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第38話 部活動見学初日

翌週。


待ちに待った部活動見学初日を迎えた。


放課後になると、校舎のあちこちから活気のある声が響いてくる。


「新入部員募集中!」


「見学だけでも大歓迎です!」


普段は落ち着いた雰囲気の校舎も、今日はまるでお祭りのように賑わっていた。


「すごい……。」


隣を歩くオリヴィアが、きょろきょろと辺りを見回す。


「こんなにたくさん部活があるんですね。」


「全部見ようと思ったら、一週間じゃ足りないかもね」


私は笑いながら答えた。


「今日は気になったところを順番に見て回ろう!」


「はい!お願いします、お姉様!」


嬉しそうな返事に、私も自然と笑みがこぼれる。


まず向かったのは、屋外訓練場。


剣術部の見学だった。


訓練場では、木剣を打ち合わせる乾いた音が響いている。


「すごい……。」


オリヴィアが思わず息をのむ。


部員たちは真剣な表情で剣を交え、その動きには一切の無駄がない。


「あ。」


その中に、見覚えのある姿を見つけた。


「セドリック様」


オリヴィアも気付いたようだ。


セドリックは部員と打ち合っていたが、一本取るとこちらへ視線を向けた。


「見学か。」


短くそう言って近づいてくる。


「はい。」


オリヴィアが微笑む。


「もう剣術部に入ったんですか?」


「ああ。」


セドリックは静かに頷いた。


「興味があるなら、自由に見ていくといい。」


「ありがとうございます。」


その時だった。


訓練場の反対側から、やけに大きな声が聞こえてきた。


「ノクス君!頼むから魔法戦闘部に入ってくれ!」


「君が来るって聞いた時から、ずっと待ってたんだ!」


声の主は、魔法戦闘部の部長らしき三年生だった。その声はどんどん近づいてくる。


その視線の先には――


「断る。」


即答するアレク。


「頼む!せめて名前だけでも!」


「断る。」


「週一でいい!」


「断る。」


「月一!」


「断る。」


「年に一度!大会の日だけでも!」


「断る。」


「……じゃあ、見学だけ!」


「……。」


あまりにも息の合ったやり取りに、思わず笑ってしまう。


「すごいですね……。」


オリヴィアが小声で尋ねる。


「そうだね。」


私は苦笑しながら頷いた。


「アレクは編入前から王宮魔法騎士団で実戦経験があるしね。だから、本人は今さら部活動でやることに興味がないのかもね。でも魔法戦闘部としては、どうしても欲しい人材なんだろうね。」


「なるほど……。」


オリヴィアが納得したように頷く。


それでも部長は諦めない。


「たまに顔を出すだけでいいから!」


「断る。」


即答したアレクは、そのまま踵を返した。


「あっ、待てノクス君!」


「話はまだ終わってない!」


魔法戦闘部の部長が慌てて追いかけていく。


その後ろ姿を見送りながら、私は思わず苦笑した。


「アレクセイさんって、本当にすごい方なんですね。」


オリヴィアが感心したように呟く。


「まあ、確かにすごいよね」


私は少し考える。


「でもアレクは興味があること以外には、結構無頓着なんだよね。ただ、魔法のことになると別人みたいになるけど。」


「そうなんですね。」


オリヴィアは楽しそうに笑った。


その後、私たちは薬草部の見学へ向かった。


温室へ入ると、爽やかな植物の香りが広がる。


「わあ……。」


オリヴィアが目を輝かせた。


「たくさんの薬草があるんですね。」


すると、部員たちが一斉にこちらを見る。


「あ、アストレア先輩。」


「こんにちは。」


そして、その隣にいるオリヴィアへ視線が集まった。


「あの……もしかして。」


「ベルン嬢ですか?」


「はい。」


オリヴィアが頷く。


すると部員たちの表情が一気に明るくなった。


「ぜひ薬草部を見ていってください!」


「聖女候補の方なら、薬草の知識はきっと役に立ちます!」


「治癒魔法と薬草学を組み合わせれば、もっと多くの人を助けられますよ。」


次々に声をかけられ、オリヴィアは少し困ったように笑う。


「えっと……ありがとうございます。」


私は思わず苦笑した。


「すごい歓迎だね。」


「当然ですよ。」


部員の一人が力強く頷く。


「ベルン様が入ってくださったら、薬草部の未来は明るいですから!」


「それに……。」


ちらりと私を見る。


「もしよければ、アストレア様も一緒に入りませんか?」


「ごめんなさい。私は付き添いなんです。」


「そうですか……。」


薬草部の部員は、少し残念そうに肩を落とした。


「アストレア様は魔法研究部ですもんね。」


「はい」


私は頷く。


「でも、薬草学も興味はありますよ?」


「本当ですか?」


その一言で、部員の目が輝いた。


「では、ぜひまた遊びに来てください!」


「研究の話ならいつでも歓迎します!」


「……。」


思わず苦笑してしまう。


ラウラ・アストレアという名前は、思っている以上に学園では知られている。


主席入学。


そして隣には――


「ベルン様」


薬草部の部員が、今度はオリヴィアへ向き直る。


「もしよかったら、見学だけでももう少ししていきませんか?」


「聖女候補の方に、ぜひ知っていただきたい薬草があるんです。」


「あ……はい。」


オリヴィアは嬉しそうに頷いた。


「ぜひ教えてください。」


その様子を見て、私は微笑む。


(オリヴィアらしいな)


誰かが熱心に何かを伝えようとすると、きちんと向き合う。


だからこそ、みんなに好かれるのだろう。


しばらく薬草部の説明を聞いていると――


「アストレア嬢!」


突然、廊下から声が響いた。


振り返ると、先ほどの魔法戦闘部の部長が立っていた。


「ノクス君を見ませんでしたか?」


「え?」


「少し目を離した隙に逃げられました。」


「……。」


思わず笑ってしまう。


「逃げたんですね。」


「はい。」


真剣な顔で頷く部長。


「魔法戦闘部全員の悲願なんです。」


「大陸一の魔力を持つ魔法使いと、少しでも一緒に部活を体験することが!」


「……大変ですね。」


「見つけたら教えて下さい。よろしくお願いします!」


と言って、走り去って行った。

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