第40話 魔法研究部
翌日。
部活動見学三日目。
「今日は魔法研究部ですね。」
オリヴィアが嬉しそうに言った。
「うん」
私は頷く。
「私が所属している部活だから、少し案内しやすいと思うよ」
「楽しみです、お姉様。」
その隣で、アレクが少しだけ眉を寄せる。
「……本当に行くのか?」
「昨日、行くって言ったよね?」
「いや。」
アレクはため息をつく。
「俺が行ったら、また面倒なことになる気がする。」
「大丈夫だよ。」
私は笑った。
「魔法研究部は、魔法が好きな人たちの集まりだから。」
「むしろアレクは歓迎されると思うよ」
「それが嫌なんだけど。」
そう言いながらも、アレクは結局ついてきた。
⸻
魔法研究部の部室へ入ると。
「ラウラさん!」
すぐに部員たちが気付いた。
「こんにちは。」
「今日は新入生を連れてきてくれたんですか?」
「もしかして、部活見学ですか?」
そう言って、部員たちの視線が隣へ移る。
「あ……。」
「ベルン嬢?」
「聖女候補の方ですよね?」
オリヴィアが慌てて頭を下げる。
「はい。オリヴィア・ベルンです。」
すると、部員たちの表情が明るくなった。
「すごい……!」
「聖力について研究できる機会なんて、なかなかないですよ!」
「もしよかったら、魔法陣との相性について意見を聞かせてもらえませんか?」
「え、あ、はい。」
オリヴィアは少し驚きながらも、嬉しそうに頷いた。
その様子を見ていると、今度は別の声が上がる。
「あれ?」
「もしかして……。」
「ノクス君?」
一瞬、部室が静かになる。
「大陸一の魔力量を持つっていう……。」
「王宮魔法騎士団にも所属している……。」
「アレクセイ・ノクス君ですよね?」
アレクは小さくため息をついた。
「……そうだけど。」
次の瞬間。
「魔力制御について聞いてもいいですか!?」
「この魔法式はどう思いますか?」
「高位魔法を使う時、魔力の流れはどう調整しているんですか?」
一気に囲まれる。
「……。」
アレクが無言で固まった。
私は思わず笑ってしまう。
「やっぱりこうなったね。」
「ラウラ。」
助けを求めるような視線が向けられる。
でも私は苦笑する。
「せっかくだから、答えてあげたら?」
「……。」
アレクはしばらく黙った。
そして。
「……分かった。」
「ただし、順番に聞け。」
部員たちから歓声が上がる。
「すごい!」
「ありがとうございます!」
アレクは少し呆れた顔をしながらも、質問に答えていく。
その姿を見て、私は少し驚いた。
アレクは面倒そうにしているけれど、魔法の話になるとやっぱり楽しそうだった。
オリヴィアも興味深そうに、その様子を見ている。
「アレクセイさんって……。」
「本当に魔法が好きなんですね。」
「ええ。」
私は頷いた。
「昔からそうだよ。」
⸻
しばらくして、ようやく質問が落ち着いた頃。
「疲れた。」
アレクが小さく呟いた。
「だから言ったでしよ?」
私は笑う。
「歓迎されるって。」
「……。」
アレクは少し考えてから答えた。
「まあ。暇だったから、少し答えてやってもいいと思っただけだ。」
「……。」
私は思わず笑ってしまう。
(絶対、それだけじゃないと思うけど。)
でも。
そうやって自然に人の輪の中にいるアレクを見ると、少し嬉しくなった。
ゲームの中では、誰にも心を開かなかった彼。
でも今は。
少しずつ、居場所を増やしている。
そんな気がした。




