表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

61/72

《 Period 2 - 5 》 英雄 ✕ 悪童


 「──今度こそ成仏させてやるッッ!」と怒鳴りつつ、あたしは英雄へと一気に距離を詰め……。



 一切の躊躇もなく────槍で、薙ぎ払う。



 それを、英雄は素早く後ろへ浮遊して回避するが……逃がしはしない。


 瞬く間に距離を詰めては、槍を突き出し……英雄は更に高度を上げて、それを回避するも……あたしはヤツを追うように跳び上がり、槍を振り回す。


「──!」


 呼吸すら忘れる、怒涛の攻撃。


 その中で、槍の刃が英雄の身体を掠めた時────微かに肌を傷付けていたのを目撃した。


 どうやら、『幽霊の状態』ならば『妖力』に干渉出来るというのは……逆もまた然り。


 つまり。



 ────マトモに斬り付けてやれば、『ヤれる』。



「──お前も、あたしが間違っているって言いてぇンだな……ッ?」

「……?」


 既に全身かすり傷だらけの英雄が、後ろへ飛び上がって、こちらから大きく距離を取るのを見たあたしは……気付けば、そう呟いていた。


 きっと、英雄との最初のやり取りのせいで、酷い興奮状態に陥っていたのだろう。


 あたしは、その場で槍を力任せに振り回しながら、感情のままに叫び続ける。


「どいつもこいつも、悟ったような顔で聖人ぶりやがってッ……善が正しいだの、人は殺しちゃならないだの、綺麗事を吐くのがそんなに気持ちいいか────下らねぇ……反吐が出ンだよッッ!!」

「……」

「何かにすがって生きていけンなら、苦労なんかしねぇだろうがッッ!! こんな綺麗事もッ、てめぇらみてぇな『代闘者』って存在もッ、あの『鬼』の全部を受け入れちまう包容力もッ……全部が全部ッ、あたしらみてぇな馬鹿な連中の下らねぇ幻想を助長させンだッ!! この世界を、どんどん腐らせちまうンだよッ!!」

「……」


 傷だらけの英雄は、何も答えない。


 ただ無言のまま、あたしのことだけを見つめている。


 一方のあたしは……目の前の英雄を、見ていなかった。


 あたしが、見つめていたのは……記憶の彼方。


 あの時、『明朧会戦』の時……あの場所、『大廻川』の縄張りにて────目の前で、次々と息絶えていく、同胞たちの最期の姿だった。


「──あたしはな……ッッ!! あたし、は……ッッ……もう、そんな下らねぇ幻想に翻弄されてッ………………あんな風に苦しむのはッ、もう嫌なンだよ……ッ!!」

「……」


 なに、苦しそうな声を出してんだ、あたしは……?


 歯止めが効かなくなってきた自身の感情に翻弄されるように……。


 呼吸は乱れ、胸の奥が痛くなってきて……。


 ふと脳裏に、自身の親代わりでもあった『河童』の絶命寸前の姿がよぎった、次の瞬間……。



 ────感情が、暴発した。



「だからッッ、お前らなんざ要らねぇ……ッ! この世界をッ、あたしたちをッ、これ以上腐らせてくれンなッッ────英雄ゥゥッッ!!」


 しがみつく過去を振り切るように……。


 暴風の吹き荒れる現実を突っ切るように……。


 槍を全力で握り締め、【具念・蓄積】からありったけの力を放出しながら……。



 ────渾身の力で、英雄へと槍を突き出した。



 避けられない、当たる……ッ!


 今度こそ、勝てる……ッ!


 そんな確信と共に、コンマ一秒後のビジョンが、あたしに勝利を告げた。


 しかし。


「────」

「な……ッッ!?」


 突如、バシィッと音と共に、英雄の目と鼻の先で槍が制止。


 何が起こったのか、と驚愕して目を見開くと……。



 ────英雄が、その『手』で、槍の柄を掴み取っているのを目撃したのだ。



 先程まで完全に透けていた筈なのに……まるで『肉体』を取り戻したかのような、鮮明な見た目をした手で。


 奴は、握った槍を払いのけるように突き飛ばすと……その馬鹿げた力の強さで、あたしはよろけながら簡単に押し返されてしまう。


「ぅ、ぎ……っ!?」


 何故だ……?


 英雄の【具念】は、まだあたしとイミュテリエルが所有していて、英雄にはもう、それは残っていない筈だ。


 力の差は歴然の筈なのに……何故、それを素手で受け止めることが出来る……!?


「──なら、越えてみろ」

「な、に……」

「お前の望む未来が、俺の屍を乗り越えた先にあると言うのなら、全身全霊で越えて行けばいい────行けるものなら、な」


 英雄は、丸腰の状態で、両手を軽く横に広げた体勢になって、そう挑発してきた。


 打ち込んで来てみろ、ってか……。


 どこまでも、嘗めた真似をしやがって……。



「…………上ッ、等ッだ……ッッ!!」



 ならば、次は【具念】を限界まで振り絞って……今度こそ、あのムカつく顔面に風穴を空けてやるんだ。


 次こそ、確実に『ヤる』。


 次こそ、次こそは……。


 次、こそ…………。


 つぎ、こそ……?







この作品に目を通して頂き、ありがとうございます!


もしも、少しでもこの作品が「面白かった」「続きが気になる」と思われましたら、


ブックマークや、広告下の『☆☆☆☆☆』をタップもしくはクリックして、続話をお待ち下さい!


period2の最終幕です。


何が起こり、何が現れ、誰が勝ち、誰が負けるのか────是非とも、皆さんの目で見届けてみてください!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ