今はルミナ殿の自室だが、そこにおられるはずだ」


「ありがとうございます」


「エドよ」


 俺は立ち上がりその場を後にしようとすると、シルヴァ王に呼び止められた。


「もしヒリスに引け目を感じておるなら、1度本人達を交えて相談するのも手だ。お前は王家の血を引く公爵家の人間、当主にはなれないが、場合によっては第2夫人を迎えることも問題では……」


「陛下。俺とヒリスはそんな関係じゃありませんし、ルミナ様ともそういう関係にはなりません」


「そ、そうか。余計なお世話だったな。行って良いぞ」


 冷ややかな目でシルヴァ王を見たあと、俺は謁見の間を後にした。


 ったくあの、娯楽主義のおっさんめ、何を言い出すかと思えば……。

 今のこの状況が痴情のもつれに見えるのか?

 困ったもんだ。


 ◇


 さて、ルミナの自室に着いたが……。

 まさかそんなに思い詰めていたとは、申し訳なさと罪悪感で扉をノックできない。


「はぁ……」


 ええい!どうとでもなれ!


 〔コンコン〕


「はい……どちら様でしょうか」


 確かに元気ないな。

 心にグサッとくる……。


「エドラスです。少しお話いいですか?」


 すると、扉の奥からドンガラガッシャーンと明らかに慌てふためく様子の音が聞こえた。

 そしてしばらくして音が止み、か細い声が聞こえる。


「どうぞ……」


「失礼します」


 慌てて居住まいを正したのか、若干頬を赤らめ、乱れた髪を手ぐしで整えている。その仕草もまた可愛らしい。


 部屋に数歩入ったところでルミナは俺の前まで歩いてきた。


「?」


 そして、胸に手を当て膝を着き頭を垂れる。


「ちょ!ルミナ様!?なにして……」


「全能なる神エドラス様に拝謁致します」


「全能なる神……?確かに俺はエドラスですけど、それは……」


 俺の言葉を聞いても顔色ひとつ変えず、頭を垂れたまま動かない。

 これはもう確信してる……誤魔化しようがないな。


「はぁ……ったく。もう良い、面を上げてくれ……」


 俺の言葉を聞いてルミナはゆっくり顔を上げる。


「とりあえず座って話そう」


「失礼します」


 立場が逆転しちまったなぁ。しっかりバレてるし。


「えっと……申し訳ございませんでした……まだ完全に万能視を扱える訳じゃなく……その、見てしまいました」


「まぁ、だろうな。一応言っておくけど、俺は別に覗き見られたことに関しては一切怒ってない」


「え?そうなのですか?」


「ああ、冷たくしてしまったのは申し訳ない。素性がバレている以上どう接していいかわからなくてな」


「そういうことでしたか……」


 冷たくあしらってしまったのは俺が悪いし、こんなにシャボくれてると流石に申し訳なくなる。


「見てしまったものは仕方ない。それで、聞きたいことが沢山あるって顔だけど」


「え、あ、えっと、差し支えなければ……」


 まぁ、唯一俺の秘密を知ってる人だし、ある程度情報を共有したって構わないだろう。


「それでは……転生された理由をお聞きしても……?


「ふむ、神って転生できるの?とか聞かれると思ったけど」


「えっと、既に転生を果たされているエドラス様が目の前にいらっしゃるので。転生後も記憶があることから、なにかしら特別な要因があったのかと」


 鋭いな、流石は万能視を扱う人間といったところか。


「まぁ、そんな感じだな。んで、転生した理由だっけ……」


 転生した理由か。

 ぶっちゃけ、俺も分からないんだよな。

 魔族に対抗するため、魔神の復活を阻止するため、復活した場合は魔神を討伐するため……だろうか?

 でも、ゼリオスのじじいのあの感じからすると他に理由がありそうだが……。


「やはり、魔族に対抗する為でしょうか」


「んー、たぶん?ぶっちゃけ俺も分からないんだ。実は天界にある俺の神体は仮死状態にあってな、詳しいことは割愛するけど、俺の魂が消滅しない為の手段とも言える……」


「え、え?神体が仮死状態……?」


 あ、余計なこと言っちゃったか。混乱してる。


「あー、すまないが、俺が元神だと言うことは黙っていて欲しい。この事を知っているのは、ルミナだけなんだ」


「もちろんです」


 そういいルミナは頭を深く下げる。


「あと、それもやめてくれ。今ルミナの目の前にいるのは『全能神エドラス』ではなく、『ルビウス公爵家の三男エドラス・ルビウス』なんだ。万能視でわかっていると思うが、身体は人間そのものだ。心もな。だから、敬わなくていい」


 今の俺は飽くまで人間だ。

 それに、俺は人間として今を生きている。 権威を振りかざすつもりもないし、振りかざしたくもない。

 対等でありたいんだ。


「……わかりました。ではエドラス様、これからは御学友としてよろしくお願い致します」


 おぉ……これご美少女の満面の笑み。


 ニコッと笑うルミナに思わず見惚れてしまった俺はふと我に返り目を逸らす。


「えっと、その"エドラス様"っていうのも辞めてくれないか?なんというかむず痒いし、ヒリスもヒリス様じゃなくて、ヒリスって呼んだ方が喜ぶと思うけど」


 様付けで呼ぶのは俺達が国の公爵家だから、必要最低限のマナーなのだろうけど、俺達は様付けされるのがそもそも好きじゃないし。


「そうですか?では……エ、エド……とお呼びしても……?」


「ん゛……うん、まぁ、それで……」


 上目遣いで若干照れながらのこの一言!!

 この破壊力!!!!

 これが地球文化であった"萌"というやつか!!

 天界で自堕落を貪り尽くしてた頃にはイマイチ理解できなかったが……なるほど、これが……。

 まずい、ルミナ推しになっちまう。


「じゃ、俺はこれで。またヒリスと一緒に遊びに来るよ」


「はい!この件についてはもちろん他言はしませんので、ご安心ください。では、エド、また」


「ああ、またな」


 頭を下げ見送るルミナを背に、俺は自分が宿泊する宿へと戻った。


 はぁ……疲れた……。

 特待生試験、冒険者ギルドのギルマスとの戦闘に身バレしてしまったルミナへの対応……濃い数日だった。

 入学式まで1週間、俺はもう何もしない!

 めいいっぱいゴロゴロしよう。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ