第23話 二学期の始まり
夏休みが終わり、王立魔法学園にも再び賑わいが戻ってきた。
寮へ荷物を置くと、廊下のあちこちから久しぶりの再会を喜ぶ声が聞こえてくる。
「夏休み、あっという間だったわね。」
「実家で食べ過ぎちゃった。」
そんな他愛ない会話を聞きながら、私は教室へ向かった。
◇ ◇ ◇
「これより二学期を始める。」
担任教師の言葉で教室が静かになる。
「一学期より実践的な授業が増える。」
「特に二学期後半には、学年合同の魔物討伐実習を予定している。」
教室がざわめいた。
「魔物討伐……。」
「もうそんな時期なのか。」
一年生にとって初めての実習だ。
緊張と期待が入り混じった空気が広がる。
「実習班については後日発表する。」
「それまでは各自、基礎を徹底しておけ。」
「以上だ。」
◇ ◇ ◇
授業は一学期より難しくなっていた。
魔法理論では複数の属性を組み合わせた術式を学び、実技では仲間との連携を意識した訓練も始まる。
放課後。
私はいつものように魔法研究部の部室へ向かった。
部室へ入ると、部長のリリアが一枚の古い羊皮紙を机に広げていた。
「ラウラ、ちょうど良かった。」
「この魔法陣、解読できるかしら?」
私は羊皮紙を覗き込む。
複雑に重なった幾何学模様。
初めて見る構成だった。
「……面白そうですね。」
自然と口元が緩む。
「やっぱりそう言うと思った。」
先輩が苦笑した。
私は椅子へ座ると、夢中で魔法陣を読み始めた。
◇ ◇ ◇
部室を出る頃には、夕日が校舎を赤く染めていた。
寮へ戻りながら、私はふと空を見上げる。
(魔物討伐実習か……。)
実習そのものは少し楽しみだった。
けれど、もう一つ気になることがある。
(来年、本当にアレクはこの学園へ来るのかな。)
夏休みに聞いた話が、頭から離れない。
もし本当に編入してきたら。
嬉しい。
でも、その先には――ゲームで知っている運命が待っているかもしれない。
私は胸元へ手を添えた。
服の下で、黒紫色の魔石が静かに温もりを返してくれる。
(……大丈夫。)
そう自分に言い聞かせながら、私は寮への道を歩き続けた。
秋も深まり始めた頃――。
実習班の発表が行われた。
掲示板の前には、多くの生徒が集まっている。
「アストレア様、見に行きましょう!」
クラスメイトに声をかけられ、私も掲示板へ向かった。
(どんな班になるんだろう。)
人混みをかき分け、自分の名前を探す。
そして、その隣に並んでいた名前を見て、私は思わず目を見開いた。
(この名前……。)
(ゲームの攻略対象だった先輩……!)
どうして、同じ班に……?
掲示板を見つめたまま、私はしばらく動けなかった。




