第25話 魔物討伐実習
実習当日。
広い訓練場には、一年生と二年生たちが集められていた。
緊張した表情の生徒もいれば、期待に胸を膨らませている者もいる。
私も荷物を確認しながら、小さく息を吐いた。
(いよいよ、魔物討伐実習。)
前回の訓練とは違う。
今日は、本物の魔物を相手にするのだ。
壇上へ立ったシリル先生が、集まった生徒たちを見渡した。
「よし、全員聞け。」
ざわついていた訓練場が静まり返る。
「今回の実習で大切なのは、魔物を倒すことだけじゃない。」
「仲間との連携、状況判断、そして安全の確保だ。」
「無理だと思ったら、すぐに上級生や教師へ報告しろ。」
穏やかな口調だったが、その言葉には重みがあった。
「それじゃ、班ごとに行動開始。」
その合図とともに、生徒たちは森へ向かって歩き始めた。
◇ ◇ ◇
「じゃあ、俺たちも行こうか。」
ルシアン先輩を先頭に、第一班は森の中へ足を踏み入れる。
木漏れ日が差し込む森は静かだった。
「ラウラちゃん、探索お願い。」
「はい。」
私は立ち止まり、目を閉じる。
周囲へ意識を広げていく。
風の音。
木々のざわめき。
そして、少し離れた場所から感じる魔力の気配。
「前方に三体です。距離は二百メートルほど。」
「さすが、早いな。」
ルシアン先輩が感心したように笑う。
「マーク、前に出るぞ。」
「了解。」
前衛の二人が駆け出し、私たちはその後を追った。
しばらく進むと、茂みの向こうに小型の魔物が三体現れた。
「後衛、準備!」
ルシアン先輩の声が飛ぶ。
私は後衛の先輩たちへ補助魔法をかける。
「身体強化、展開!」
淡い光が仲間たちを包み込む。
「ありがとう!」
エミリア先輩が杖を構え、魔法を放つ。
その隙に、ルシアン先輩とマーク先輩が魔物を引きつける。
連携は訓練の時よりもずっと滑らかだった。
やがて最後の一体が倒れ、森に静けさが戻る。
「よし、討伐完了。」
ルシアン先輩が振り返る。
「ラウラちゃん、魔力は大丈夫?」
「はい、まだ余裕があります。」
「そっか。それならよかった。」
ルシアン先輩は安心したように頷いた。
「でも、無理はなしだからね。探索役が倒れたら、俺たち全員困るし。」
「はい。」
私は素直に頷いた。
訓練の時に言われた言葉を思い出す。
『仲間を頼るのも、後衛の仕事だよ』
今日は、一人で頑張りすぎなくていい。
自分の役割を果たせばいいのだ。
◇ ◇ ◇
その後も、第一班は森の中を進んだ。
私は探索を続け、仲間たちへ魔物の位置を伝える。
前衛が足止めし、後衛が魔法を放ち、私は補助に徹する。
誰か一人が活躍するのではなく、みんなで戦っている。
そんな感覚が、少しだけ嬉しかった。
「ラウラちゃん、本当に優秀だね。」
休憩中、ルシアン先輩が感心したように言った。
「探索も正確だし、補助のタイミングも完璧。」
「ありがとうございます。」
「首席って聞いてたけど、想像以上だったな。」
そう言って笑うルシアン先輩に、私は少しだけ照れくさくなった。
攻略対象だけど、今の私にとっては、頼れる先輩。
それ以上でも、それ以下でもない。
そう思いながら、私は空を見上げた。
夏の終わりを告げる風が、木々を静かに揺らしていた。




