第20話 初めての帰省
学園へ入学してから、三ヶ月。
授業にも寮生活にもすっかり慣れ、毎日があっという間に過ぎていった。
魔法理論では新しい知識を学び、実技では少しずつ応用魔法も教わるようになった。
放課後は魔法研究部へ顔を出し、先輩たちと魔法陣の解析をしたり、新しい術式について議論したりする。
充実した毎日だった。
気づけば季節は春から夏へと変わっていた。
そして――。
今日は、一学期最後の日。
終業式を終えると、寮中がどこか浮き立った空気に包まれる。
「やっと帰れる!」
「久しぶりに家の料理が食べられるわ。」
あちこちから楽しそうな声が聞こえてくる。
私も荷物をまとめながら、小さく笑った。
(私も久しぶりにみんなに会える。)
◇ ◇ ◇
翌朝。
侯爵家の迎えの馬車に乗り込み、王都を後にする。
窓の外へ流れる景色を眺めながら、この三ヶ月を思い返していた。
首席として注目を集めたこと。
魔法研究部で過ごした日々
初めての実技授業。
毎日が新しい発見の連続で、気づけば季節は夏になっていた。
振り返れば、どれも昨日のことのように鮮明に思い出せる。
気がつけば、馬車は見慣れたアストレア侯爵家の門をくぐっていた。
「お帰りなさいませ、お嬢様。」
使用人たちが一斉に頭を下げる。
その声を聞くだけで、不思議と肩の力が抜けた。
玄関の扉が開く。
真っ先に飛び出してきたのはレオンだった。
「姉上! お帰りなさい!」
勢いよく抱きついてくる弟を受け止め、私は思わず笑みをこぼす。
「ただいま、レオン。」
「少し背が伸びた?」
「本当ですか!」
嬉しそうにはしゃぐ姿は、家を出る前と変わらない。
その後ろから、お母様とお父様も姿を見せた。
「お帰りなさい。」
「元気そうで安心したわ。」
「はい。ただいま帰りました。」
深く頭を下げると、お母様は優しく私を抱きしめる。
「少し大人っぽくなったわね。」
「そうでしょうか。」
「ええ。とても。」
その言葉が少しくすぐったかった。
◇ ◇ ◇
夕食では、学園での出来事を次々と聞かれた。
「友人はできた?」
「授業はどう?」
「寮生活は困っていないか?」
私は首席として注目を集めてしまったことや、魔法研究部へ入部したこと、実技授業のことなどを話した。
「研究部とは、ラウラらしいな。」
お父様が満足そうに頷く。
「好きなことを学べるのは幸せなことよ。」
お母様も嬉しそうに微笑んだ。
レオンは目を輝かせながら身を乗り出す。
「姉上! 魔法研究部って、どんなことをするんですか?」
私は笑いながら、一枚の魔法陣を紙に描いて見せる。
レオンは真剣な表情で覗き込み、「すごい……」と小さく呟いた。
家族と囲む食卓は、学園とは違う温かさがあった。
◇ ◇ ◇
翌日。
私は侯爵家の馬車に乗り、ヴィクトール様の家へ向かった。
夏の日差しを浴びながら馬車は森の中を進んでいく。
やがて見慣れた家が窓の外に見えてきた。
(師匠達、みんな元気かな。)
久しぶりの再会に胸が弾む。
ヴィクトール様も、アレクも、カイル様も、きっと変わらず待っていてくれる。
そう思うと、自然と笑みがこぼれた。
馬車はゆっくりと家の前で止まった。




