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キングスレイヤー真  作者:


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77. 鉄壁の威圧と、懐かしき流派の継承者

 俺が声を張り上げると、男たちが顔を見合わせ、ニヤニヤと笑い始めた。


 カモがネギを背負って来た、とでも思ったのだろう。


 一番近くにいた、全身傷だらけの大男が立ち上がり、ゆっくりと近づいてきた。


「へっ、ガキが粋がりやがって」


 大男は口の端を歪める。


「護衛なんて面倒なことしなくても、その金を俺様に預けな。そうすりゃあ、悪いようにはしねぇよ」


 大男が太い腕を伸ばし、俺の金貨袋に触れようとする。


 マンダルが「ひぃぃ!」と悲鳴を上げてテーブルの下に潜り込む。


 だが、俺は動じない。


 ただ横に控えるポムキンに目配せをした。


 ドスン。


 ポムキンが一歩、前に出た。


 それだけで、大男の動きがピタリと止まった。


 ポムキンは武器を抜いていない。


 ただ、その巌のような巨体から放たれる【鉄壁】の威圧感。


 そして、背負った鉄塊のような大剣の異常な質量。


 それらが無言で語っていた。


 触れれば、砕く、と。


「……ッ」


 大男の額に脂汗が滲む。


 本能が警鐘を鳴らしたのだろう。こいつはただの護衛じゃない、と。


 周囲の連中も、ポムキンの異様な雰囲気に飲まれ、様子見を決め込んだようだ。


 何より、こんな怪物を従えながら平然としている六歳の子供が不気味に映ったらしい。


 場が膠着する中、俺は店内を見渡した。


 ほとんどの奴が、ポムキンを恐れるか、あるいは隙を見て金を奪おうと計算している顔だ。


 だが、一人だけ違った。


 店の隅、カウンターの端で、周囲の騒ぎになど興味がないとばかりに、黙々と安酒を煽っている男がいる。


 ボロボロの外套を纏っているが、その姿勢は崩れていない。


 俺は目を細め、【見る力】を発動した。


【名前:ジョバーブン(35歳)】

【戦闘力:C】

【能力:剣士】


(……ん?)


 俺は二度見した。


 戦闘力C。この辺りのゴロツキがEかDだとすれば、頭一つ抜けている。


 十分に使えるレベルだ。


 だが、それ以上に気になったのは名前だ。


(ジョバーブン……?)


 なんだその、ふざけた名前は。


 いや待て。記憶にあるぞ。


 こんな響きの名前を持つ奴を、俺は前世の知識で知っている。


 まさか、あいつの息子か?


 ――ジョバーバン。


 前世、俺がまだクルム村で暮らしていた頃、頻繁に訪ねてきていた武芸者だ。


 最初はここで一番強い奴は誰だ!なんて大声を上げて乗り込んできた変な奴だった。


 だが、剣に対してはどこまでも真っ直ぐで、気のいい男だった。


 俺よりだいぶ年上だったが、ウマが合ってよく模擬戦をしたものだ。


 ただ、腕は立つものの、うちの異次元男ことメイシーには手も足も出ず、毎回ボコボコにされて帰っていったっけ。


 メイシーは俺と同じ年の親友で、ただの農家の息子だったが、自警団の中でも桁外れの強さを持っていたからな。


 そのうちジョバーバンは姿を見せなくなったと思ったら、数年後には彼の門下生たちが修行に来るようになった。


 どうやらナバラ帝国の方でガンテツ流という流派の師範代か何かになっていたらしい。


 クルム村には化け物がいる、死ぬ気で修行してこいと弟子を送り出してきていたのだ。


(あいつの息子なら、信頼できるな)


 俺はテーブルを降り、その男の方へと歩き出した。


「お、おいアルヴィン!」


 テーブルの下からマンダルが小声で叫ぶ。


「そっちはガラが悪すぎるぞ! 近づくな!」


 俺はその声を無視して、男の隣に立った。


「ねえ、おじさん」


「……あ?」


 男が面倒くさそうに横目で俺を見た。無精髭を生やした、くたびれた顔だ。


「あなたはどうですか? 腕が立ちそうだけど」


「……俺か。俺は傭兵じゃねえよ」


 男は興味なさげに視線を酒に戻した。


「修行の旅の途中だ。ガキの守りをしてる暇はねぇ」


「へー、修行かぁ。どこかの流派なの?」


 俺が食い下がると、男はチッと舌打ちし、しかし誇らしげに答えた。


「……ガンテツ流さ」


 ビンゴだ。


 俺は内心でガッツポーズをした。


「あー、あの有名な! ジョバーバン師範の流派だね!」


「……!?」


 ジョバーブンが、驚いて酒をこぼしかけた。


 ガバッと俺の方を向く。


「お前……親父を知っているのか?」


 やはり息子だったか。


「ええ、有名なかたですよね。質実剛健、岩をも砕く剣技だと聞いています」


 俺はニコニコと答えた。


「それに、僕の祖父も昔、クルム村で自警団員をしてましてね」


 俺は嘘を重ねる。


「ジョバーバン師範にお会いしたことがあると、よく自慢していました。あんなに熱い漢はいなかったって」


 大嘘である。


 ジョバーバンが来ていた頃、祖父ダイファーはまだ小さかったはずだ。


 だが、マンダルが一緒にいるこの状況なら、ボロは出ない。


「クルム村……?」


 ジョバーブンは懐かしそうに目を細めた。


「確かに、親父は若い頃あそこへ通っていたと言っていたな……」


 親父さんの話は本当だったのか、と少し感動しているようだ。


「奇遇ですね。これも何かの縁です」


 俺は微笑む。


「どうです? 旅の路銀稼ぎに、僕たちの護衛をしませんか? ガンテツ流の使い手なら、報酬は弾みますよ」


 俺が金貨を数枚見せると、ジョバーブンの喉がゴクリと鳴った。


 身なりを見るに、懐事情は相当寂しいらしい。


「……悪い話じゃねぇな。親父を知る縁者なら、無下にはできねぇ」


 ジョバーブンは空になったグラスを置いた。


「引き受けてもいいが、俺たちの目的地はレーマネだからそこまでしか付き合えないぞ」


 彼は真剣な目をする。


「それに、一つ条件がある」


「条件?」


「俺には連れがいるんだ。そいつが嫌だと言ったら、俺も動けねぇ」




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