《 Period 2 - 5 》 英雄 ✕ 悪童
「──今度こそ成仏させてやるッッ!」と怒鳴りつつ、あたしは英雄へと一気に距離を詰め……。
一切の躊躇もなく────槍で、薙ぎ払う。
それを、英雄は素早く後ろへ浮遊して回避するが……逃がしはしない。
瞬く間に距離を詰めては、槍を突き出し……英雄は更に高度を上げて、それを回避するも……あたしはヤツを追うように跳び上がり、槍を振り回す。
「──!」
呼吸すら忘れる、怒涛の攻撃。
その中で、槍の刃が英雄の身体を掠めた時────微かに肌を傷付けていたのを目撃した。
どうやら、『幽霊の状態』ならば『妖力』に干渉出来るというのは……逆もまた然り。
つまり。
────マトモに斬り付けてやれば、『ヤれる』。
「──お前も、あたしが間違っているって言いてぇンだな……ッ?」
「……?」
既に全身かすり傷だらけの英雄が、後ろへ飛び上がって、こちらから大きく距離を取るのを見たあたしは……気付けば、そう呟いていた。
きっと、英雄との最初のやり取りのせいで、酷い興奮状態に陥っていたのだろう。
あたしは、その場で槍を力任せに振り回しながら、感情のままに叫び続ける。
「どいつもこいつも、悟ったような顔で聖人ぶりやがってッ……善が正しいだの、人は殺しちゃならないだの、綺麗事を吐くのがそんなに気持ちいいか────下らねぇ……反吐が出ンだよッッ!!」
「……」
「何かにすがって生きていけンなら、苦労なんかしねぇだろうがッッ!! こんな綺麗事もッ、てめぇらみてぇな『代闘者』って存在もッ、あの『鬼』の全部を受け入れちまう包容力もッ……全部が全部ッ、あたしらみてぇな馬鹿な連中の下らねぇ幻想を助長させンだッ!! この世界を、どんどん腐らせちまうンだよッ!!」
「……」
傷だらけの英雄は、何も答えない。
ただ無言のまま、あたしのことだけを見つめている。
一方のあたしは……目の前の英雄を、見ていなかった。
あたしが、見つめていたのは……記憶の彼方。
あの時、『明朧会戦』の時……あの場所、『大廻川』の縄張りにて────目の前で、次々と息絶えていく、同胞たちの最期の姿だった。
「──あたしはな……ッッ!! あたし、は……ッッ……もう、そんな下らねぇ幻想に翻弄されてッ………………あんな風に苦しむのはッ、もう嫌なンだよ……ッ!!」
「……」
なに、苦しそうな声を出してんだ、あたしは……?
歯止めが効かなくなってきた自身の感情に翻弄されるように……。
呼吸は乱れ、胸の奥が痛くなってきて……。
ふと脳裏に、自身の親代わりでもあった『河童』の絶命寸前の姿がよぎった、次の瞬間……。
────感情が、暴発した。
「だからッッ、お前らなんざ要らねぇ……ッ! この世界をッ、あたしたちをッ、これ以上腐らせてくれンなッッ────英雄ゥゥッッ!!」
しがみつく過去を振り切るように……。
暴風の吹き荒れる現実を突っ切るように……。
槍を全力で握り締め、【具念・蓄積】からありったけの力を放出しながら……。
────渾身の力で、英雄へと槍を突き出した。
避けられない、当たる……ッ!
今度こそ、勝てる……ッ!
そんな確信と共に、コンマ一秒後のビジョンが、あたしに勝利を告げた。
しかし。
「────」
「な……ッッ!?」
突如、バシィッと音と共に、英雄の目と鼻の先で槍が制止。
何が起こったのか、と驚愕して目を見開くと……。
────英雄が、その『手』で、槍の柄を掴み取っているのを目撃したのだ。
先程まで完全に透けていた筈なのに……まるで『肉体』を取り戻したかのような、鮮明な見た目をした手で。
奴は、握った槍を払いのけるように突き飛ばすと……その馬鹿げた力の強さで、あたしはよろけながら簡単に押し返されてしまう。
「ぅ、ぎ……っ!?」
何故だ……?
英雄の【具念】は、まだあたしとイミュテリエルが所有していて、英雄にはもう、それは残っていない筈だ。
力の差は歴然の筈なのに……何故、それを素手で受け止めることが出来る……!?
「──なら、越えてみろ」
「な、に……」
「お前の望む未来が、俺の屍を乗り越えた先にあると言うのなら、全身全霊で越えて行けばいい────行けるものなら、な」
英雄は、丸腰の状態で、両手を軽く横に広げた体勢になって、そう挑発してきた。
打ち込んで来てみろ、ってか……。
どこまでも、嘗めた真似をしやがって……。
「…………上ッ、等ッだ……ッッ!!」
ならば、次は【具念】を限界まで振り絞って……今度こそ、あのムカつく顔面に風穴を空けてやるんだ。
次こそ、確実に『ヤる』。
次こそ、次こそは……。
次、こそ…………。
つぎ、こそ……?
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period2の最終幕です。
何が起こり、何が現れ、誰が勝ち、誰が負けるのか────是非とも、皆さんの目で見届けてみてください!




