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 遺恨の魔女 × ????????



 異空間に隔離された隠れ家は、青く燃え盛る炎で覆い尽くされていた。


 【青炎】が隠れ家を完全に燃やし尽くすのは、最早時間の問題。


 【魔術】さえ使われなければ、内から出ることも、外から入ることも不可能。その間に、ヤツをこの空間に閉じ込めることが出来れば、こちらの勝利だ。


 そう、思っていたのだが……。



「──ぎぃぁぁぁぁぁぁッ!!? あちぃッ!! あちぃぃぃぃぃぃッ!!?」



 今、代闘者は【青炎】に全身を焼かれ、目の前で惨めったらしく呻き声をあげながら、床で転げ回っていた。


 何なんだ、この体たらくは……。


 人族の代闘者を名乗っているから、どれだけ強いのかと身構えていたが……幾らなんでも────弱過ぎる。


 そのあまりにも惨めなやられっぷりを前にして……私の心の奥から、沸々と怒りが込み上がってきた。


「……っざけんなッ……どうして、あんたみたいな雑魚に────『あの馬鹿』がやられなくちゃならなかったのよッ!!」

「──ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!?」


 自身の怒りをぶつけるように、代闘者の全身に纏わりつく炎の勢いを、更に急上昇させる。


 この様子では、もう……どう足掻いても確実に助からない。


 【青炎】はこいつの全身を溶かし尽くし、最後には骨一つ遺さずに消失することだろう。本当に……苛つく位に、歯応えがないヤツだった。


「もう、いい……さっさと『逝きなさい』。そしてあの世で、これまであんたらが陥れてきた連中に、精々許しを乞い続けると良いわ」

『────悪いが、俺は誰にも許しを乞わないぜ?』

「──ッ!?」


 突如、背後から投げ掛けられてきた声に、全身にブワッと鳥肌が立ち……反射的に、後ろへ手をかざして、『氷の盾』を生成。


 直後、刃の鋭い軌跡が走り、氷の盾を叩くと……木っ端微塵に粉砕し、その反動で私は大きく弾き飛ばされる。


「ぐ……ッ!?」


 間一髪。


 あと一瞬反応が送れていたら……胴体が真っ二つになるところだった。


 一体何が起こったのかと、素早く顔を上げた瞬間────とてつもない衝撃が、私の全身を駆け巡った。


「──どう、なってんのッ……こんな、の……ウソ、でしょ……ッ?」

『「ウソ」? いやいや、むしろ「感謝」して欲しいもんだ。俺のお蔭で、こうして……』


 それは、間違いなく『偽物』の声。


 ただ、それを発している『人物』……そして、その周囲に立つ『者たち』は……何処からどうみても────『ここに居てはならない者たち』だったのだ。



『────お前の愛しい「異端協会」と、再会することが出来たんだからよ?』



 『妖術使い』のゲンジ、『仙術使い』のレミン、『天術使い』のファーナム、『深術使い』のローダ……かつて、前リダウト王と共に、幾つもの戦場を潜り抜けてきた────『異端協会』の主力メンバーたち。


 私にとって、兄や姉であり、家族も同然である……かけがえのない仲間たちだ。


「『再会』……? 違う……こんなモノ、悪夢以外の何物でもないでしょッ────そいつらは、とうの昔に殺されているのよ……ッッ!!」


 目の前のまやかしを振り払うように、腹の底から声を張り上げる。


 すると、『偽物』を声を発する『ファーナム』がゆっくりと前に進み出て、まるでこちらを迎え入れるように、両手を広げながら微笑み掛けてきた。


『心配しなくても大丈夫だ、ニリアン────直ぐにお前も、俺たちの仲間になる』

「ふざけんな……ッ!! 【命令コマン】────ぁぐ……ッ!?」


 瞬間、両手両足が『重く』なり、床に叩き付けられて四つん這いにされてしまう。


 【魔術】を使用して抜け出そうとするも……頭の中が真っ白になり、何故か思考が全く働かなくなっていた。


 この感覚……【妖術】と、【仙術】か……?


 いくら、これまで彼らの力を何度も見てきたとはいえ、こうも立て続けに術を掛けられては……抵抗なんてままならない。


「ぐッ、ぅ……ッ……から、だッ、が……ッ」

『今からでも遅くはない、仲良くやろうじゃないか。お前ほどの【魔術】を使えるヤツが望むのなら、「俺たち」の仲間に加えてやってもいいと言っているんだ。どうだ、悪くない提案だろ?』


 『偽物』はそう言いながら、私を愛でるように頬を撫でてくる。


 身体を制御され、思考もろくに働かない状態に陥っていた私は、目の前で優しく微笑み掛けてくる仲間の顔を見上げながら……本能だけで、こう言葉を返した。


「────死んでもゴメンよ、このクソ野郎ッ」

『────あっそ』


 次の瞬間。


 偽物の手が、私の頭を鷲掴みにしたと思ったら、バチッバチッと、何かが弾けるような音が脳裏で響き────断続的な激痛が、全身を駆け巡った。


「ぁッ、ぁ────あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッッ!!?」

『──これで、ようやく全てのピースが揃う……お前はその礎となるんだよぉ、ニリアン・サルナーヴ』


 ヤツが、何を嬉しそうに語っているのか……もはや、判断する余力すら無い。


 頭の中で痛みが弾ける度に、ブツッブツンッと、視界が明暗を繰り返す。全身を内側から動かされるような不快感に逆らうことが出来ず、次第に意識が遠のいていく。


 そして、私の意識をギリギリ保っていた最後の糸が、無惨に切れそうになった……。


 その時だった。


「────退いてろ」

『──き゜ょッ!?』


 突如、偽物の背後から何者かの手が伸びてきて、その顔面を鷲掴みにしたと思ったら……凄まじい勢いで、目の前からヤツの顔面が消失。


 瞬間、ボキボキッと鈍い音が何重にも響く程の衝撃で、偽物は顔面から床に叩き付けられた。


 その背後に立っていた人物は……。


「────オー、ム……?」

「────悪い。『代闘者違い』だ」








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