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第39話 部活動見学二日目

朝食時。


昨日の騒ぎを引きずっているのか、アレクは見るからに不機嫌だった。


「……最悪だ」


「どうしたの?」


「魔法戦闘部に追われている」


「まだ?」


「まだだ」


アレクが深いため息を吐く。


どうやら、昨日の勧誘騒ぎはまだ終わっていないらしい。


そこへ、カイル様が声をかけた。


「だったら、生徒会室に来れば?」


「生徒会?」


「僕、生徒会の会計だからね」


カイル様が得意そうに胸を張る。


「生徒会室なら、部活の勧誘に来る人もいないと思うよ」


アレクは少し考えるように黙った。


「……なるほど」


どうやら逃げ場所としては悪くないらしい。


「じゃあ、放課後は生徒会室にいく」


「うん。歓迎するよ」


そんな話をしていたのだが――。


放課後。


私はオリヴィアと一緒に、魔道具部の見学へ向かっていた。


「行きましょう、お姉様!」


「うん」


オリヴィアは楽しそうだ。


「今日はどんな部活があるのか、楽しみです!」


「オリヴィアなら、どこへ行っても歓迎されそうだね」


「そうですか?」


「たぶんね」


そんな話をしながら、魔道具部の部室へ入る。


そこには、見たことのない魔道具が所狭しと並んでいた。


「すごい……!」


オリヴィアの目が輝く。


「これ、何に使うんですか?」


「これは魔力を安定させるための補助具です」


部員が説明すると、オリヴィアは興味深そうに魔道具を覗き込む。


「へえ……」


そして、少し考えてから口を開いた。


「これ、聖力にも応用できるかもしれませんね」


「……!」


部員たちの目が一斉に輝いた。


「確かに!」


「聖力にも使えるなら、かなり便利になるかも!」


「聖女候補の方から意見をいただけるなんて……!」


「ぜひ、他の魔道具も見ていってください!」


一気に歓迎ムードになる。


(やっぱりオリヴィアって、人を惹きつけるよね)


私は思わず笑ってしまった。


本人は全く意識していないのに、自然と周囲に人が集まっていく。


そんなオリヴィアと一緒に魔道具を見ていると――。


「ノクス!! どこだ!!」


遠くから、聞き覚えのある大声が響いてきた。


「……」


オリヴィアと顔を見合わせる。


「アレクセイさん、大変ですね」


「……そうね」


「昨日もずっと追いかけられてましたよね」


「今日もなのね……」


「大丈夫でしょうか?」


「まあ……今日は生徒会室にいるから、大丈夫じゃない?」


「そうですね」


私たちは少しだけ心配しながらも、再び魔道具へ視線を戻した。


「お姉様、これも面白そうですよ!」


「本当だ。ちょっと見てみようか」


「はい!」


「ノクス!! 出てこい!!」


遠くから、また声が聞こえる。


「……」


「……」


「……頑張ってもらいましょう」


「うん」


私たちは何事もなかったかのように、魔道具の見学を続けた。


◇ ◇ ◇


そして夕食。


食堂では、私たち四人がいつものように席についていた。


アレクがまたも疲れた顔をしていた。


「……騙された。」


席につくなり、アレクが呟いた。


「何が?」


カイル様は涼しい顔で首を傾げる。


「生徒会室にいれば魔法戦闘部から逃げられると言っただろ。」


「うん。逃げられたでしょ?」


「……。」


アレクが黙る。


「その代わり、会計の仕事を手伝ってもらっただけだよ。」


「それを世間では騙されたと言うんだ。」


「嘘はついてないよ?」


「……。」


アレクが疲れた顔でため息をつく。


私は思わず笑ってしまった。


(カイル様、恐ろしい……。)


「でも、アレクが手伝ってくれたおかげで助かったよ。」


「……。」


アレクはじっとカイル様を見る。


「最初からそれが目的だったのか。」


「まさか。」


カイル様はにこやかに首を振る。


「ただ、優秀な人が手伝ってくれたら助かるなとは思ったけど。」


「もう二度と行かない。」


「そう言わずに。僕の護衛でしょ?」


「断る。」


即答するアレクに、オリヴィアが吹き出した。


「ふふっ。」


「アレクセイさん、本当に嫌なんですね。」


「嫌というか。」


アレクは少し考える。


「面倒だ。」


「魔法戦闘部から逃げる方が面倒じゃない?」


カイル様がさらりと言う。


「……。」


アレクが黙る。


「図星だ」


思わず口にすると、アレクがこちらを見る。


「ラウラまでカイルの味方をするのか。」


「味方というか……。」


私は苦笑する。


「今回はカイル様の方が一枚上手だったかなって。」


「……。」


アレクは不満そうに視線を逸らした。


「でも。」


カイル様が笑う。


「アレクが生徒会の仕事を手伝ってくれたおかげで、かなり助かったよ。」


「さすがだね。」


「当たり前だ。」


アレクはいつもの調子で答える。


「俺、天才だし。」


その言葉に、思わず笑ってしまう。


「そこは変わらないんだ!」


「事実だからな。」


自信満々に言うアレクを見て、オリヴィアも楽しそうに笑った。


ふと、ゲームのアレクを思い出す。


孤独で、誰にも理解されず。


最後には闇に飲まれてしまった彼。


でも今は。


「ラウラ。」


「なに?」


「明日は魔法研究部に行くのか?」


「うん、そのつもり」


「……なら、そこなら少しは落ち着けるか?」


「どうかな?」


私は笑う。


「魔法研究部も、アレクが来たら質問攻めになると思うよ。」


「……。」


アレクの表情が固まる。


「やっぱり行かない。」


「でも、私がいるから大丈夫だよ。」


そう言うと、アレクは少しだけ目を細めた。


「……なら、行く。」


「単純だね。」


カイル様が笑う。


「ラウラ先輩には本当に弱いね。」


「うるさい。」


アレクが即座に返す。


そのやり取りを見ながら、私は小さく笑った。


部活動見学は、まだ始まったばかり。


この先、どんな出会いが待っているのか。


少し楽しみになっていた。

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