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キングスレイヤー真  作者:


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38/81

38. 規格外の城塞、その名は『コジイン』

 それから数カ月後。

 領都の川沿い、かつて廃倉庫があった場所に、異様な建物群が出現していた。


「……なんだこれは」


主要施設の完成を聞き、検査に訪れた父マーランが呆然と呟いた。


 そこに建っていたのは、従来の「孤児院」のイメージ――可愛らしい教会風の建物や、木造の温かみのある家とはかけ離れた、要塞のような複合施設だった。


 敷地は石壁で囲まれており、城壁ほど高くはないが、簡単には乗り越えられない高さだ。


 庭には軍の訓練場のような巨大アスレチックまで鎮座している。


「説明しますね、父上」


 俺は図面を広げた。


「まず正面が居住棟です。男子寮25名、女子寮25名。食堂と大浴場も併設しています」


「人数は以前聞いた通りだな」


「各部屋は少し手狭になりますが、二人部屋にもできます。つまり二段ベッドを入れれば収容人数は100人まで増やせます」


「……最初から限界まで詰め込む気満々だな」


マーランは敷地を見渡した。


「では、その奥の建物は?」


「来客用の宿泊施設です。貴族用の客間が五部屋、行商人などが泊まれる簡易宿泊所が五部屋あります」


「……孤児院に客間?」


「父上や爺様が視察に来たときに泊まれますし、遠方からの来客にも対応できます」


「まあ、あれば便利だが……」


マーランはさらに奥を指差した。


「では、その隣の窓のない大きな建物は?」


「予備棟です。空き部屋が三十室あります」


「三十室!? 何のために?」


「孤児が増えた時や緊急時の避難所として使います」


マーランは呆れたように首を振った。


「……用意周到すぎるな」


「煙突が出ている建物が工房です。陶芸や木工などの作業を学べます。奥の小部屋は僕の研究室として使わせてもらいます」


「お前の研究室……嫌な予感しかしないな」


「その隣が倉庫です。食料や資材を保管します」


マーランの視線が鉄扉へ向く。


「では、あの地下への入り口は?」


「あれは訓練室です。雨の日でも体を鍛えられるように広めの地下スペースを作りました。模擬戦もできます」


「……模擬戦だと?」


「子供の遊びですよ。チャンバラごっこです」


俺はにっこり笑った。


マーランは眼鏡を外し、こめかみを揉んだ。


「工房に倉庫、予備棟三十室、地下訓練室に巨大アスレチック……」


そして大きく息を吐く。


「アルヴィン。これは本当に孤児院なのか?」


「はい。名前も決めました」


俺は入り口の看板を指差した。


そこには俺の直筆でこう書かれていた。


『コジイン』


「……そのまんまじゃないか」


「目立ちたくないので、名前くらいは地味にしておこうかと」


「この外観で目立たないわけがないだろう……」


父は呆れたように息を吐いた。


「まあいい。建物は立派だ。だが、この規模を誰が管理する? クロブ一人では回らんぞ」


そこへ子供たちを誘導していたクロブが駆けてきた。


「アルヴィン様、素晴らしい施設です。ですが、この規模を私一人で管理するのは……」


「分かってるよ。人を雇おう」


俺は頷いた。


「料理人、清掃員、職業訓練の講師、教師の補助。必要な人材はクロブが選んでくれ」


「私が選んでいいのですか?」


「ああ。ただし最終面接は僕がする。僕の【目】で確認する」


クロブは深く頭を下げた。


「承知いたしました!」


父とクロブが去った後、俺は『コジイン』の全景を見渡した。


(軍隊を作るつもりはない。だが、守られるだけの弱者を作る気もない)


ここに来た子供たちには、読み書き計算を教え、技術を身につけさせる。

そして埋もれた才能を見つけ出す。


(戦える者は戦えるように。そうでない者にも、一生食いっぱぐれない力を)


俺はニヤリと笑った。


「さあ、今日からここが君たちの家だ! 思う存分使い倒してくれ!」


子供たちの歓声が響く。


こうして前代未聞の施設『コジイン』の歴史が幕を開けた。




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