表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
キングスレイヤー真  作者:


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

23/78

23. 足りないのは「手」と「時間」

 マンダルは「設計図なんざいらねえ、俺の頭に入ってる」と豪語して、さっそく銅板を叩き始めた。


 あいつは一度火がつけば、あとは勝手に突っ走るタイプだ。作り方は完全に理解しているし、俺が横で口を出すより放置しておいた方が良い仕事をするだろう。


「じゃあ、頼んだよマンダル」

「おう、さっさと消えろ。気が散る」


 憎まれ口を叩きながらも、その背中は楽しげだった。

 俺と爺様ダイファーは工房を後にし、再び揺れる馬車の人となった。


 


 帰り道。

 窓の外を流れるのどかな田園風景を見ながら、俺はふと冷静になった。


(……これ、俺一人で回すの無理じゃね?)


 指折り数えてみる。

 ロリーナの英才教育。

 ルンナお婆ちゃんの麦畑の管理と拡大。

 マンダルの蒸留器監修と、酒造りの工程管理。

 さらに、まだ見ぬ他の仲間たちの捜索。

 そして何より、俺自身の身体作りと修練。


 俺は5歳児だ。

 自由に動ける時間は限られているし、移動手段も爺様頼みだ。

 爺様も協力してくれるとはいえ、爺様にもやることはある。俺の「趣味」に付きっきりになるわけにはいかない。


「……時間がいくらあっても足りないな」


 俺の呟きを、爺様が拾った。


「ん? 何か言ったか?」


「うん。やることが多すぎて、僕の手が足りないって話」


「はっはっは! 欲張りなこった。だが、それが楽しいんだろ?」


「楽しいけど、パンクしちゃうよ。……やっぱり、『組織』が必要だ」


「組織?」


 俺は頷いた。

 個人の力には限界がある、今やりたいのは「国造り」に近い事業だ。

 なら、相応の箱がいる。


「商会を作ろうと思うんだ」


「ほう、商会か」


「うん。最初は小さくていい。実態がない商会でも構わない。とにかく、僕の代わりに動いてくれる『手足』が必要なんだ」


 金ならある。

 さっきルンナに一枚渡したが、前世の隠し財産を使えば資金は当面問題ない。

 問題は、金よりも「人」だ。


「全体を統括できる商人が欲しい。僕の意図を汲んで、人を集めて、金を回せる実務家だ」


「なるほどな。商売人か」


「まあ、ゼダンがいればそれが一番だけど。……誰か心当たりある?」


 ダイファーは腕を組んで唸った。


「ゼダンは、もうずいぶん会っていない。商人の知り合いは多いが……お前のような『化け物』についていける奴となるとなあ。普通の神経じゃ胃に穴が開くぞ」


「人聞きが悪いなあ。優しい職場にするつもりだよ」


「お前が言うと悪い冗談にしか聞こえん」


 爺様は笑って、俺の頭を撫でた。


「まあ、焦ることはない。お前はまだ5歳だ。時間は腐るほどある」


「そうだね。のんびりやろうか」


 まずは領都に帰る。

 そこでじっくりと、俺の「番頭」になり得る人材を探すとしよう。

 焦って無能な奴を雇うのが一番の損失だ。


「よし、帰ろうか。ロリーナも寂しがってるかもしれないし」


「おっ、嫁の心配か?」


「ちーがーうー!」


 馬車は夕暮れの街道を、屋敷へ向けて軽快に走っていった。

 俺の頭の中では、すでに新しい「アルヴィン商会(仮)」の組織図が描かれ始めていた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ