第18話 魔法研究部
授業が始まって1週間。
学園にも少しずつ慣れてきた頃だった。
教室へ入ると、担任のエドガー先生が教壇へ立つ。
「今日から放課後は、部活動の見学ができます。」
教室が少しざわめく。
「王立魔法学園では、学年を越えた交流も大切にしています。」
「興味のある部を自由に見学してください。」
私は思わず顔を上げた。
(部活……。)
ゲームでは名前しか出てこなかったラウラに、部活動の設定はなかった。
ただ私としては、魔法研究部が気になる。
魔法陣の研究をする部活動。
◇ ◇ ◇
放課後。
校舎の一角にある研究棟へ足を運ぶ。
扉には、
『魔法研究部』
と書かれた木札が掛かっていた。
「失礼します。」
扉を開けると、部屋いっぱいに本棚が並んでいた。
机の上には魔法陣の設計図。
壁には古い魔法陣の写本。
魔道具らしき物も無造作に置かれている。
「……すごい。」
思わず声が漏れた。
「見学?」
奥から一人の女子生徒が顔を上げる。
胸元のリボンは三年生。
「はい。一年のラウラ・アストレアです。」
「ああ、首席の子ね。」
(もう知られてる……。)
私は思わず苦笑する。
「私は部長のリリア。」
「案内するわ。」
◇ ◇ ◇
リリア先輩は部室を案内してくれた。
「ここでは新しい魔法陣を考えたり、古い魔法陣を解析したりしているの。」
机には描きかけの魔法陣が何枚も置かれている。
「授業で習う魔法だけじゃ物足りない人が集まる部ね。」
その言葉に、私は自然と笑顔になった。
(楽しそう。)
「興味ある?」
「はい!」
思わず返事が大きくなる。
リリア先輩はくすりと笑った。
「やっぱり。」
「あなたならそう言うと思った。」
◇ ◇ ◇
「ちょうどいいわ。」
リリア先輩は一枚の紙を差し出した。
「この魔法陣、おかしいところがあるんだけど分かる?」
私は図面を見つめた。
複雑な術式。
けれど。
「ここです。」
私は一点を指差す。
「魔力の流れが途中でぶつかっています。」
「この補助陣を逆向きにした方が効率がいいと思います。」
部室が静まり返る。
リリア先輩は目を丸くしていた。
「……正解。」
「しかも、もっといい修正案まで出すなんて。」
私は慌てて手を振る。
「ヴィクトール様に昔から鍛えられていたので……。」
「ヴィクトール?」
先輩たちが顔を見合わせる。
「あの伝説の大魔導師?
……お知り合いなの?」
「えっと、……私の師匠です」
(あ。)
しまった……師匠のこと、言わない方がよかったかも。
「……まあ、納得ね。」
リリア先輩は苦笑した。
「首席って聞いていたけど、想像以上だったわ。」
私は恥ずかしくなって俯く。
(また目立っちゃった……。)
◇ ◇ ◇
「……どう?」
リリア先輩が尋ねる。
私は部室をもう一度見回した。
机いっぱいに広がる魔法陣。
古い文献。
楽しそうに議論する先輩たち。
どれも私の心を躍らせるものばかりだった。
「入部したいです。」
自然と言葉が口をついて出た。
リリア先輩は嬉しそうに微笑む。
「歓迎するわ。」
一枚の入部届が差し出される。
私は名前を書き込み、そっと提出した。
「これで今日から魔法研究部の一員ね。」
「よろしくお願いします。」
先輩たちが口々に歓迎の言葉をかけてくれる。
「分からないことがあったら何でも聞いてね。」
「資料なら好きなだけ読んでいいわよ。」
「ありがとうございます!」
思わず声が弾んだ。
◇ ◇ ◇
帰り道。
夕日に染まる校舎を見上げる。
学園へ来てから数日。
まだ緊張することも多い。
でも。
授業は楽しい。
そして、居場所も一つ見つかった。
魔法研究部。
ここには私の知らない魔法がたくさんある。
(この三年間で、もっと魔法を知りたい。)
その願いを胸に、私は少しだけ足取りを軽くして、寮への道を歩き出した。




