121.鍛冶師の矜持
鉄が赤く熱を帯びる。
叩く。
火花が散る。
叩く。
――ずっと、ずっとこうしてきた。
俺は根っからの鍛冶師だ。
いつかは、とんでもないものを作れると信じていた。
……あの馬鹿のおかげで、腕だけは嫌というほど上がったがな。
十六の頃だった。
初めてドモトーアの武器を見た。
あいつが、メイシーたちに送りつけてきた剣。
ただただ、すげえと思った。
しばらくは――
追いつける気がしていた。
だが知った。
あれはドモトーアではなく、息子のドルーアがほとんど打った剣だと。
胸が焼けるように恥ずかしかった。
俺ごときが追いつけると思った相手が、大陸一であるはずがない。
叩く。
火花が弾ける。
そして――
サンデルとかいう無名の鍛冶師の剣。
信じられない出来だった。
生涯かけても届かないと思った。
それならドモトーアの剣など、想像すらできない。
……そう思っていた。
だが、違った。
ドモトーアの最高傑作を見たとき、確信した。
あれなら作れる。
あれなら、超えられる。
叩く。
音が工房に響く。
そして――
あの馬鹿が死んだ。
何も手につかなくなった俺に、妻が言った。
「本当にアーノルさんが好きだったんですね」
「それなら……あの人が言ってたこと、全部試してみたらどうですか」
救われた。
無茶ばかりの考えだった。
だが、できる限り自分の形に落とし込んだ。
――見てやがれ。
これが、俺の剣だ。
鉄を打ち、
鋼を合わせ、
炭を混ぜる鉄は作れなかったが、
鉄に吸わせる道は見つけた。
感覚を研ぎ澄まし、待つ。
刃だけを水へ。
全体を油へ。
じわりと焼き戻し、
浅く短い溝を刻み、
そして――研ぐ。
火花が、夜に散った。




